全てが終わったBADEND後の乙女ゲーム転生で反逆いたします

高梨

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クロージス

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【くしゃみでしっぱいしちゃいました。ごめんなさい】

 王都に帰るまでに経由する二つ目の町で、暗殺部隊の伝令が届いた。パトリシアとえーっとマーなんちゃらの部隊は失敗。そう、くしゃみで失敗したという。阿呆らしーい失敗の仕方をしたんだ。伝令の手紙を握りながら宿でため息をつくと、カペルが紅茶を差し出してくれた。

「ありがと」

 それを一口飲んで詳しい内容と、相手の情報は良く書かれているので、再度手紙に目を通した。

【ワジェライ王国は戦のドタドタに応じて、アンドール国王を暗殺しようとアビスを派遣していることがわかりました。

それと、どうにか暗殺できるようにまだとどまらせて頂きます。

もしかしたら、巻き込める国民を犠牲にして大規模な自死を行う可能性があるからです。

そうなれば、我々の国は悪逆非道という汚名を着せられかねませんから。

どうか、成功を祈って下さいリエル様

帰った暁にはどうか……

二度マーベラストという変態さんのお守りは私以外にしてください】


 詳しい情報を速読で頭に入れて、個人的な文章に目を通すと。切実なお願いが下の方に書かれていた。流石にあの変態を任せ過ぎたか……と苦笑すれば「ぼ、僕もマーベラスト様はご勘弁を」と先に釘を打ってきたカペル。カペルがダメなら、レミリス……は、もっとダメだ。嫌みで何を言われるかわかったもんじゃない。さてさて、またマーベラストのお守り役を見つけないとと、手紙を畳んで懐にしまった。


 そして、宿の部屋に置かれている机に腰を掛けて羽ペンを持った。それに合わせて、カペルが別の紅茶や茶菓子を用意しに、静かに部屋を出た。さて、やることをもっとやらないと、そう思って些か古ぼけた懐かしさを感じる宿の部屋を何となく見渡して、書類を広げた。





 部屋から音を立てずに出てすぐに三階から一階へと下った。下るにつれて絢爛さが消えて、馴染みのある質素な飾りへと変貌していく。ここは高級な宿だけれど、冒険者でも使える手頃な酒場があって、貴族からも市民からも愛される宿屋だ。下ればどんちゃんさわぎの兵士の喧噪が辺りを埋める。その中の一人の兵士が手を上げて僕を呼んだ。

「あれ、宰相補佐の坊ちゃん」

「坊ちゃんはもうやめて下さい……。もぅ……。戦の発散はできていますでしょうか?」

 この僕を呼んだ男の人は、僕のお父さんのご友人らしい。昔の僕のおしめを替えたとか変えないとかを言ってくる人で。悪い人ではないのだけれど、リエルの良く言うデリカシーという物を少しはもってほしい人物です。不躾にどたどたと、発泡酒の入った木の器を片手に僕の背中をバチバチ叩いて大笑いした。

「わりぃわりぃー。お陰様でな。坊ちゃんとリエル様のが攻防の指示を的確にやってくれたお陰で、死人もいねぇーし酒がうめぇや。坊ちゃんは?」

「リエル様がこの町の情報を纏めているので、追加の紅茶と茶菓子を持っていこうと思いまして」

 嘯く必要もないことだから、そのまま正直に言うと。酔った顔がキッと引き締まった。酒が入って頬こそ赤いが、一気に戦のそれのような切れそうな顔に早変わりした。ドキリと背中がぞわりとした。僕は一体何かの失言でもしたのか? そう考えておじさんの目を見れば、神妙な顔だった。

「……こんなこと言うのは身分違いだが。坊ちゃんとリエル様にも息抜きは必要だと思うんだ」

「え?」

 突然言われた言葉に、目が点になって聞き返してしまった。それに、ニカリと笑って僕の頭に手を乗せたかと思うと、わしゃわしゃと乱雑に頭を撫で始めた。

「やめて下さい……。一応僕は18歳なんですよ!」

「おーおー尻の青い18歳なことで、坊ちゃん、リエル様連れて遊んでこいよ」

「けど、こんな時に……」

 首が本当に取れてしまう! そう思って手を払えばカラカラと笑って。でも真剣な目で僕を見た。

「こんな時だからだ。忙しいからこそ発散しないと今は大丈夫でも、心と体は理性じゃどうもなんないんだ。坊ちゃんが見極めて、ガス抜きしてやってくれ」

 おじさんは、お父さんよりお父さんな人だ……独身だけど。本当のお父さんのようにまたガシガシ頭を撫でてから「じゃあな」と言って背を向けて喧噪へと向かうおじさん。

「わかりました! やってみます!」

「おう、俺も根回ししてやるよ」

 呼び止めるように大きい声で言うと、振り向きはしないけど。そのまま手を振ってくれた。それが、嬉しくて……リエル様と僕は、死人を出さずに戦争を終えることが出来たんだって。だから、こうしておじさんと話せるんだって。思うと少し涙がにじんできた。

「ありがとうございます!」

 滲んできた涙を誤魔化すように、おじさんの背中にもう一度大きな声でお礼を言った。





 城から離れていても書類仕事や情報を纏めて、今居る町の貴族は不正な税金を重ねてないか? 今の町の治安のチェックとか、できることは沢山ある。兵士達は息抜きに昼間だろうが夜だろうが、酔いが後を退かない程度に酒を飲んで貰って発散させている。

 皆が笑えるようにと、ペンを走らせて居たら。いつの間にか入ってきたカペルが私の横に茶菓子をことりと置いた。「ありがとう」と礼を告げようと伸びてきた腕を伝うように視線と顔を上げると。

「……」

「どうしたの?」

 少し、ぶすっとしたカペルがこちらを見ていた。口元が微妙にへの字を書いていて、目を若干細めて怒っているのか、悲しんでいるのか、微妙な顔をしていた。私は顔を傾けて、訪ねると。カペルは、数度口を開いては閉じて視線を彷徨わせた。そして、絞り出すように、でも大真面目な顔でカペルは言った。

「リエル、少し遊びませんか?」

「んあ? この状況で?」

「この状況だからですよ。兵士達を見て下さい、それぞれ遊んで恐怖やストレスを発散しています。リエルはずっと気を張っていて……。これじゃいつか大切な時に、体調を崩してしまいます。

だから、僕の我が儘を叶えてくださいませんか?」

 そう言ってカペルは真っ赤な顔で、私の手を掴んで叫ぶように言った。

「僕と一緒に遊びましょう!」

 サクランボになったんじゃないかって言うほどに赤々しいカペルの顔に、私も釣られてなんか顔の辺りが焼けるように熱くなってきた。これは私も真っ赤になったんだろうな……。そう自覚すれば余計顔が熱くなる。コクリと緊張と共に唾を飲み込んで、真剣なカペルの目を合せて。

「……うん!」

 ちょっと、今日だけは子供になりたいと思って、笑って頷けば。花が綻ぶようにへにゃりとカペルが笑って。私の身体を抱きしめた。


ー小話【クロージス】ー

僕はお母さんの第二の人生だった。

僕は同性愛者のシャルリエールが第二の人生を歩むために産んだ子供。

適当にクロージス様と似た子供がうまれるかも知れないと思って選んだ夫を使って産んだ子供。

僕も欲しい、僕は、僕だけの人生が欲しい。

僕の名前は【クロージス】

親のエゴではなくて、好きな人と一緒に遊んで、好きな物を食べて、好きな人と添い遂げることができる人生が欲しい。

けど、できないから、僕は壊す。みんな死ねば良い。

元から、我々の神は人間など愛して居ない……ならば消えたところで何も問題はない。

だって、だって、神様が僕ら人間を愛しているのならば何故……何故。

産まれると同時に死が与えられる?

なんで傷付けば痛い?

なんで正直者は馬鹿を見る?

なんで親なんて不完全なシステムを肯定したの?

なんで、人類の繁栄に犠牲が必要なの?


もし、僕が神様ならば……人間なんて生物なんて作らない。


「神様……。もし、愛を下さるのなら。僕を殺してくれ」


 最初から、僕は命のある人というくくりの生物を殺せれば良い。だから、死人の出ない戦争なんてあって良いはずが……ないんだ。

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