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1.全てはここから始まった
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「リリティーヌ。僕にとって君は、漆黒の夜空で光り輝く星。或いは鮮やかに咲き誇る赤い薔薇だよ」
というのが、トゥーラ侯爵家当主兼私の夫であるエリオットからのプロポーズの言葉だった。
今思い返すと結構痛い内容なんだけど、当時(三年前)はこれを聞いて胸のときめきが止まらなかったのだから、恋とか愛ってすごく怖い。
あの時の自分に言ってやりたい。
「激さむポエム炸裂させているその男、浮気するからやめとけ」と。
全ての始まりは、私と仲のいい夫人から告げられた言葉。
「ねぇ……私、トゥーラ侯爵が若い女の子と宿屋に入って行くところ見てしまったの」
使用人を連れて街を歩いている時、エリオットをたまたま見かけたので挨拶しようとしたら、その隣には見知らぬ女性の姿。
二人は談笑しながら、宿屋に入って行ったらしい。
「人違いかもしれないと思ったのだけれど、もし本人だったら……」
「……教えてくれてありがとう」
「心を強く持ってね、リリティーヌ。私はあなたの味方よ」
「ええ……」
どうにか口角を上げながら返事をするけど、実のところ半信半疑だった。
エリオットが他の女性に心移りするなんて考えられない。
だって毎朝私にキスをするし、結婚記念日、婚約記念日、私の誕生日の時に必ずお祝いをしてくれる。
きっと見間違い。それか、ただ道案内をしてあげていただけかもしれない。優しい人だし。
自分に何度もそう言い聞かせる私だったけど、一度抱いてしまった疑いを忘れ去ることはできなかった。
信じたいのに信じきれない。
真実をこの目で確かめるため、私自らその宿屋に張り込むこと数日間。
ある一組のカップルがやって来た。
「ねぇ、エリオット様。あとでメロンがいーっぱい載ってるタルトが食べたいですっ」
「いいよ。好きなだけ食べさせてあげる。だからその前に運動をしようか?」
「やーん! エリオット様ったら恥ずかしい!」
「ははは。そんなに照れなくても……ハッ」
デレデレと鼻の下を伸ばしていた男に氷河期到来。その表情が一瞬にして凍りつく。
宿屋に入ろうとしたら、物陰から自分の妻がヌッ……と現れたのだ。無理もない。
私から視線を逸らすことも出来ず、陸に打ち上がった魚のように口をパクパクさせているエリオットに、隣の女がコテンと首を傾げる。
「エリオット様ぁ? このオバサンとお知り合いなんですか?」
「そ、それは……」
「どうも、初めまして。私はエリオットの妻です」
夫が上手く言葉を紡げずにいるので、私がにこやかに自己紹介すれば女はむっと顔を顰めた。
な、何だ、この反応は……
嫁バレしたんだから、普通もっと動揺するものじゃない?
そんな私の疑問を余所に、女はエリオットの腕に抱き付いて叫んだ。
「エリオット様は渡しませんからっ!」
こ、こいつ……!
うちの夫も、とんでもない大物を捕まえてきたな。怒りや呆れを軽々と飛び越えて、感心の境地にひとっ飛び。
……と、思っていると。
「やめるんだ! 僕のために争わないでくれ!」
はっ倒されたいのか、このバカチンがぁ!!
というのが、トゥーラ侯爵家当主兼私の夫であるエリオットからのプロポーズの言葉だった。
今思い返すと結構痛い内容なんだけど、当時(三年前)はこれを聞いて胸のときめきが止まらなかったのだから、恋とか愛ってすごく怖い。
あの時の自分に言ってやりたい。
「激さむポエム炸裂させているその男、浮気するからやめとけ」と。
全ての始まりは、私と仲のいい夫人から告げられた言葉。
「ねぇ……私、トゥーラ侯爵が若い女の子と宿屋に入って行くところ見てしまったの」
使用人を連れて街を歩いている時、エリオットをたまたま見かけたので挨拶しようとしたら、その隣には見知らぬ女性の姿。
二人は談笑しながら、宿屋に入って行ったらしい。
「人違いかもしれないと思ったのだけれど、もし本人だったら……」
「……教えてくれてありがとう」
「心を強く持ってね、リリティーヌ。私はあなたの味方よ」
「ええ……」
どうにか口角を上げながら返事をするけど、実のところ半信半疑だった。
エリオットが他の女性に心移りするなんて考えられない。
だって毎朝私にキスをするし、結婚記念日、婚約記念日、私の誕生日の時に必ずお祝いをしてくれる。
きっと見間違い。それか、ただ道案内をしてあげていただけかもしれない。優しい人だし。
自分に何度もそう言い聞かせる私だったけど、一度抱いてしまった疑いを忘れ去ることはできなかった。
信じたいのに信じきれない。
真実をこの目で確かめるため、私自らその宿屋に張り込むこと数日間。
ある一組のカップルがやって来た。
「ねぇ、エリオット様。あとでメロンがいーっぱい載ってるタルトが食べたいですっ」
「いいよ。好きなだけ食べさせてあげる。だからその前に運動をしようか?」
「やーん! エリオット様ったら恥ずかしい!」
「ははは。そんなに照れなくても……ハッ」
デレデレと鼻の下を伸ばしていた男に氷河期到来。その表情が一瞬にして凍りつく。
宿屋に入ろうとしたら、物陰から自分の妻がヌッ……と現れたのだ。無理もない。
私から視線を逸らすことも出来ず、陸に打ち上がった魚のように口をパクパクさせているエリオットに、隣の女がコテンと首を傾げる。
「エリオット様ぁ? このオバサンとお知り合いなんですか?」
「そ、それは……」
「どうも、初めまして。私はエリオットの妻です」
夫が上手く言葉を紡げずにいるので、私がにこやかに自己紹介すれば女はむっと顔を顰めた。
な、何だ、この反応は……
嫁バレしたんだから、普通もっと動揺するものじゃない?
そんな私の疑問を余所に、女はエリオットの腕に抱き付いて叫んだ。
「エリオット様は渡しませんからっ!」
こ、こいつ……!
うちの夫も、とんでもない大物を捕まえてきたな。怒りや呆れを軽々と飛び越えて、感心の境地にひとっ飛び。
……と、思っていると。
「やめるんだ! 僕のために争わないでくれ!」
はっ倒されたいのか、このバカチンがぁ!!
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