『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ

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第25話:再会の日、伝えたいこと

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 扉が開く音がしたのは、陽が西へ傾きかけた午後だった。

 風がやや強くなり、庭のラベンダーがそよぐ。
 リリアはハーブティーの準備をしながら、そっと顔を上げた。

 そこに立っていたのは、見間違えようもない人物だった。

「……グレイヴァンさん」

 自然と呼吸が浅くなる。
 数日ぶりの再会。それだけで、胸が締めつけられるようだった。

 彼は無言のまま門をくぐり、庭の奥のテーブルにゆっくりと歩み寄ってきた。

「……来てくれて、ありがとうございます」

 声が震える。だけど、視線は外さなかった。

「ここの紅茶が、好きだからな。……それに」

 彼は椅子に腰を下ろすと、ほんの少しだけ目元を緩めた。

「君にも、会いたかった」

 その一言に、リリアの胸の奥がほろりとほどけた。

 ほんのわずかでも、信じた自分が報われたような、そんな気がした。



 二人のあいだに流れる静かな時間。
 ティーカップの湯気と、香るレモンバーム。

 リリアは、言うべきかどうか、迷っていた。

(けれど、何も言わないままでは……また、怖くなる)

 ゆっくりと、意を決して顔を上げた。

「……わたし、実は数日前、レティシア様がここにいらして」

 彼の瞳が、ほんの少しだけ鋭くなる。

「あなたのことを“傷つけている”って言われました。
 “この関係が、あなたの立場を脅かす”って……」

 グレイヴァンは静かにリリアの言葉を待った。彼女が何を感じ、何を抱えていたのかを、逃げずに受け止めようとしているようだった。

「怖かったんです。わたしのせいで、あなたが……」

 言い終える前に、彼の手が、テーブルの上に置かれたリリアの指先にそっと触れた。

「リリア。俺は、自分の意思でここに来ている。
 誰に何を言われても、それは変わらない」

 その声は静かで、真っ直ぐだった。

「君の存在が“足かせ”になるなんて思ったことは一度もない。
 むしろ……俺にとって、ここが“帰る場所”になっている」

 リリアの瞳が、揺れる。

「……本当に、そう思ってくれてますか?」

「ああ。君が俺を信じてくれるように、俺も、君を信じている」

 その言葉に、リリアはゆっくりと微笑んだ。

 今度こそ、本当の意味で安心できた気がした。

 風が吹き、ラベンダーがゆれる。
 それはまるで、ふたりを祝福するような優しい光景だった。
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