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29話 New
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それからの数日間で準備は順調に進んだ。素材集め、ビンの製作、予備の回復薬作り。ギルドと街中にお知らせも貼った。
リニューアル初日は私も裏方としてショップを手伝った。売れ行きはまずまずといったところだ。小さなビンを見るのはやはりランクの低い冒険者だった。それが上級ポーションだということをなかなか信じられないようで、モーブさんが検品済だと話すとようやく安心してくれた。最初の内は説明が必要だろうし、色々言われる事もあると思うが、モーブさんとポピーなら大丈夫だろう。
初日の営業が終わった後マスターの部屋に集められ、セクロさんが私達の働きを労ってくれた。
「それでカースなんだがな…故郷に帰る事になった」
聞いた話だが、カースさんはシザーとロイさんにやられてからというもの、すっかり気が小さくなり防具作りにも支障をきたすほどだったとか。
「防具を作ってくれる人材はもう見つかった。…入ってくれ」
セクロさんの声に応じて入ってきたのは、バースさんだった。戸惑う声も聞こえたがそれも当然だ。バースさんは今まで鍛冶屋をやってはいたが、武器や防具よりも生活に必要な物を主に扱ってきたのだから。
「彼は最近、鍛冶と加工、2つのスキルを手に入れました。これは確認済みです。そこで、これからはバースさんに防具の製作をお願いしたいと思います」
モーブさんが説明を引き継いだ。
リニューアルに向けて準備している中、カースさんの抜けた穴をどう埋めようか頭を悩ませていたセクロさんとモーブさんに、シザーが提案したのだ。バースさんの仕事ばかりが増えて負担がかかりすぎるのでは?と心配する2人に、バースさん当人が言った。弟に手伝わせる、と。この街の武器屋の主人はバースさんの弟だそうで、人見知りな性格の為、全く営業出来ていないんだとか。この際だから弟と一緒に、自分の鍛冶屋で武器、防具はもちろん、生活用品まで一手に引き受けようという事になったらしい。バースさんが進み出て皆に言った。
「今回は、いや、今まで、弟のカースが皆に迷惑をかけてしまった詫びも兼ねて、2人でやらせてもらう事にしたんじゃ」
ロイさん、サラ、ポピーは唖然とする。平然としているのはセクロさんとモーブさん、それにシザーだ。私も昨夜カースさんが弟だと聞いて物凄く驚いた。
「スキル2つも!?それにバースさん3兄弟だったの?武器屋のルースさんが弟だってのは知ってたけど…え~!…でも2人でも結構大変じゃないですか?」
さすがにロイさんは回復が早い。
「そうじゃな、その時は、なあ、シザー?」
ニヤッとするバースさん。
「ああ、俺もスキルが取れたからな。たまに手伝う事にした」
そう、シザーもスキルが取れたのだ。私はシザーなら取れる気がしていたので、これについての驚きは少なかった。ロイさんもあまり驚かない。そうなると可哀想なのはサラとポピーだ。驚きの連続でもう言葉もないといった感じだ。
「スキル?何の?」
「鍛冶と加工」
「…2つも?」
「ああ」
「いつ?」
「3日前」
「何で?」
「知らねえ」
「どうやって?」
「…知らねえ」
「どうして!?」
「しつけえな!」
「だって~!」
「うるせえ!」
2人のやり取りを聞いていたバースさんが、ガハハハハ!と豪快に笑った。
「ロイ、わしが教えてやる。それはな…女神様のおかげじゃ!」
私を見て大きな声で言う。…バースさん、勘弁して下さい…。
「それはバースさんの実力だと言ったじゃないですか」
私はそう返したのだが…
「やっぱり!?そうじゃないかと思ったんだよね!さすが僕の女神様!」
ロイさんは勝手に納得している。
確かに才能の神様の加護の効果かもしれないが…、私は必要以上に目立ちたくない。と言ったのをロイさんは忘れちゃったのかな…。
「私の調合スキルの事もあるし、女神様説が信憑性を帯びてきたわね」
「ほえ~。凄いね~。さすが天使ちゃん」
サラとポピーもいつの間にか復帰している。セクロさんとモーブさんもニコニコしているだけで話を進めようとしない。ポピーのカミングアウトがあってから何度似たようなやり取りをしたか。私はさすがにちょっと困っていた。
うう…これ以上の広がりは避けたい…。そう思いながら俯くと肩を抱かれる。シザーだ。皆を見据えて口を開く。
「とにかくそういう事だ。バースさんとこは改装するから本格的に始まるのはまだ先だ」
一瞬黙った後、静かに続ける。
「…それと、お前ら全員、この数日ナツメを女神だ天使だ、騒ぎすぎだ。ナツメは目立つのは好きじゃねえんだ。黙ってても目立つのに、余計に拍車をかけるな。…分かったな?」
最後の一言は、数日前を彷彿とさせる冷たい声だった。皆黙って頷く。
「…話はこれで終わりだな?帰るぞ」
肩を抱いたままドアへ向かう。私は慌てて挨拶してシザーと一緒に部屋を出ると、少し不機嫌そうな横顔を見ながら小さな声で言った。
「シザー、ありがと」
きっと私の気持ちを察して皆に言ってくれたのだ。シザーは私を見て微笑んだ。
ギルドを出た時ロイさんが私達を追って出てきた。
「シザー!ナッちゃん!」
立ち止まって待つ。
「…ごめんね、ナッちゃん。ポピーちゃんと盛り上がって、ちょっと調子に乗った。気を付けるよ、許してくれる?」
「ロイさん…うん。もちろん」
「…ったく、お前まで一緒に騒いでどうすんだ。いい加減にしねえと、ナツメが許しても俺は本気で怒るぞ」
「うん…ごめん」
しょぼん、とするロイさんを見てため息を吐く。
「一緒に飯食うんだろ、さっさと行くぞ。腹減った」
「うん!ナッちゃんのご飯久しぶり!」
パッと明るくなるロイさん。私とシザーは顔を見合わせて笑い、3人で家に帰った。
☆
次の日、ポピーに頼まれたショーツを作り終えると裁縫スキルも4になった。技も同じレシピ発想だ。裁縫でこの技はあまり役に立たないのでは?と思っていたが、いい意味で裏切られた。布からも分かるし、素材からレシピ発想すると、それがどんな布になるかが分かる。布だけではない。紐や糸、ボタンに至るまで、裁縫に関するものなら全て分かるのだ。楽しくて色々試してしまった。こうなると機織りも欲しくなる。と思っていたらシザーがちょっと待ってろと言って小屋へ行き、何かを持って戻って来た。私が見たことのない形をしたそれは、布を織る器具だという。使い方がまだよくわからないが、何でも持っていたセリさんには感謝するばかりだ。
明日はシザーの提案で、初めて会った日に約束したサブル釣りに行くことになった。サブルがいるのは川の上流、その辺りの山には下流とは違う素材があるらしいので採取も出来て一石二鳥だ。前の世界で鮭といえば秋に釣れる魚のイメージだったが、ここでは年中川にいるらしい。魔物も存在する異世界では生態系も多少違うのだろう。
当日、朝早くに家を出て川の上流へと向かう。ちょっとした山登りだが、山育ちの私は気持ち良く登れた。ラウムリザードの時のオルト山は途中から岩山だったので、今日の方がより住んでいた山に近かった。
「よし、この辺でいいんじゃねえか?」
シザーが周りを見渡して言う。急な土手をシザーに抱えられて降りると土手から数メートルで地面は土から歩きにくい川辺の濡れた石になる。川幅は広く、深さも私の太腿辺りまである。水はとても澄んでいて綺麗だ。シザーはチェストハイのウェーダーとよく似た物を持っていたので、川の中に入って釣っていた。私は入らずに釣る事にする。
釣り始めて3刻が経過したころにはサブルやガトリーなど、計12匹が釣れた。大漁大漁。早めのお昼を食べることにして、土手近くにテーブルとイスを出す。私が作ってきた塩握りや卵焼き、トルト煮のミートボールを用意している間に、シザーが素早く焚き木に火を点けてガトリーの塩焼きを作ってくれた。
食後のお茶で一息つく。
「さて、採取しながら下るか」
「うん、そうだね」
そう言って立ち上がろうとしたとき、シザーが空を見上げて黙る。
「?」
私が不思議に思っていると独り言のように呟く。
「一雨来るな…」
「雨?」
私も空を見上げてみるが分からなくて首を傾げる。
「分かんねえか?」
「…うん、分からない」
「だろうな、ほとんど俺の勘だだからな。だが当たるぜ、早いとこ下りよう」
「うん」
☆
「…当たったね」
「まあな…」
シザーの勘は見事に当たった。山を下り始めるとどんどん空が暗くなり、一気に降り始めた。土砂降りだ。近くの洞穴に逃げ込んだが、雨は止みそうもなく足止めされてしまった。シザーが常備している焚き木で暖をとる。
「風邪ひく前に着替えろ」
「う、うん…はい、シザーの」
着替えを渡すとシザーはさっさと脱ぐ。こんな時にも関わらず見惚れてしまって慌てて目を逸らす。
「…脱がねえのか?」
いつの間に傍に来たのか、上半身裸で抱きしめられてドキン、とする。
「だって…し、下着までびっしょりで…」
「全部脱ぐのが恥ずかしいか?」
「…うん」
「俺が脱がしてやる」
耳元で囁いて服に手を掛ける。
「や…待って」
「ダメだ」
そう言って口を塞ぎ、私の肌を晒していく。
「んン、んふ…ん!」
最後のショーツも剥ぎとられて手で隠そうとすると、地面に敷いた毛皮の上に座って膝に乗せられる。両手で強くお尻を鷲掴みにされて声をあげてしまう。
「あぁん!」
自分の声が反響して聞こえて羞恥心が強くなる。そのまま揉まれながら首筋を舐められるが、何とか抗議する。
「あッ、ンひ…シザー、やめ…て」
「…嫌か?」
「っはあ…だって、ここ、そと」
「俺ら以外何もいない。こんなとこ、誰も来ねえよ」
「でも…恥ずかし…い」
「そうか…?ここは準備万端みたいだぜ」
お尻からそのまま手が伸びて秘所を弄ると、そこに溢れた蜜を指で掬い取って私の目の前で舐める。
「やぁ…」
こんなトコで触られて感じるなんて…私、変だ。恥かしくて目を伏せる。
「本当に嫌だったら止める。お前に嫌われたくねえからな」
真っ直ぐに見つめながら言われて迷う。
「わ、私…」
「言ってみろ。大丈夫だ、無理にはやらねえ」
優しい声に背中を押されて白状してしまう。
「外、で触られて、その…か、感じる、なんて…変でしょ?」
「変じゃねえよ」
「だって…」
「目隠しの時と同じ、俺だからだろ?」
「そ、それはそうだけど…」
「嬉しいぜ、俺だけがこんなお前を見られる」
「シザー…」
「ナツメ…」
大きく猛ったモノを出して秘所をぬちゃぬちゃと擦る。陰核に熱いモノが擦れて思わず仰け反り、シザーに胸を押しつけてしまう。
「あはぁ…」
「ナツメぇ…」
切なげに私を呼んで腰を振る。もう誤魔化しようがないほど蕩けた秘所がシザーの分身に絡みついて誘う。
「あぁ~、あふぅ…シザぁ…」
「挿れるぜ?」
「うん…」
ぬぷんっとすんなり奥まで挿いる。腰を押さえてグリグリと抉るように掻き回されて甲高い嬌声を上げる。
「あひぃん!あぁ!んん…ッん!」
声が響き、恥ずかしくて唇を噛んで声を押し殺す。
「っは、唇噛むな、血が出る。可愛い鳴き声聞かせろ」
そう言って唇を舐められてまた喘ぎ声が響く。
「んはぁ!あぁ!や、あぁ!もう、らめ、イク…」
「俺も…イキそう、だ」
ガンガン腰を突き上げながら快感を堪えるように胸をギュッと掴まれ、激しく悶える。
「んひぃ!あぁああん!イク、あ、ひぁあああ!!」
「うぁ!ああ!イク、出る、っああああ!」
身体を弓なりに仰け反らせて達した瞬間、シザーも同時に達して精液が2人の体を濡らした。
身体を拭いて着替え、たき火で温まる。
…ついに、外でやってしまった。また新しい扉を開けてしまった。恥ずかしいくせに気持ちイイのが問題だ。我ながら呆れる。嫌だと言いながら結局は…。悶々としていると顔を覗き込まれる。
「どうした?」
「…何でもない」
「…」
ねろん。
「ひゃうん!」
いきなり耳の中を舐められて声が出てしまった。
「な、何…」
「何でもねぇって顔じゃねえ」
「…えと」
「…後悔してるか?」
「え!ち、違うの!」
気落ちした声で言われて慌てると、抱えられてさっきと同じシザーの上を跨ぐように乗せられる。目線で促されて素直に話す。
「…その、恥ずかしいくせに、気持ち良くて、最初は嫌だって思うのに、結局夢中になっちゃって、我ながら呆れるというか…その…」
何言ってんの、私!これこそ恥ずかしい…。シザーの顔を見られなくて俯いていると、額にキスが落ちる。頬にも、耳にも、首筋にも。
「ナツメ」
いつもの優しい声に誘われて上を向くと、唇にも短いキスが降った。
「呆れる必要がどこにある。前も言ったろ?最高に可愛いくていやらしい、俺はそんなお前にたまらなくそそられる。お前にだけだ、こんな気持ちになるのは」
蕩けるように微笑むシザーを見てやっとホッとする。
「嬉しい…。私もシザーだけ」
「ナツメ…」
「シザー…」
洞穴の外は夕刻、雨はやっと上がった。
リニューアル初日は私も裏方としてショップを手伝った。売れ行きはまずまずといったところだ。小さなビンを見るのはやはりランクの低い冒険者だった。それが上級ポーションだということをなかなか信じられないようで、モーブさんが検品済だと話すとようやく安心してくれた。最初の内は説明が必要だろうし、色々言われる事もあると思うが、モーブさんとポピーなら大丈夫だろう。
初日の営業が終わった後マスターの部屋に集められ、セクロさんが私達の働きを労ってくれた。
「それでカースなんだがな…故郷に帰る事になった」
聞いた話だが、カースさんはシザーとロイさんにやられてからというもの、すっかり気が小さくなり防具作りにも支障をきたすほどだったとか。
「防具を作ってくれる人材はもう見つかった。…入ってくれ」
セクロさんの声に応じて入ってきたのは、バースさんだった。戸惑う声も聞こえたがそれも当然だ。バースさんは今まで鍛冶屋をやってはいたが、武器や防具よりも生活に必要な物を主に扱ってきたのだから。
「彼は最近、鍛冶と加工、2つのスキルを手に入れました。これは確認済みです。そこで、これからはバースさんに防具の製作をお願いしたいと思います」
モーブさんが説明を引き継いだ。
リニューアルに向けて準備している中、カースさんの抜けた穴をどう埋めようか頭を悩ませていたセクロさんとモーブさんに、シザーが提案したのだ。バースさんの仕事ばかりが増えて負担がかかりすぎるのでは?と心配する2人に、バースさん当人が言った。弟に手伝わせる、と。この街の武器屋の主人はバースさんの弟だそうで、人見知りな性格の為、全く営業出来ていないんだとか。この際だから弟と一緒に、自分の鍛冶屋で武器、防具はもちろん、生活用品まで一手に引き受けようという事になったらしい。バースさんが進み出て皆に言った。
「今回は、いや、今まで、弟のカースが皆に迷惑をかけてしまった詫びも兼ねて、2人でやらせてもらう事にしたんじゃ」
ロイさん、サラ、ポピーは唖然とする。平然としているのはセクロさんとモーブさん、それにシザーだ。私も昨夜カースさんが弟だと聞いて物凄く驚いた。
「スキル2つも!?それにバースさん3兄弟だったの?武器屋のルースさんが弟だってのは知ってたけど…え~!…でも2人でも結構大変じゃないですか?」
さすがにロイさんは回復が早い。
「そうじゃな、その時は、なあ、シザー?」
ニヤッとするバースさん。
「ああ、俺もスキルが取れたからな。たまに手伝う事にした」
そう、シザーもスキルが取れたのだ。私はシザーなら取れる気がしていたので、これについての驚きは少なかった。ロイさんもあまり驚かない。そうなると可哀想なのはサラとポピーだ。驚きの連続でもう言葉もないといった感じだ。
「スキル?何の?」
「鍛冶と加工」
「…2つも?」
「ああ」
「いつ?」
「3日前」
「何で?」
「知らねえ」
「どうやって?」
「…知らねえ」
「どうして!?」
「しつけえな!」
「だって~!」
「うるせえ!」
2人のやり取りを聞いていたバースさんが、ガハハハハ!と豪快に笑った。
「ロイ、わしが教えてやる。それはな…女神様のおかげじゃ!」
私を見て大きな声で言う。…バースさん、勘弁して下さい…。
「それはバースさんの実力だと言ったじゃないですか」
私はそう返したのだが…
「やっぱり!?そうじゃないかと思ったんだよね!さすが僕の女神様!」
ロイさんは勝手に納得している。
確かに才能の神様の加護の効果かもしれないが…、私は必要以上に目立ちたくない。と言ったのをロイさんは忘れちゃったのかな…。
「私の調合スキルの事もあるし、女神様説が信憑性を帯びてきたわね」
「ほえ~。凄いね~。さすが天使ちゃん」
サラとポピーもいつの間にか復帰している。セクロさんとモーブさんもニコニコしているだけで話を進めようとしない。ポピーのカミングアウトがあってから何度似たようなやり取りをしたか。私はさすがにちょっと困っていた。
うう…これ以上の広がりは避けたい…。そう思いながら俯くと肩を抱かれる。シザーだ。皆を見据えて口を開く。
「とにかくそういう事だ。バースさんとこは改装するから本格的に始まるのはまだ先だ」
一瞬黙った後、静かに続ける。
「…それと、お前ら全員、この数日ナツメを女神だ天使だ、騒ぎすぎだ。ナツメは目立つのは好きじゃねえんだ。黙ってても目立つのに、余計に拍車をかけるな。…分かったな?」
最後の一言は、数日前を彷彿とさせる冷たい声だった。皆黙って頷く。
「…話はこれで終わりだな?帰るぞ」
肩を抱いたままドアへ向かう。私は慌てて挨拶してシザーと一緒に部屋を出ると、少し不機嫌そうな横顔を見ながら小さな声で言った。
「シザー、ありがと」
きっと私の気持ちを察して皆に言ってくれたのだ。シザーは私を見て微笑んだ。
ギルドを出た時ロイさんが私達を追って出てきた。
「シザー!ナッちゃん!」
立ち止まって待つ。
「…ごめんね、ナッちゃん。ポピーちゃんと盛り上がって、ちょっと調子に乗った。気を付けるよ、許してくれる?」
「ロイさん…うん。もちろん」
「…ったく、お前まで一緒に騒いでどうすんだ。いい加減にしねえと、ナツメが許しても俺は本気で怒るぞ」
「うん…ごめん」
しょぼん、とするロイさんを見てため息を吐く。
「一緒に飯食うんだろ、さっさと行くぞ。腹減った」
「うん!ナッちゃんのご飯久しぶり!」
パッと明るくなるロイさん。私とシザーは顔を見合わせて笑い、3人で家に帰った。
☆
次の日、ポピーに頼まれたショーツを作り終えると裁縫スキルも4になった。技も同じレシピ発想だ。裁縫でこの技はあまり役に立たないのでは?と思っていたが、いい意味で裏切られた。布からも分かるし、素材からレシピ発想すると、それがどんな布になるかが分かる。布だけではない。紐や糸、ボタンに至るまで、裁縫に関するものなら全て分かるのだ。楽しくて色々試してしまった。こうなると機織りも欲しくなる。と思っていたらシザーがちょっと待ってろと言って小屋へ行き、何かを持って戻って来た。私が見たことのない形をしたそれは、布を織る器具だという。使い方がまだよくわからないが、何でも持っていたセリさんには感謝するばかりだ。
明日はシザーの提案で、初めて会った日に約束したサブル釣りに行くことになった。サブルがいるのは川の上流、その辺りの山には下流とは違う素材があるらしいので採取も出来て一石二鳥だ。前の世界で鮭といえば秋に釣れる魚のイメージだったが、ここでは年中川にいるらしい。魔物も存在する異世界では生態系も多少違うのだろう。
当日、朝早くに家を出て川の上流へと向かう。ちょっとした山登りだが、山育ちの私は気持ち良く登れた。ラウムリザードの時のオルト山は途中から岩山だったので、今日の方がより住んでいた山に近かった。
「よし、この辺でいいんじゃねえか?」
シザーが周りを見渡して言う。急な土手をシザーに抱えられて降りると土手から数メートルで地面は土から歩きにくい川辺の濡れた石になる。川幅は広く、深さも私の太腿辺りまである。水はとても澄んでいて綺麗だ。シザーはチェストハイのウェーダーとよく似た物を持っていたので、川の中に入って釣っていた。私は入らずに釣る事にする。
釣り始めて3刻が経過したころにはサブルやガトリーなど、計12匹が釣れた。大漁大漁。早めのお昼を食べることにして、土手近くにテーブルとイスを出す。私が作ってきた塩握りや卵焼き、トルト煮のミートボールを用意している間に、シザーが素早く焚き木に火を点けてガトリーの塩焼きを作ってくれた。
食後のお茶で一息つく。
「さて、採取しながら下るか」
「うん、そうだね」
そう言って立ち上がろうとしたとき、シザーが空を見上げて黙る。
「?」
私が不思議に思っていると独り言のように呟く。
「一雨来るな…」
「雨?」
私も空を見上げてみるが分からなくて首を傾げる。
「分かんねえか?」
「…うん、分からない」
「だろうな、ほとんど俺の勘だだからな。だが当たるぜ、早いとこ下りよう」
「うん」
☆
「…当たったね」
「まあな…」
シザーの勘は見事に当たった。山を下り始めるとどんどん空が暗くなり、一気に降り始めた。土砂降りだ。近くの洞穴に逃げ込んだが、雨は止みそうもなく足止めされてしまった。シザーが常備している焚き木で暖をとる。
「風邪ひく前に着替えろ」
「う、うん…はい、シザーの」
着替えを渡すとシザーはさっさと脱ぐ。こんな時にも関わらず見惚れてしまって慌てて目を逸らす。
「…脱がねえのか?」
いつの間に傍に来たのか、上半身裸で抱きしめられてドキン、とする。
「だって…し、下着までびっしょりで…」
「全部脱ぐのが恥ずかしいか?」
「…うん」
「俺が脱がしてやる」
耳元で囁いて服に手を掛ける。
「や…待って」
「ダメだ」
そう言って口を塞ぎ、私の肌を晒していく。
「んン、んふ…ん!」
最後のショーツも剥ぎとられて手で隠そうとすると、地面に敷いた毛皮の上に座って膝に乗せられる。両手で強くお尻を鷲掴みにされて声をあげてしまう。
「あぁん!」
自分の声が反響して聞こえて羞恥心が強くなる。そのまま揉まれながら首筋を舐められるが、何とか抗議する。
「あッ、ンひ…シザー、やめ…て」
「…嫌か?」
「っはあ…だって、ここ、そと」
「俺ら以外何もいない。こんなとこ、誰も来ねえよ」
「でも…恥ずかし…い」
「そうか…?ここは準備万端みたいだぜ」
お尻からそのまま手が伸びて秘所を弄ると、そこに溢れた蜜を指で掬い取って私の目の前で舐める。
「やぁ…」
こんなトコで触られて感じるなんて…私、変だ。恥かしくて目を伏せる。
「本当に嫌だったら止める。お前に嫌われたくねえからな」
真っ直ぐに見つめながら言われて迷う。
「わ、私…」
「言ってみろ。大丈夫だ、無理にはやらねえ」
優しい声に背中を押されて白状してしまう。
「外、で触られて、その…か、感じる、なんて…変でしょ?」
「変じゃねえよ」
「だって…」
「目隠しの時と同じ、俺だからだろ?」
「そ、それはそうだけど…」
「嬉しいぜ、俺だけがこんなお前を見られる」
「シザー…」
「ナツメ…」
大きく猛ったモノを出して秘所をぬちゃぬちゃと擦る。陰核に熱いモノが擦れて思わず仰け反り、シザーに胸を押しつけてしまう。
「あはぁ…」
「ナツメぇ…」
切なげに私を呼んで腰を振る。もう誤魔化しようがないほど蕩けた秘所がシザーの分身に絡みついて誘う。
「あぁ~、あふぅ…シザぁ…」
「挿れるぜ?」
「うん…」
ぬぷんっとすんなり奥まで挿いる。腰を押さえてグリグリと抉るように掻き回されて甲高い嬌声を上げる。
「あひぃん!あぁ!んん…ッん!」
声が響き、恥ずかしくて唇を噛んで声を押し殺す。
「っは、唇噛むな、血が出る。可愛い鳴き声聞かせろ」
そう言って唇を舐められてまた喘ぎ声が響く。
「んはぁ!あぁ!や、あぁ!もう、らめ、イク…」
「俺も…イキそう、だ」
ガンガン腰を突き上げながら快感を堪えるように胸をギュッと掴まれ、激しく悶える。
「んひぃ!あぁああん!イク、あ、ひぁあああ!!」
「うぁ!ああ!イク、出る、っああああ!」
身体を弓なりに仰け反らせて達した瞬間、シザーも同時に達して精液が2人の体を濡らした。
身体を拭いて着替え、たき火で温まる。
…ついに、外でやってしまった。また新しい扉を開けてしまった。恥ずかしいくせに気持ちイイのが問題だ。我ながら呆れる。嫌だと言いながら結局は…。悶々としていると顔を覗き込まれる。
「どうした?」
「…何でもない」
「…」
ねろん。
「ひゃうん!」
いきなり耳の中を舐められて声が出てしまった。
「な、何…」
「何でもねぇって顔じゃねえ」
「…えと」
「…後悔してるか?」
「え!ち、違うの!」
気落ちした声で言われて慌てると、抱えられてさっきと同じシザーの上を跨ぐように乗せられる。目線で促されて素直に話す。
「…その、恥ずかしいくせに、気持ち良くて、最初は嫌だって思うのに、結局夢中になっちゃって、我ながら呆れるというか…その…」
何言ってんの、私!これこそ恥ずかしい…。シザーの顔を見られなくて俯いていると、額にキスが落ちる。頬にも、耳にも、首筋にも。
「ナツメ」
いつもの優しい声に誘われて上を向くと、唇にも短いキスが降った。
「呆れる必要がどこにある。前も言ったろ?最高に可愛いくていやらしい、俺はそんなお前にたまらなくそそられる。お前にだけだ、こんな気持ちになるのは」
蕩けるように微笑むシザーを見てやっとホッとする。
「嬉しい…。私もシザーだけ」
「ナツメ…」
「シザー…」
洞穴の外は夕刻、雨はやっと上がった。
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