R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる

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48.作戦前夜

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 シャハールを出た日付が変わる間際にミクサの街の近くに到着した。ビスタさんがルイさんの元へ知らせに走ってまだ変わり無い事を確かめて戻ってきた。わたしたちは近くで野営をし、朝街へ入る事になった。

  テントの中、レドの胸に抱かれて横になってホッと息をつく。

 「…疲れただろう?すまないな。普通初仕事はもっと安全なものをやらせるんだが…今回は仕方が無い。怖いか?」
 「…やっぱり少し怖いかな。でもレドが一緒だもん、前みたいにただ待つよりずっといい」

  広い胸に顔をすりすりすると、フッと笑う。

 「やはりお前は面白い女だな」
 「…面白いって嬉しくないよ」
 「フフッ、嬉しがれ。俺の面白いは褒め言葉だ」
 「むぅ…」
 「…大丈夫だ。誰も死なせやしない」
 「レド…」

  こんな時なのに…強い意思の篭った漆黒の瞳に見惚れる。わたしたちはそっと口づけを交わした。











 朝、街へ入るとルイさんが3人の男性と一緒に出迎えてくれた。1人は御老人、後の2人は壮年。レドと挨拶を交わし、隣に立つわたしを見て目を丸くしている。御老人は街長で、壮年の2人はその補佐役という事だった。レドがわたしを紹介してくれたので挨拶したが・・・彼らは未だ驚きから立ち直っていなかったです。

  話は街の集会所でする事になり、そのまま移動した。




  今回レドが来る事になった経緯を聞き終えた街長さんたちは、衝撃的な事実に驚愕するも、悲観にくれる様子はなかった。

 「私たちにできる事があれば何なりとお申し付け下さい」
 「…早ければ明日の夜には始まる。全てが終わるまで、街への出入りを禁じてくれ。例外は許さない。入り口に部下を1人置く。どうしても入りたい者は俺たちで保護し、済んだら街へ入れる。皆にも家でじっとしているのが一番安全だと伝えてくれ」
 「分かりました」

  集会所はわたしたちが借りる事になり、街長さんたちは帰っていった。

 「二人一組で周辺の調査だ。正午に戻れ」

  レドの短い指示を受け、皆サッと散る。

 「ソニア、俺たちも行くぞ」

  そう言ってガバッとわたしを抱き上げた。

 「わぁ!?ちょっとレド!」
 「時間が惜しい。いいから黙って抱かれてろ」

  言い方ってものがあるでしょうに!それいやらしく聞こえるからね!

  ・・・と思うが、そんな事言っている場合ではないのは承知しているので頷いておく。

 「…はい」
 「よし」

  レドは満足気に微笑んで集会所を出た。




  わたしを抱えて走っても彼は凄く速かった。安定感があって揺れも少ない。あっという間に目的地に着いた。

  そこは山の麓で、目の前の山を越えるとアジトのある山がある。レドモンドの予想通り、街からここまでずっと馬の蹄の跡が残っていた。ここから一直線に山を越えるのがアジトまでの最短ルートだ。

  山から平地に出る辺りを一目で見渡せる場所にわたしを降ろす。

 「十中八九、あの山から来る。最初にシェスト、デッカー、後部下の魔人が1人。残りの獣人は遅れて馬で来るだろう。アジトがばれた以上、同じ場所に長居は出来ないからな。明日からここで待ち伏せする。ソニア、お前には魔眼で山全体を視てほしい」
 「全体?」
 「ああ、開いてみろ」
 「うん」

  言われて開眼するとレドはわたしの後ろに回って肩に手を置く。

 「いいか、一点に集中するな。視野を拡げて山の木々の向こう側を視てみろ」

  視野を広げて木々の向こうを・・・そう意識した途端、不思議な感覚が全身を駆け巡る。

  気がつくと、自分を中心として360度全てが視えていた。邪魔な木々は消え、山肌がくっきりしている。山のあちこちにいる鳥や動物が何なのか、同時に理解出来た。

  魔眼って凄い・・・。

  自分の事ながら妙に感心してしまった。なるほど、これなら何処から何人敵が来るか丸わかりだ。

 「どうだ?出来そうか?」
 「うん、視えるよ。山の隅々まで…レドも視える」
 「…俺も?まさか、背後まで全て視えるのか…?」

  レドの驚いた顔が視えた。魔眼を閉じて振り返る。

 「まさかここまでとはな…。だが魔力はどうだ?かなり消費したんじゃないか?」
 「大丈夫。今のでやり方が分かったから、少し魔力を抑えながら続けられるよ」
 「…抑えながら、か。高度なテクニックを簡単そうに…それを出来ない奴だって結構居るんだぞ?」
 「え…そうなんだ…。大丈夫だよ、嘘ついてない。出来る」
 「フッ、疑った訳じゃない。…流石俺の妻だ」

  流石俺の妻・・・コレは嬉しいです。凄く嬉しいです。柔らかく微笑むレドの服を掴むと、頭を撫でてくれる。いちゃついてる場合じゃ無いけど、この位いいよね?




  正午。

  それぞれ調査報告をして細かい作戦を打ち合わせるともう夕方になってしまった。念のため街の四方に交代で見張りを立てる事にして夕飯などを済ませ、早めの就寝となった。




 「ルーカス、どうしてるかな…?ちゃんとご飯食べてるかな?」

  レドの腕の中でうとうとしながら呟く。

  マスターとしても日々忙しい彼は、時間が無いと食事を抜いてしまう事が多々ある。最近はお願いすると食べてくれるが、相手がわたしだから素直に食べるのだとレドに言われた事があった。来る前のあの表情といいい、気になってしまう。

 「…あいつは待つ事に慣れてはいるが…今回は違うだろうな。今頃は経験した事の無い思いをしているだろう」
 「……」
 「そんな顔するな。作戦を成功させて早く無事な姿を見せるんだろう?」
 「…うん」
 「明日の朝は早い。もう寝ろ」

  レドはそう囁いて頬にキスした。











 その日の深夜、シャハール。

  広いベッドルームのバーカウンターにひとり座っているルーカス。だが飲んでいるのはワインではなくコーヒーだ。2人がいなくてはお酒を飲む気にもなれない。眠れないのは分かっているのでこうして時間を潰している。

 「はぁ…」

  何度目になるかも分からないため息をついてカップを傾ける。すっかり冷めたコーヒーはいつもより苦くて美味しくない。

 「待つのは慣れているつもりだったんですがね…」

  ぽつりと呟く。

  レドモンドというボスは、指示だけ出してじっとしている何処ぞの上層部とは違う。これだけの部下を抱えてもなお、いつも自ら攻撃の先頭に立って皆を率いる。部下は皆、彼の偉大な背中を見て憧れ、目標にし、敬う。

  常にレドモンドの少し後ろに居たルーカスは、留守を任されることが多い。腕が鈍らない程度には外へ出ているが、No.2であるが故ボスのレドモンドとは一緒にならない。自然と待つ事に慣れたつもりだった。だが・・・ソニアという生涯寄り添える妻と、同じ夫という立場のレドモンドの2人を得て、自分にもまだこんな感情があったのだと思い知った。

  待つのは心配だし、寂しいが・・・こんな風に想える相手がいることが幸せでもある。

 「2人とも…どうか無事で…」

  薄暗い部屋にルーカスの声が吸い込まれていった。 
 
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