139 / 167
第6章
139.予備服
しおりを挟む「じゃ~ん! ねぇねぇお兄ちゃん!どう!?」
食事を終えたティータイム。
ゆっくりと食後のコーヒーに舌鼓を打っていると、後ろからそんな声が聞こえてきた。
言葉の主を聞き間違えることなんてありえない。紗也だ。
ようやくか。と思い振り向くといつも可愛い紗也がもっと可愛い姿となって俺の前に姿をさらしていた。
「おぉ………すごいな」
思わず感嘆の言葉とともに妹の姿を目に焼き付ける。
食事前にエレナの部屋で測った寸法。それをこの短時間で神鳥さんが調整してくれたらしい。
少女たち四者四様でそれぞれ特色のあったサンタ服、紗也が身を包むものは赤白を基調としているのと帽子、そしてミニスカは他の四人と変わりないが、アイさんと同じように透明なストラップを使った大胆な肩出しファッション。
そして前4人と大きく違う点は、丈が異常に短く脇腹までしか無かった。
当然アンダーシャツなど着用していないため完全に露出してしまっているお腹周り。いわゆるへそ出しファッションだ。
紗也はエレナ以上ではあるものの凹凸は豊かではない。それでも露出過多ともいえる格好は一種の水着のよう。
だからだろうか。一見大胆にも見えるそのファッションは紗也が着る事によって緩和し、とても可愛らしいものへと昇華していた。
「凄く似合ってる! 可愛い!!」
「ふふ~ん! でしょうでしょう!! これアイさんが予備を貸してくれたの!!やっぱりいい人だよね!!」
「……えっ?」
思いもよらぬ言葉に思わずフリーズしてしまう。
これを……アイさんが?
信じられなかった。キワドいのは当然だが、それ以前の問題としてサイズが小さい。太ってるとかじゃなくて背丈的な意味で。
いくら調整したとはいえ限度があるだろう。特に胸周りなんてはちきれないほどになってしまう。
そんな思いを込めて隣に座るアイさんに視線を移すと見事目を逸らされた。
「アイさん。これ、サイズとか際どさとか色々……自分で着ようと思ったの?」
「えっと……その……これはですね…………そう! 予備は気持ちよく来てもらうための方便で、紗也ちゃんにも着てもらおうって買ったんですよ!サイズもぴったりでよかったです!」
一時目を泳がしていたがすぐに説明をしてくれるアイさん。
しかしその説明であぁなるほど、と得心した。予備は方便、紗也の分もちゃんと準備していたということか。
一方で俺からアイさんへの決めつけが行き過ぎていたことを反省する。最近の彼女は暴走しがちだから思い込みが選考しすぎてしまった。
――――しかし、そう安堵しようとした所を、エレナが口を挟む
「何言ってるの。買った日早々そのパツパツなのを着て『慎也さんに襲ってもらいます!』なんて豪語してたじゃない」
「ちょっとエレナ!!」
まるで図星を突かれたかのように露骨に慌てだすアイさん。
……前言撤回。やっぱりだった。
「そういやそうだったねぇ。それで私たちがNG出したんだっけ。返品するって言ってたけどまだ持ってたんだ」
「リオまでぇ……」
いつも一緒の二人に暴露されてヘナヘナとうなだれていくアイさん。
アイさんと紗也の身長差は公式のプロフィールを参照するなら15から20センチくらい。それでこれを着るとしたら相当小さいだろう。
もはや着れるか着れないかとかそんなレベル。紗也でさえへそ出しなのにアイさんが着てしまったら…………
「むぅ~! お兄ちゃん、今日アイさんにデレデレしてばっかり!」
「えっ!? い、いや、そんなこと無いよ!」
「ウソ! 今だってアイさんの胸元見て鼻の下伸ばしてたじゃん!!む~!!」
「そんなわかりやすいことは絶対してな――――アイさん?」
紗也の追求を慌てて否定していると、不意に手の上に置かれる暖かな感触がして思わず顔を向ける。
すぐ隣にはアイさんがそっと手を添えている。さっきまでうなだれていた彼女は少しだけ涙目になりながらこちらを見上げて問いかけた。
「慎也さん……この服、私で想像してたんですか?」
「いや、そんなことは……えっと……」
「その、二人きりになったらいくらでも着てあげますので、今は、この服で満足……していただけませんか? もしダメって言うんでしたら、今すぐこの服を脱いでそっちに――――」
ドンドンと、一歩、また一歩を後ずさる俺を追いかけるように話を進めていくアイさん。
何故か彼女は服を脱ぐという話に行き着き、気づいた時には自らの服に手をかけているところだった。
クッと、手にかけた服に力が入ったところで、もしかしたら反射か、俺の最後の理性が働いて目を瞑ってしまう。
「ダメーーーー!!」
目を瞑った瞬間響くのは紗也の甲高い否定の声。
そして同時に、俺の膝上に柔らかくも力強い何かがぶつかる感覚に襲われた。
「…………? さ……や……?」
ゆっくりと目を開けていくと俺とアイさんの間を割り込むように飛び込んでくる紗也の姿が。
彼女は勢いのまま座っていたソファに飛び込んできたようで、ミニスカートが翻って水色の下着が丸見えになってしまっていた。
「アイさん!いくら何でもそれはダメだよ!! みんないるんだしさ!!」
キッと睨みつけるようにアイさんへと声を上げる紗也。
俺はスカートにまったく気づいていないと見てそっと翻った部分を元に戻す。さすがに妹の下着で過剰に反応することはない。ちょっとは気にするけど。
「えっ……あっ……! そ、そうでした……。すみません、私もちょっとお酒の気に当てられたのかもしれません。ちょっと外の風浴びてきます」
自らの行いに気がついたのか、服にかけていた手をすぐ離していくアイさん。
背を向けて歩き出す彼女にホッと安堵する気持ちともったいない気持ちが同時に襲われる。
「お兄ちゃんも! あんまり気を多くしてるといつか大変なことになっちゃうよ!」
「はい……気をつけます…………」
ぐうの音も出なかった。
俺もすぐに押さえればよかったのにと、自らを反省する。
「だからお兄ちゃん! お兄ちゃんはずっと妹のあたしの面倒見てればいいの!」
「はい……その通……り……んんん?」
ちょっとまって。
勢いにおされてつい肯定しようとしてしまったけど、それもちょっと違う気がする。
「な~んて、冗談だよ。 でも、あたしがこっちに居るときはちゃんと見ててね?」
「それは……もちろんだよ。約束だからね」
膝の上に座って身体を預けてくる紗也の頭をそっと撫でる。
紗也も、いつかは俺の手を離れていくのだろうか。それは辛いがいつかは受け入れなければならない日が来るかもしれない。
俺は頭に触れながら、いつか来る日を思い浮かべて鼻の奥のツンとした気持ちを抑えるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる