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番外編
欲しくて食べたくて【転勤編】10
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「ごめん、1から説明するから」
家に帰ろうとすると、私の退勤を待ってたらしい淳平くんに攫われるように連れて行かれる。その際に手はしっかりと握られて。
(手なんて繋いだのいつぶりだろう)
こんなときなのに、ちょっと嬉しい自分がいるのが、我ながらちょろいなって思う。とりあえず外食にしようかと思っていたけど、大事な話し合いとのことで家へと帰宅することになった。帰ると荷物を置き、手洗いうがいを済ませている間なぜか周りをうろちょろされる。
(逃げないように見張ってるのかな)
とりあえず帰宅後の片付け等を済ませると、それぞれリビングのテーブルに向かいあって着席する。
「とりあえず説明するから聞いて」
「わかった」
「まず、俺と菊地さんは昔も今も付き合ってるとかないし、付き合ってた事実もないから。ただのOJTトレーナーと新人っていう間柄でそれ以上でもそれ以外でもない。これ前提ね?」
「う、うん?」
「まぁ、聞いて」
淳平くんの話を総合すると、最近引っ越してから真優さんから急に連絡を送られてくるようになった。まぁ懐かしいからかな、と最初は普通に受け応えしていたけど、だんだんと連絡の頻度が上がり、内容も相談というか家庭の悩みというか重い話題になってきた。けれど、淳平くんはそもそも赴任したばかりで仕事も忙しいし、私の様子もおかしい気がしていたしで自分からの連絡頻度を下げたけど、そうしたら今度は一方的に送られてくるようになったらしい。
「証拠といってはなんだけど、特に消しても何もないから見てほしい」
出されたのは携帯電話。そして画面は淳平くんと真優さんとのSNS上でのやりとりが表示されている。確かにスクロールすると以前では1日2、3通のやりとりがここのところ10~20件ほど一方的に送られてきている。内容も最近では私のことや淳平くんのことなどで「連絡してほしい」「話したい」と文面だけ見たらちょっと怪しさを感じるかもしれない内容ばかりが一方的に送られてきていた。
「俺は全然気づいてなかったけど、菊地さん、真知に色々と接触してたんだってね。気づかなくてごめん。さっき会ったのもきちんと話したくて、指定されたのが真知のパート先だったんだけど、今日は休みだと思って安請け合いしちゃってさらに誤解を生んでごめん」
「いや、私も急に態度悪くてごめんなさい」
「でね、どうしてこんなことをするのかって話になったんだけど、人様の家庭のことをあまり喋るのはよくないとは思うけど、今回は当事者だから聞いてほしい」
「わかった」
淳平くんの親交のある後輩から聞くに、隣の菊地さんご夫妻は元々略奪婚だったそうだ。菊地課長には妻子がいたそうだが、不倫のゴタゴタで結局離婚して、真優さんと再婚した。当初は仲良くしていたそうだが、結局菊地課長は現在再び不倫を始め、情緒不安定だったところに淳平くんと私が来てしまったらしい。それで新人時代に優しくされたこと、現在の淳平くんの出世などを鑑みて今度は淳平くんに鞍替えしようとしたらしい。
「まぁ傍迷惑な話だけど、これが今回の顛末。もちろん俺は菊地さんとそんなつもりもないし、今後もそういう予定はないよ。今まで不安にさせてたのに気づけなくてごめん。ちょっと今回悪質なのと別件でも色々出てきたし、総務とかに伝えて対処済みだから。もうさすがに菊地さんももう関わって来ないだろうから安心して」
素直に謝ってくれる淳平くん。あぁ、本当私1人で空回っていたんだな、と実感する。そして圧倒的に本音での会話が足りないことに気づいた。
「ううん、私こそ、ちゃんと言えば良かったのに。ごめんなさい。つらかったし、傷ついたし、悲しかったけど、そもそもちゃんと淳平くんに言ってたらこんなすれ違いなんて起きなかっただろうし。本当にごめんなさい」
「今度からは俺も隠さずに話すようにするから」
「うん、私も素直な気持ちを言うように心掛ける」
こうして話し合えば何気ないことだったのかもしれない。でも、あの出来事があったからこそ、夫婦として深くなったようにも思えた。
家に帰ろうとすると、私の退勤を待ってたらしい淳平くんに攫われるように連れて行かれる。その際に手はしっかりと握られて。
(手なんて繋いだのいつぶりだろう)
こんなときなのに、ちょっと嬉しい自分がいるのが、我ながらちょろいなって思う。とりあえず外食にしようかと思っていたけど、大事な話し合いとのことで家へと帰宅することになった。帰ると荷物を置き、手洗いうがいを済ませている間なぜか周りをうろちょろされる。
(逃げないように見張ってるのかな)
とりあえず帰宅後の片付け等を済ませると、それぞれリビングのテーブルに向かいあって着席する。
「とりあえず説明するから聞いて」
「わかった」
「まず、俺と菊地さんは昔も今も付き合ってるとかないし、付き合ってた事実もないから。ただのOJTトレーナーと新人っていう間柄でそれ以上でもそれ以外でもない。これ前提ね?」
「う、うん?」
「まぁ、聞いて」
淳平くんの話を総合すると、最近引っ越してから真優さんから急に連絡を送られてくるようになった。まぁ懐かしいからかな、と最初は普通に受け応えしていたけど、だんだんと連絡の頻度が上がり、内容も相談というか家庭の悩みというか重い話題になってきた。けれど、淳平くんはそもそも赴任したばかりで仕事も忙しいし、私の様子もおかしい気がしていたしで自分からの連絡頻度を下げたけど、そうしたら今度は一方的に送られてくるようになったらしい。
「証拠といってはなんだけど、特に消しても何もないから見てほしい」
出されたのは携帯電話。そして画面は淳平くんと真優さんとのSNS上でのやりとりが表示されている。確かにスクロールすると以前では1日2、3通のやりとりがここのところ10~20件ほど一方的に送られてきている。内容も最近では私のことや淳平くんのことなどで「連絡してほしい」「話したい」と文面だけ見たらちょっと怪しさを感じるかもしれない内容ばかりが一方的に送られてきていた。
「俺は全然気づいてなかったけど、菊地さん、真知に色々と接触してたんだってね。気づかなくてごめん。さっき会ったのもきちんと話したくて、指定されたのが真知のパート先だったんだけど、今日は休みだと思って安請け合いしちゃってさらに誤解を生んでごめん」
「いや、私も急に態度悪くてごめんなさい」
「でね、どうしてこんなことをするのかって話になったんだけど、人様の家庭のことをあまり喋るのはよくないとは思うけど、今回は当事者だから聞いてほしい」
「わかった」
淳平くんの親交のある後輩から聞くに、隣の菊地さんご夫妻は元々略奪婚だったそうだ。菊地課長には妻子がいたそうだが、不倫のゴタゴタで結局離婚して、真優さんと再婚した。当初は仲良くしていたそうだが、結局菊地課長は現在再び不倫を始め、情緒不安定だったところに淳平くんと私が来てしまったらしい。それで新人時代に優しくされたこと、現在の淳平くんの出世などを鑑みて今度は淳平くんに鞍替えしようとしたらしい。
「まぁ傍迷惑な話だけど、これが今回の顛末。もちろん俺は菊地さんとそんなつもりもないし、今後もそういう予定はないよ。今まで不安にさせてたのに気づけなくてごめん。ちょっと今回悪質なのと別件でも色々出てきたし、総務とかに伝えて対処済みだから。もうさすがに菊地さんももう関わって来ないだろうから安心して」
素直に謝ってくれる淳平くん。あぁ、本当私1人で空回っていたんだな、と実感する。そして圧倒的に本音での会話が足りないことに気づいた。
「ううん、私こそ、ちゃんと言えば良かったのに。ごめんなさい。つらかったし、傷ついたし、悲しかったけど、そもそもちゃんと淳平くんに言ってたらこんなすれ違いなんて起きなかっただろうし。本当にごめんなさい」
「今度からは俺も隠さずに話すようにするから」
「うん、私も素直な気持ちを言うように心掛ける」
こうして話し合えば何気ないことだったのかもしれない。でも、あの出来事があったからこそ、夫婦として深くなったようにも思えた。
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