婚約者が親友と浮気したので婚約破棄したら、なぜか幼馴染の騎士からプロポーズされました

鳥柄ささみ

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番外編 結婚式(前編)

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「はぐぅ、うぇええええ、ま、マリーリさまぁあああ。おぉおおお、お綺麗ですぅぅぅ、お綺麗ですよぉおおお!!!」
「泣くな、って言ってたミヤが一番泣いてるじゃない……」

 よしよし、と号泣するミヤを慰めるマリーリ。
 ウェディングドレスに着替え、ヘアメイクをしている途中からぐずぐずと泣き出したミヤだったが、支度全てが終わった頃にはミヤの顔面は崩壊していた。
 以前マリーリが引きこもっていたときの泣き顔よりもぐちゃぐちゃのびちゃびちゃで、思わずマリーリがもらい泣きしそうになる。
 だが、「マリーリさまはまだダメですぅうううう! まだ泣いちゃダメですぅうう」と嗚咽混じりに説得力がないものの鬼気迫る勢いのミヤに言われてしまって、出かけた涙が引っ込んだ。

「まぁ、まぁまぁまぁまぁ、マリーリ!!! なんて綺麗なんでしょう……っ! さすが私達の娘だわ。そのストロベリーブロンドの髪に純白のドレスがなんと似合うこと……!! やはりAラインのドレスで正解ね!! そのレースもリボンもやっぱり見立てどおりだわ。装花との色合いの相性もいいし、本当に素敵だわ!!」

 今度はマーサがやってきてマリーリの姿を見るなりはしゃぎ始める。
 その姿はまるで母というより年の近い姉のようなはしゃぎっぷりであった。
 だが、急にぶわっと涙が湧き出たかと思えば、マーサは突然おいおいと泣き出す。ミヤといい、マーサといい、感情の揺れ幅が大きすぎてマリーリは困惑した。

「お、お母様……そんなに泣かなくても……」
「うぅううう、とうとうこんな日が来るなんて。もうマリーリったら、いつのまにかこんなに大きくなって……一時はもう野山を駆けずり回りすぎて野生に戻っていくのかと……っ」
「ちょ……っ、お母様。私をなんだと思ってたのよ……」
「……うぅうううう、でもこんなに綺麗な花嫁になって……っ!! 私は世界一幸せな母親だわ!!」

(なんかはぐらかされた気がする)

 マリーリはモヤモヤしつつも突然泣き始めたマーサを宥める。
 しかし、さすがにミヤとマーサの二人がかりで泣かれてしまってはどうすることもできず、おろおろしながら慰めつつも途方に暮れていると「何をやっているんだお前達は」とグラコスに呆れられるのだった。


 ◇


「バージンロードというのは、なんだか緊張するな」
「もう、お父様まで」

 グラコスがそわそわしているのを、マリーリは苦笑しながらグラコスと腕を組む。
 こうしてグラコスと腕を組むのなんて大きくなってから初めてかもしれない、と思うとなんだかマリーリは嬉しいような恥ずかしいようなそんな気持ちになっていた。
 すると、おもむろにグラコスがマリーリの腕に手を重ねる。
 マリーリがグラコスに視線を向けると、グラコスもまたマリーリに視線を向けていた。

「マリーリもとうとう嫁ぐのか……」

 ふにゃっと顔を崩し、泣きそうな表情になるグラコス。
 そんな父を見て、自分もつられて泣きそうになるマリーリだが、さすがに一家全員で泣いていたらいよいよ結婚式が成り立たなくなるとグッと堪える。
 案外誰かが動揺しているときは冷静になるもので、マリーリも例外ではなかった。

「何よもうお父様。今更でしょう?」
「そうなんだが……。なんだかあっという間だったなぁ、と」

 マリーリを通して過去を思い出しているのか目を細めて微笑むグラコス。
 それがなんだかくすぐったくて、マリーリは恥ずかしくなってくる。

「それ、お母様にも言われたわ」
「はは、夫婦で似ているということか。だが、我が娘ながらよくもこうまっすぐと優しく育ったと思う。あんなにお転婆なマリーリがこうも見違えて……」
「もう、お父様ったら。私は結構前から淑女として頑張ってたわよ! というか、あんまり待たせていたらジュリアスが迎えにくるかもしれないわよ」
「あ、あぁ、それは確かにそうだな。だいぶ押していたことを忘れていた」

 つい思い出に浸ってしまったとグラコスが慌て出す。
 既にミヤとマーサの号泣のせいで時間は押していて、ジュリアスのことだからきっと首を長く長くして待っているに違いないとマリーリは思っていた。


 ◇


「……まだ来ないのか」

 一方朝から待たされっぱなしのジュリアスは気がそぞろであった。
 まだ朝起きてからというもの彼女に会っていないジュリアス。
 花嫁姿はお楽しみに、ということでバージンロードで待っているが待てど暮らせど来る気配がない。
 ジュリアスの苛立ちに気づいたのか、「僕が見てこようか?」というブルースにすかさず「ダメだ」と即却下するジュリアス。
 自分よりも早くマリーリの花嫁姿を見せるなんて考えただけでも腹立たしいとブルースの提案にジュリアスはさらに苛立った。

「もう、火に油を注がないでちょうだい」
「だって、ジュリアスがイライラしてるようだったからさ~」
「本当、貴方達ってズレてるわよね」
「酷いな、母さん。僕はジュリアスのことが大好きなだけなのに~」
「そこが空回ってるというのだ」
「父さんまで? そうは言うけど、僕が構わないと延々とジュリアスは僕と話してくれないじゃない」
「それは貴方が昔から構いすぎたせいだと思うけど」

 バード家がコソコソと話しているのを聞きながら、まだかまだかとジュリアスは待つ。
 今すぐにでもマリーリを迎えに行って早くこの目で見たいが、先程から近くで控えているグウェンに「まだですよ。まだですからね。もうちょっとで来ると思いますから、そこで大人しく待っていてくださいね」と何度も静止を促されては留まるしかできなかった。

「あ、いよいよ入場するようよ」

 誰かの声と共にジュリアスがパッと顔を上げると、聖歌隊や演奏家達が急に慌ただしく動き始めていた。
 いよいよマリーリが入場してくるのだ、と思うとあれだけ待ってイライラしてたはずのジュリアスなのに、緊張で胸が騒つく。
 頑なにドレスのことやヘアメイクなどのことを教えてくれず、当日のお楽しみだと焦らされたジュリアスにとって、ようやく待ちに待った瞬間であった。
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