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番外編 ジュリアス編3
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「ジュリアスさま、お口に合いませんでしたか?」
「いえ、そんなことはありません。とても美味しいです。お気遣いありがとうございます」
努めて口元を歪ませて、微笑んでいるように見せる。
すると目の前の女は満足そうに微笑んだあと、俺の腕に胸を押し付けながらしがみついた。
「ジュリアスさまったらお優しいんですのね。ふふ、この優しいジュリアスさまが私のものだってマリーリに教えてあげたいわ。あぁ、そのためにも早くジュリアス様と結婚したいですわ……」
虫唾が走るというのはきっとこういうことを言うのだろう。
潤んだ熱い眼差しで見つめられて、笑顔が引き攣りそうにながらジュリアスは「落ち着け、深呼吸しろ、ジュリアス」と心の中で自分に何度も言い聞かせた。
できれば今すぐこの身体を払いのけてしまいたい衝動に駆られるのをグッと堪えながら、頭の中でマリーリとくっついているところを妄想して正気を保つ。
(これがマリーリだったら……これがマリーリだったら……どれほどいいか……っ!!)
もし実際のマリーリに抱きつかれたのなら、さらに密着するように引き寄せ、恥ずかしがる彼女の顎をすくい、あわよくば唇を奪いながらさらに深く抱きしめてこれでもかと言うくらい求めるというのに。
(そう、あくまでマリーリだったらの話だが……!)
いくら妄想したところで現実にくっついているのは違う女。
しかも愛しいマリーリに危害を加える憎き相手であり、実際のマリーリとはこいつとのせいですれ違い生活を送らされ、そろそろ堪忍袋の緒が切れそうなくらいギリギリの精神状態だった。
(マリーリを抱きしめたい。匂いを嗅ぎたい。口付けしたい。そしたら、押し倒して齧り付いて……あぁああああ、もうこんな生活おかしくなりそうだ……!!)
せっかくマリーリとの同棲生活を始めたというのに、最近では満足に触れることもできなければ会話すらない。
おまけにマリーリはギルベルトのパーティー以降の俺の行動で疑心暗鬼に陥っているようで、ほんのりと距離を置かれている。
できれば早急に誤解だ、と伝えたいがこの任務をしている手前そういうわけにもいかず、二進も三進もいかない状態で俺のモヤモヤはピークに達していた。
できれば今すぐギルベルトの首を絞めて「こんな任務もう嫌だ!!」とぶん回したくなる。
だが、この一件もいよいよ終盤。
ある程度の裏付けも取れ、あとは魔女の秘薬さえ見つかればどうにかなるというところまで来たのだから最後の踏ん張りである。
……と自分に言い聞かせて、今日も隙を見つけて家探しのタイミングを見計らっていた。
「ねぇ、ジュリアスさま。そろそろわたくし、貴方さまともっと深い仲になりたいですわ……」
そう言うと意味ありげに足を撫で回してくるキューリス。
あまりの気色悪さに背筋がぞぞぞっとするのを勝手に好意的に思ったのか、妖艶な笑みを浮かべると顔を近づけてくる。
ジュリアスは吐き気を催しながらも笑顔を張り付けて寄せられた身体をグッと押し返すと、キューリスはあからさまに不服そうな表情をした。
「ジュリアスさま。どうしてダメなんです? わたくしを愛してくださっているのでは?」
「……ダメですよ、キューリスさま。ご自身のお身体を蔑ろにされては。女性なのですから、節度を持たねば」
「いつも貴方はそればかり。……たまには理性を捨ててもよいのでは?」
「いいえ、ダメです。そのための結婚ですから。楽しみはあとにとっておいたほうがより楽しめますよ」
(理性捨てるってどういうことだ。理性捨てるとしたらマリーリの前だけに決まっているだろう!)
内心で突っ込みながらも、薬の効果にかかっている設定なため下手なことを言えないぶんストレスが半端なかった。
かかっているフリは思いのほか難しく、さらにこうしてキューリスが積極的なことも相まって、そろそろ演技をするのも限界だ。
「申し訳ありません、キューリスさま。お手洗いをお借りしても?」
「えぇ、もちろんですわ。……ふふ、男性には生理現象ですものね」
何やら勘違いしているのも腹立たしいが、そんな様子はおくびにも出さずに部屋を出る。
そして、既に何人か侍女や執事としてスパイに送り込んでいる人物達に目配せすると、人気のないところで報告し合った。
「見つかったか?」
「いえ、あの女の部屋も探したましたがまだです」
「部屋にもないのか……。あとはどこを探してない?」
「残りは開かずの間ですね」
「やはりそこか。……さて、どうするか」
オルガス公爵家には開かずの間という場所があった。
元々はオルガス公爵の実の娘の部屋らしいが、亡くなって以来開かずの間となっているらしい。
「鍵はキューリスが管理してるそうですから、恐らく彼女が持っているのかと」
「なるほど。さて、どうしたものか」
「あの、一つ気になることが」
「何だ」
「開かずの間から音や声がするんです」
「何だと? その話詳しく」
オルガス公爵の妻は娘が亡くなって精神に支障をきたして実家に帰されているらしく、この家にはオルガス公爵とキューリス以外はいない。
それなのに音や声がするというのは不可解であった。
「使用人は開かずの間に近づくなと言われて普段はあの辺りは行けないんですけど、先日の国王のパーティーのときにこっそり行ったら中から物音とか細い声が聞こえて来たんです。しかも、どうやら一人ではなく複数いるようで」
「それは本当か?」
「はい。声をかけようかとも悩んだのですが、下手に騒ぎになってはいけないとそのときはやめたのですが、声をかけた方がよかったでしょうか」
「いや、問題ない。ここでバレたら全てが水の泡だからな。その判断で問題ない。……だが、そうなると魔女の秘薬だけの話じゃなくなるな」
以前ギルベルトが忌々しげに呟いていたことを思い出す。
(何か関係があるのだろうか)
嫌な予感がしながらも、そろそろ戻らねばまた変な詮索をされかねないと先程の部屋に戻る。
そして、適当に話を切り上げて「ぜひ泊まって行ってください」と縋るキューリスをどうにか振り切り、逃げるように帰るのだった。
「いえ、そんなことはありません。とても美味しいです。お気遣いありがとうございます」
努めて口元を歪ませて、微笑んでいるように見せる。
すると目の前の女は満足そうに微笑んだあと、俺の腕に胸を押し付けながらしがみついた。
「ジュリアスさまったらお優しいんですのね。ふふ、この優しいジュリアスさまが私のものだってマリーリに教えてあげたいわ。あぁ、そのためにも早くジュリアス様と結婚したいですわ……」
虫唾が走るというのはきっとこういうことを言うのだろう。
潤んだ熱い眼差しで見つめられて、笑顔が引き攣りそうにながらジュリアスは「落ち着け、深呼吸しろ、ジュリアス」と心の中で自分に何度も言い聞かせた。
できれば今すぐこの身体を払いのけてしまいたい衝動に駆られるのをグッと堪えながら、頭の中でマリーリとくっついているところを妄想して正気を保つ。
(これがマリーリだったら……これがマリーリだったら……どれほどいいか……っ!!)
もし実際のマリーリに抱きつかれたのなら、さらに密着するように引き寄せ、恥ずかしがる彼女の顎をすくい、あわよくば唇を奪いながらさらに深く抱きしめてこれでもかと言うくらい求めるというのに。
(そう、あくまでマリーリだったらの話だが……!)
いくら妄想したところで現実にくっついているのは違う女。
しかも愛しいマリーリに危害を加える憎き相手であり、実際のマリーリとはこいつとのせいですれ違い生活を送らされ、そろそろ堪忍袋の緒が切れそうなくらいギリギリの精神状態だった。
(マリーリを抱きしめたい。匂いを嗅ぎたい。口付けしたい。そしたら、押し倒して齧り付いて……あぁああああ、もうこんな生活おかしくなりそうだ……!!)
せっかくマリーリとの同棲生活を始めたというのに、最近では満足に触れることもできなければ会話すらない。
おまけにマリーリはギルベルトのパーティー以降の俺の行動で疑心暗鬼に陥っているようで、ほんのりと距離を置かれている。
できれば早急に誤解だ、と伝えたいがこの任務をしている手前そういうわけにもいかず、二進も三進もいかない状態で俺のモヤモヤはピークに達していた。
できれば今すぐギルベルトの首を絞めて「こんな任務もう嫌だ!!」とぶん回したくなる。
だが、この一件もいよいよ終盤。
ある程度の裏付けも取れ、あとは魔女の秘薬さえ見つかればどうにかなるというところまで来たのだから最後の踏ん張りである。
……と自分に言い聞かせて、今日も隙を見つけて家探しのタイミングを見計らっていた。
「ねぇ、ジュリアスさま。そろそろわたくし、貴方さまともっと深い仲になりたいですわ……」
そう言うと意味ありげに足を撫で回してくるキューリス。
あまりの気色悪さに背筋がぞぞぞっとするのを勝手に好意的に思ったのか、妖艶な笑みを浮かべると顔を近づけてくる。
ジュリアスは吐き気を催しながらも笑顔を張り付けて寄せられた身体をグッと押し返すと、キューリスはあからさまに不服そうな表情をした。
「ジュリアスさま。どうしてダメなんです? わたくしを愛してくださっているのでは?」
「……ダメですよ、キューリスさま。ご自身のお身体を蔑ろにされては。女性なのですから、節度を持たねば」
「いつも貴方はそればかり。……たまには理性を捨ててもよいのでは?」
「いいえ、ダメです。そのための結婚ですから。楽しみはあとにとっておいたほうがより楽しめますよ」
(理性捨てるってどういうことだ。理性捨てるとしたらマリーリの前だけに決まっているだろう!)
内心で突っ込みながらも、薬の効果にかかっている設定なため下手なことを言えないぶんストレスが半端なかった。
かかっているフリは思いのほか難しく、さらにこうしてキューリスが積極的なことも相まって、そろそろ演技をするのも限界だ。
「申し訳ありません、キューリスさま。お手洗いをお借りしても?」
「えぇ、もちろんですわ。……ふふ、男性には生理現象ですものね」
何やら勘違いしているのも腹立たしいが、そんな様子はおくびにも出さずに部屋を出る。
そして、既に何人か侍女や執事としてスパイに送り込んでいる人物達に目配せすると、人気のないところで報告し合った。
「見つかったか?」
「いえ、あの女の部屋も探したましたがまだです」
「部屋にもないのか……。あとはどこを探してない?」
「残りは開かずの間ですね」
「やはりそこか。……さて、どうするか」
オルガス公爵家には開かずの間という場所があった。
元々はオルガス公爵の実の娘の部屋らしいが、亡くなって以来開かずの間となっているらしい。
「鍵はキューリスが管理してるそうですから、恐らく彼女が持っているのかと」
「なるほど。さて、どうしたものか」
「あの、一つ気になることが」
「何だ」
「開かずの間から音や声がするんです」
「何だと? その話詳しく」
オルガス公爵の妻は娘が亡くなって精神に支障をきたして実家に帰されているらしく、この家にはオルガス公爵とキューリス以外はいない。
それなのに音や声がするというのは不可解であった。
「使用人は開かずの間に近づくなと言われて普段はあの辺りは行けないんですけど、先日の国王のパーティーのときにこっそり行ったら中から物音とか細い声が聞こえて来たんです。しかも、どうやら一人ではなく複数いるようで」
「それは本当か?」
「はい。声をかけようかとも悩んだのですが、下手に騒ぎになってはいけないとそのときはやめたのですが、声をかけた方がよかったでしょうか」
「いや、問題ない。ここでバレたら全てが水の泡だからな。その判断で問題ない。……だが、そうなると魔女の秘薬だけの話じゃなくなるな」
以前ギルベルトが忌々しげに呟いていたことを思い出す。
(何か関係があるのだろうか)
嫌な予感がしながらも、そろそろ戻らねばまた変な詮索をされかねないと先程の部屋に戻る。
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