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第Ⅱ章

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 そんな学校で、まともに授業が受けられるはずかない。例のごとく、僕も不良の仲間として、そしてその不良のトップとして、間違った道を歩んできた。その方が気持ち的には楽だったのだ。過去の自分の弱さも愚かさも理不尽さも苛立ちも全部、人を殴ることによって忘れることができた。結局、僕もアイツと同じだということだ。
 それに、僕の身体に残る数々の傷跡が、あの学校では尊敬の意として扱われた。怪我の跡とはつまり、その人が戦った証であり強さの証明でもあったから。重すぎるコンプレックスが無くなる場所は、誰だって逃げ込みだくなる。たとえそこが血で血を洗う惨状だとしても。
 子供時代にさんざん叩きのめされながらも生き延びた僕には、怖いものなど無かった。死ぬことすら、怖くなかった。失うものが何も無ければ、色々な意味でかなり強い立場に立てるものだ。他人の目にもそういうところが見えたのだろう。
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