黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

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18章 十八日目

18-6 いつの間にか住み着いていた生き物たち

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「なんだこりゃ」
「うお、すげえな。予想以上だ」

午後も引き続きプール掃除。
更衣室や用具室の掃除を終えた女子チームと、プールサイドのゴミ拾いをだいたい終わらせた男子チームが合流し、メインイベントであるプールの中の大掃除が始まろうとしていた。
だが……。

「誰かー、水槽持ってきてー。バケツでもいいからー」

向こうの方では動物大好き刈安が大きな声を出している。
足元ではピチピチと何かがはねていた。
近づかなくてもそれが何かはわかる。
なぜなら、俺の方にも同じ生き物が何匹も口をパクパクさせていたからだ。

「冬の間に金魚放したの誰だよ。まったく」

いつくものバケツが刈安の足元に集まり、それらの中に金魚が集められていた。

「あ、これは一緒にいれちゃダメだ」

予想外にはじまったプールの水ぜんぶ抜く大作戦状態。
足元を見つめる俺の視線の先には、二つのハサミを使って懸命に俺を威嚇するザリガニの姿があった。

「刈安ー。ザリガニもいるからそれ専用のバケツも作ってくれー」
「わかったー」

もしかすると冬の間に、プールの中には独自の生態系が構築されていたのかもしれない。
金魚やザリガニだけでなく、俺たちが見つけていないだけでトンボのヤゴとかメダカなんかもいてもおかしくないような気がしてきた。

「ああっ!」
「どうした近藤」
「亀がいた」
「マジか」

近藤にすくい上げられ、ジタバタと手足を動かしている亀。
濡れた甲羅から、ポタポタと水滴が垂れている。

「これ金魚と一緒にしていいのか? それともザリガニと一緒か?」

近藤が俺に聞いてくるが、俺の方でも判断ができない。
となれば当然……。

「刈安ー、亀がいたけどどうすればいいんだー」

刈安に丸投げ。
無責任なようでもあるが、こういうことは詳しいやつに任せるのが一番いい。

「別にしてー」
「りょーかい」

俺は空のバケツを探してきて、そこに近藤の亀を入れさせた。

「おい悦郎。こいつ出ちゃうぞ」
「え?」

見ると亀はジタバタと動きながら、バケツのフチを上がってきてしまう。
俺はビート板を持ってきて、亀を押し戻してから蓋をした。

「それ、大丈夫なのか? 苦しくならないか?」

近藤が亀の心配をする。

「うーん……そうだな。じゃあちょっとだけ隙間空けとくか」
「その方がいいだろ」

少し前までランチの華が咲いていたプールサイドに、今度はバケツの花が咲く。
無数の並べられたバケツの中には、金魚やザリガニ、そして亀が入れられている。

「なあ悦郎。こいつら、掃除終わったらどうするんだ? プールに戻すわけにはいかないだろ」
「そうだよな」

けっこう難しめの問題を考えながら、俺たちはデッキブラシを手にヌルヌルしたプールの床に降りていく。

「まあ、それは全部片付いてから考えようぜ。いざとなったら、春日部に押し付けちまえ」
「それが一番よさそうだな」
「ああ」



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