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5話
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自爆発言をしてから、数分が経過した。
その数分間はとても長く感じ、なにも入っていないティーカップに何度も口をつけてしまうぐらいには、時間を持て余していた。
……が、なんとか落ち着きを取り戻したとき。
「――落ち着いたかい?」
「……はい。恥ずかしいところをお見せしました」
「しかし、驚いた。エルスと婚約していると聞いていたから、てっきり俺は……いや、やめておこう」
「…………?」
と、なにかを言いかけたアレンに対して、私は小首を傾げるのだった。
「……さて、本題に入ろうか。
まず、大前提として。エリーについての噂だが、広まってはいるものの、信じている人は俺の知る限り多くない。
もちろん、俺もまったく信じていないが、なぜエリーの周りでだけ信じてしまう人が続出しているのか。
これがわからない。
魔法をかけ続ければ、そのように見せかけることはできるが、所詮は魔法だ。いつかは解ける。
だが、ここにいる使用人を見て思ったが、どうにも魔法が使われているようには見えないのだ」
「確かに操られているようには見えませんね」
ここが私の中でも引っかかっていた。
だから、疑惑止まりで確信には至らなかったのだ。
「なにか、心当たりはないか?」
「心当たり……ですか。……そうですね。これはあまり関係ないかもしれないのですが、ここ1ヶ月で、メイドたちが全員辞めたことでしょうか?
元々、イザベラが嫌がらせをしていたこともあって、辞めてしまうメイドが後をたたなかったので、そこまで気にしていなかったんですけど」
「……なるほど。もし、これが偶然じゃないなら、イザベラがそうなるように仕向けたと考えた方がいいだろう」
「もしかして、イザベラが使える『精神支配系』の魔法は、女性には効果がないのかも?」
「俺もそう思う。実際、噂を広めているのは男ばかりだ。
しかし、誰にも悟られることなく、人を操れるとはとても思えない。
確かに条件付きの魔法は効果が高いが、単純に魔法をかけただけだと、どうしても行動に違和感が出てくる。
そうなってくると、最低でも後1つ、特殊な条件が必要な高度な魔法が使われていると思う」
……魔法ってなんだかとても難しい。
私に話しているにも関わらず、話についていけている気がまったくしない。
だけど、なんとなく……。
「あの、魔法って対象の体に触れながら使用すると、効果が高まったりしますか?」
「……そうだな。遠くから魔法を施すのと、近くで魔法を施すのとでは、効力が違うと聞いたことがある」
「だとしたら、その……言いにくいのですが、その特殊条件は性行為だと思います」
「どういうことだ?」
アレンが疑問を投げかけてくる。
それに対して、私は思いついたことを話す。
「……えと、私の知る限り、イザベラの経験人数は3桁を超えているんです。
しかも、イザベラがいろいろな男性と肉体関係を持ち始めたのは、2ヶ月ほど前から。
もし、イザベラの魔法が『精神支配系』だとしたら、性行為をしたのは私であると見せかけることも可能だと思います。
だからこそ、噂が広まっているのかもしれません。
その人たちにとっては、噂ではなく事実だと錯覚してしまっているから」
「確かに、それだと時期的にも辻褄が合ってくるな」
と、アレンも納得した様子を見せた。
そうなってくると、ゲーム内で攻略対象全員と肉体関係があったのも頷ける。
急にイザベラと距離が近くなるのも、その魔法のせいだったのかもしれない。
「……これなら、そう時間がかからずにエリーの噂を払拭できるな」
そうアレンが呟いたとき、玄関のドアが開けられる音がした。
「イザベラが帰ってきたのかも」
「あぁ。それに、この感じ……この部屋に近づいてきてるな。足音は3つか?」
「3つ?」
そう首を傾げたところで、客間のドアが開けられる。
「ど、どうして、あなたがここに……」
私は思いがけない訪問者に、驚愕を隠せなかった。
なぜなら、この部屋に訪れたのがイザベラと屋敷の使用人、そして……エルスの3人だったから。
その数分間はとても長く感じ、なにも入っていないティーカップに何度も口をつけてしまうぐらいには、時間を持て余していた。
……が、なんとか落ち着きを取り戻したとき。
「――落ち着いたかい?」
「……はい。恥ずかしいところをお見せしました」
「しかし、驚いた。エルスと婚約していると聞いていたから、てっきり俺は……いや、やめておこう」
「…………?」
と、なにかを言いかけたアレンに対して、私は小首を傾げるのだった。
「……さて、本題に入ろうか。
まず、大前提として。エリーについての噂だが、広まってはいるものの、信じている人は俺の知る限り多くない。
もちろん、俺もまったく信じていないが、なぜエリーの周りでだけ信じてしまう人が続出しているのか。
これがわからない。
魔法をかけ続ければ、そのように見せかけることはできるが、所詮は魔法だ。いつかは解ける。
だが、ここにいる使用人を見て思ったが、どうにも魔法が使われているようには見えないのだ」
「確かに操られているようには見えませんね」
ここが私の中でも引っかかっていた。
だから、疑惑止まりで確信には至らなかったのだ。
「なにか、心当たりはないか?」
「心当たり……ですか。……そうですね。これはあまり関係ないかもしれないのですが、ここ1ヶ月で、メイドたちが全員辞めたことでしょうか?
元々、イザベラが嫌がらせをしていたこともあって、辞めてしまうメイドが後をたたなかったので、そこまで気にしていなかったんですけど」
「……なるほど。もし、これが偶然じゃないなら、イザベラがそうなるように仕向けたと考えた方がいいだろう」
「もしかして、イザベラが使える『精神支配系』の魔法は、女性には効果がないのかも?」
「俺もそう思う。実際、噂を広めているのは男ばかりだ。
しかし、誰にも悟られることなく、人を操れるとはとても思えない。
確かに条件付きの魔法は効果が高いが、単純に魔法をかけただけだと、どうしても行動に違和感が出てくる。
そうなってくると、最低でも後1つ、特殊な条件が必要な高度な魔法が使われていると思う」
……魔法ってなんだかとても難しい。
私に話しているにも関わらず、話についていけている気がまったくしない。
だけど、なんとなく……。
「あの、魔法って対象の体に触れながら使用すると、効果が高まったりしますか?」
「……そうだな。遠くから魔法を施すのと、近くで魔法を施すのとでは、効力が違うと聞いたことがある」
「だとしたら、その……言いにくいのですが、その特殊条件は性行為だと思います」
「どういうことだ?」
アレンが疑問を投げかけてくる。
それに対して、私は思いついたことを話す。
「……えと、私の知る限り、イザベラの経験人数は3桁を超えているんです。
しかも、イザベラがいろいろな男性と肉体関係を持ち始めたのは、2ヶ月ほど前から。
もし、イザベラの魔法が『精神支配系』だとしたら、性行為をしたのは私であると見せかけることも可能だと思います。
だからこそ、噂が広まっているのかもしれません。
その人たちにとっては、噂ではなく事実だと錯覚してしまっているから」
「確かに、それだと時期的にも辻褄が合ってくるな」
と、アレンも納得した様子を見せた。
そうなってくると、ゲーム内で攻略対象全員と肉体関係があったのも頷ける。
急にイザベラと距離が近くなるのも、その魔法のせいだったのかもしれない。
「……これなら、そう時間がかからずにエリーの噂を払拭できるな」
そうアレンが呟いたとき、玄関のドアが開けられる音がした。
「イザベラが帰ってきたのかも」
「あぁ。それに、この感じ……この部屋に近づいてきてるな。足音は3つか?」
「3つ?」
そう首を傾げたところで、客間のドアが開けられる。
「ど、どうして、あなたがここに……」
私は思いがけない訪問者に、驚愕を隠せなかった。
なぜなら、この部屋に訪れたのがイザベラと屋敷の使用人、そして……エルスの3人だったから。
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