【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea

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31. ナデナデと甘い……夜

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  シルヴィとお母様の事を考えていた為に、私の表情がどこか曇っていたせいなのか、旦那様の手が再び動く。

   ───ナデナデ

  慣れ親しんだ旦那様とのナデナデ。
  私はここまで旦那様と過ごして、ふと思った事があったので訊ねてみた。

「そう言えば旦那様、屋敷に戻って私と二人っきりになると、また無口になってしまったのですね」
「……」

  ───ナデナデ……ナデ

  旦那様は申し訳なさそうな顔でナデナデの手は止めずに言う。

「努力……はする。でも……やっぱり、うまく話せ…………ない」
「旦那様……」

  顔は真っ赤で手の動きはナデナデ!  そして、口ごもる旦那様!
  先程までは熱いキスまで交わしていたというのに!  
  旦那様という人が大胆なのか照れ屋なのか私にはさっぱり分からない。(でも好き!)

「ミ、ミ、ミルフィ!  俺の態度、げ、幻滅する、か?  ……あと、俺の声……」

  ……ナデナデ……ナデ

「!」

  旦那様の不安そうな発言と共にナデナデする手も不安そうになっていく。

  (あぁ、今までの私が感じ取っていたナデナデの感情は間違っていなさそう!)

  何だか答え合わせをしているみたいな気持ちになった。
  旦那様はこれまで口を聞かなかった事や、自分の声に関して私がどう思っているのか不安みたい。

「無理に話さなくても大丈夫ですよ?  ナデナデで旦那様の気持ちは分かりますから」
「……」
「だから、ナデナデされないと少し寂しくなるんです」
「……!」
 
  すっかり、ナデナデ結婚生活の虜となっている私には、もうナデナデが無いと、どこか物足りない身体になってしまった。

  (ナデナデ……なんて恐ろしいの)

「で、ですが!  たまにはその素敵な声も……聞きたいです……」
「!」

  ───ナデナデ!!

  (ナデナデが加速したわ!  これは驚いているのね!)

「だ、旦那様のその声……ず、ずっと聞いていたいくらい素敵で、あ、いえ、ずっと聞いているとうっとりしすぎて頭の中がおかしくなってしまいそうに……なるのですけど」
「…………」

  ───ナデナデナデナデ!

「…………」
「大好きなんです……!  ナデナデされるのも旦那様の声も……」
「!!」

  私は自分の発言に恥ずかしくなって両手で顔を覆いながらそう話す。
  すると、旦那様は無言のままそっとその手を剥がしにかかってくる。
  手を剥がされるとそこから見えるのは旦那様の麗しいお顔!  
  近ーーい!

  (~~っっ!  ダ、ダメだわ!  私のドキドキはもう止まらない!)

  旦那様の顔を見るだけでも、ドキドキ。
  ナデナデされても、ドキドキ。
  声を聞いても、ドキドキ。

  ───ほら、ドキドキしかないわ!?

「…………ミルフィ。俺の、か、かわ、可愛い、可愛い奥さ……ん」
「だんな……さま」

  完全にもう私の頭の中の思考がドロンドロンに溶けている。
  そんな私の様子が分かっているのかいないのか、甘く優しく微笑んだ旦那様の美しい顔がどんどん近付いて来てそっと私達の唇が重なる。

  ───キスはドキドキだけでないわね、心臓がバクバクだわ……

  チュッチュと旦那様のキス攻撃は止まらない。

  旦那様はギューッと私を抱きしめながらたくさんたくさんキスをくれるので、私もギュッとその身体を抱きしめ返しながら懸命にキスに応えた。

  (あぁ……ここに帰ってこられて本当に良かったわ)

  こうして旦那様と過ごせる幸せな時間を失わずに済んでよかったと私は改めて心からそう思った。





  そして、その日の夜───

  いつものようにおやすみなさいのナデナデの為に、旦那様が私の部屋を訪ねて来た。
  入口で出迎えながら私は笑いながら言う。

「旦那様が一日に何度も訪ねて来るのは珍しいので何とも不思議な感じですね」
「……」
  
  ……ギュッ

  私がそう言うと旦那様が優しく微笑んで私を抱きしめる。

「あたたかいです。私、旦那様の温もり……大好きです」
「……俺も、だ」
「!」
「ミルフィ……はあたたかくて、柔ら、かい」

  まさかのナデナデでは無い口での回答!
  旦那様、頑張ってくれている!

「ふふ、このまま、ずーっと旦那様とこうしていたい……」
「……」
「!?」

  旦那様はその言葉と共に突然、私を横抱きにして抱える。

「だ、だ、旦那様!?」
「……」

  そのままスタスタと部屋の中央に向かった旦那様はそっと私をベッドに降ろした。

  (……あ!)

  そうこうするうちに、私の身体はいつの間にか旦那様に押し倒されていた。

「……」
「……」

  無言のまま互いに暫く見つめ合う。
  すると旦那様の手が私の頬に触れそっとスリスリしてきた。そんな私を見つめるその目には熱を感じる。

  (あぁ、旦那様の目が……私を欲しいって言っている……)

「……旦那様……」

  私もそっと手を伸ばして旦那様の頬に触れる。

「………………ミ、ミルフィ……」

  顔を真っ赤にした旦那様の低くて甘いその声に痺れながら私も微笑む。
  すると旦那様の手がそっと私が今日もきちきちに着込んだガウンに触れ……

  (はっ!  ……そう言えば、今日はこの間よりも一段とスケスケの夜着だったわ)

  何でこんなに今日は生地が薄いのかしら?  と、思ったものだけど、もしかしてルンナはこうなる事を予測していた?
  何やら気合満タンであれでもないこれでもないと夜着を物色していた事を思い出す。

  (うー……こ、これはとても照れるわ……)

  そして、ゆっくりゆっくり旦那様の手で私のガウンが脱がされていく……

  (は、恥ずかしい!  私の顔も真っ赤だわ。そう、目の前の旦那様も真っ赤…………って、あれ?  違う赤……!?)

「きゃっ!?  だ、旦那様……!  大丈夫ですか!?」
「…………!!?」

  ……ポタッ

  だけど、私のガウンを脱がして悩殺スケスケ夜着姿の私を見た旦那様が、そのすぐ後に鼻血をふいてしまった──……


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