【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります

Rohdea

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モッフモフの二年間 ②


  
  私がモフモフを撫でていたら、ダグラス様がハッとしてした様子で言う。

「……って、ティティ!  俺のリディエンヌとイチャつくな……俺だってリディエンヌとイチャイチャしたいんだぞ……!」
「にゃ?」
「え?  ダグラス様?」
「…………コホッ……話を続ける」

  頬を赤く染めて軽く咳払いするダグラス様の姿も可愛くて胸がキュンとした。
  それに、俺のリディエンヌですって!  嬉しい!

  (そうね、私もダグラス様と……もっと……)  

  今はまだそんな時ではないと言うのに、そんな気持ちを抱いてしまい頬が緩みそうになった。

  (もう!  私ったら!)

  深呼吸をしてどうにか気持ちを落ち着かせてからダグラス様の話の続きに耳を傾けた。
  
「ティティは話を聞きながら思った。このままリディエンヌをこんな奴らのいる国に置いておくのはダメにゃ!  と」
「ティティさん、あなた……ようやく守護者っぽい考えを……」
「にゃ!」

  私が感動していると、ティティからは元気なお返事が返って来た。

「どうやらその辺で、ようやくティティの中でも何かが芽生えたようだな。ちなみに、その頃のティティの食い倒れの旅はラッシェル国にまで及んでいた」
「にゃーー!  んにゃ!」
「……ラッシェル国の方がご飯が美味しいにゃ!  あちこち行きまくったにゃ!  ハマったにゃ!  ってお前!  リディエンヌの心配はどこにいった!?」

  油断すると食いしん坊のティティはすぐにご飯の話になってしまう。
  二年間のうちの殆どはご飯の事だけを考えていたんじゃないかしら?

「にゃん!」
「だって会えにゃいんだから仕方ないにゃ……その通りではあるけどなぁ……」
「にゃー」
「だが、なんの偶然か、神から伝え聞く話でリディエンヌがグォンドラ王国から追い出されるのは時間の問題だとティティは知った」
「……マリアーナが聖女だと偽ってしまったからね?」

  神様は嘘をついたマリアーナを見て、また嘘つきが現れた、とがっかりしたのかしら?
  ただ、歴代の聖女達と違ってマリアーナは“聖女”では無かったから、証の印まで偽造するなんて!  と、驚いたかもしれない。

「国を追い出されそうなリディエンヌの為に、ティティはリディエンヌがラッシェル国で過ごせる場所を探す必要があった」
「え?  もしかしてそれで、ダグラス様に目をつけた……の?」

  私はティティの顔を見る。

「にゃーー!」
「氷の貴公子なんて呼ばれてるくせに我が会いに行ったらチョロかったにゃ!  こいつならリディエンヌの面倒係にピッタリにゃ!  って思った……だと?  おい、ティティ!  もう少し言葉を選べ!」
「にゃーーーん!」

  ダグラス様が真っ赤になって怒っているけど、ティティはのらりくらりと躱してしまう。

「───ティティが言うには、いざという時にはリディエンヌを守って貰わないといけないから、金もあり、権力もある家が適任だったそうだ。それで俺だったらしい」
「なるほど……」

  ティティは色々考えた結果、この街の領主よりも未来の公爵……確実に権力を持ちのダグラス様に決めた、という事ね……

「そして、遂にティティはリディエンヌと出会った」
「……一度目にご飯を強奪されたあの日ですね」 
「にゃ!」
「でもあの日は、本当は私を守ってくれたのよね?  ティティさん」
「……にゃー」

  私が確認すると、ティティは少し照れ臭そうに返事をした。

「───ティティはその日、リディエンヌに一目惚れしたそうだ」
「にゃん!」
「え?  一目惚れ?」

  ダグラス様が不貞腐れた表情を浮かべながらそんな事を言った。
  どうやら“一目惚れ”がお気に召さないみたい。
  
  (ダグラス様って意外とヤキモチ妬きな所がある気がするわ)
 
「可愛い可愛いリディエンヌは守護者に選ばれた自分が守るにゃ!  そう決めたそうだ」
「ティティさん……それで、あんな強引な手を……」

  (……でも、今更ながら思うけど、他に方法って無かったのかしらねーー……)

  腹ペコだったあの日を思い出すと少し悲しくなる。

「その日は、まだ俺の元へリディエンヌを案内するには準備が不十分だったが、危険から引き離す事は成功した。そして、ようやく準備が整ったティティは二度目の強奪でリディエンヌを俺の元へ案内する事を画策する」
「にゃ!  にゃーー!」 
「は?  決して、あのパンが美味しそうだったから奪ったんじゃないにゃ?  リディエンヌの為にゃ!  だと?  そうなんだろうけど、いまいち信用出来ないのは何でだろうなぁ……」

  呆れた様子のダグラス様に私も同意してしまう。

  (本当にティティらしいわね。そんな所も可愛いけれど)

  思わず笑いが込み上げた。

「そうして、無事にリディエンヌを俺の元に連れていった……と。これがティティの空白の二年…………ん?  何だティティ。まだ訴えがあるのか?」
「にゃ!  んにゃ、にゃーー」

  ティティの二年間はこれで語り終えたはずなのに、ティティはまだダグラス様に何かを訴えているらしい。
  前足でダグラス様を突っついている。

「……氷の貴公子は女嫌いだと聞いていたから、大事なリディエンヌを預けるのに最適にゃと思っていたのに裏切られたにゃ……だと!?」
「にゃ!」
「氷の貴公子だったらリディエンヌに手は出さにゃいと安心していたにゃ……?  決め手はそこにゃ!  って、お前は本当に俺を何だと……」

  ダグラス様がじろっとティティを睨む。

「にゃー……」
「この街の領主の息子は、惚れっぽいから絶対にリディエンヌを連れて行くわけには行かなかったにゃって…………くっ!  確かに……あそこの息子は……そこはティティに感謝すべきなのか……」

  ダグラス様が苦悩の表情を見せた。
   
  (え、惚れっぽいの?  ティティ詳しいわね……)

  食い倒れの旅をして好き勝手しているのに、ティティの情報能力が高くて純粋に驚いた。
  もしかしたら、美味しい食べ物の情報を手に入れる為に常に気を張っているのかも。

「にゃーー」
「……リディエンヌは可愛いから惚れるのは分かるにゃ、だから、リディエンヌを泣かせたら氷ごと八つ裂きにゃ……?  ティティ……目が、目が据わってる!!   あと、氷ごとって何だ!?」
「うにゃーー……」

  ティティが凄く低い声で唸っている。本気でダグラス様を脅しにかかっている!

「泣かせない!  リディエンヌは必ず俺が幸せにする!」
「にゃ」
「あぁ、約束だ」
「…………にゃー?」

  ダグラス様と固い約束を結んだティティが今度は私を見ながら何かを訊ねてくる。

「……えっと、ダグラス様?  ティティさんは何て言ってますか?」
「リディエンヌは今、幸せにゃ?  と聞いている」

  (ティティったら!)

  私は笑顔で答えた。

「幸せ!  ダグラス様とティティに会えて凄く幸せよ。家族だったはずの人達に捨てられたのは、確かにショックだったけど……今ではこれで良かったと思っているわ!」
「リディエンヌ……」
「にゃー……」

  ダグラス様がティティごと、そっと私を抱きしめる。

「──リディエンヌを虐げて捨てた元家族あいつらは、きっと今頃、最後の報復を受けている頃だろう」
「……ええ」
「今更、後悔しても遅いんだ」

  マリアーナも国に戻った。だからきっと、今頃────……



◆◆◆◆◆



「……王宮が……私の部屋が……宝石、ドレス……皆、焼けてしまったの……?」
「マリアーナ殿下……あなたと言う人はまだそんな事を!」

  呆然と呟いた私の声に対してリード様が咎めるような口調で私を責めたけど……私は目の前の惨状にとにかく大きなショックを受けていた。

  グォンドラ王国に到着し、尋常ではない寒さに耐えながらも王宮に向かった。そこで、私が見たものは見事なまでに焼け崩れたかつての王宮住処だった。

「だって!  全部全部私の為に揃えてもらったものなのよ!?  それにこれから何処で寝起きすればいいの!?」
 
  (わざわざお姉様から奪ったものだってあの部屋にはたくさん───……)

「……僕は本当にあなたを軽蔑します」
「リード様……な、なんで?」

  私の事を冷たく突き放そうとするリード様に追いすがろうとしたその時だった。
  王宮の庭園だった所がガヤガヤと騒がしい。

「───いいから、さっさと聖女を出せ!」
「こんなに国が荒れるまで放っておきやがって……偽物だったんじゃないのか!?」
「有り得るな!  だから神がお怒りになったとか?」
「ははは、それなら、遠慮はいらないな……」

  (────聖女って、わ、私の事、よね?  この声は民衆?  ま、まさか……)  

  私は足が竦んでその場から動けなかった──……
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