【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea

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第4話

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「うきゃっ!」
「あ、危ない!!」

  今度は自分の足に躓いて転びそうになってしまった。
  そんな私を美男子が私の腕を支えて助けてくれた。

《危なっ……随分、おっちょこちょいな子なんだな……》

  彼の心の声におっちょこちょいと言われてしまった。否定出来ない。

  (あぁぁぁ……何やってるの私は!)

「大丈夫?」
「は、はい……重ね重ね、すみません」

  私は謝りながら美男子から離れる。
  彼に合わせる顔が無くて思わず俯いてしまう。突然、逃げ出しておいてこの体たらく……何とも情けなさすぎる。変な声もあげてしまったし……

「えっと、君は母上のお茶会に招かれたご令嬢でしょ?」
「──は、はい……って母上!?」

  美男子の言葉に私は驚いて目を見開く。

  (母上!?  主催の王妃様を母上と呼ぶこの方は、まさか!)

「あ、あなた様はもしかして、エ、エリオス殿下……ですか……?」

  私が震える声で尋ねると、美男子ことエリオス殿下は笑顔で頷いた。

「そうだよ?  あー、もしかして僕の顔を知らなかった?」
「も、申し訳ございません……存じ上げませんでした……!」

  私は平謝りする。
  なんて事……まさかの王子様……
  エリオス殿下の事は噂でしか知らない……絵姿すら見た事が無かった。

  どうしたらいいの?  私、かなり失礼な事しかしていない!
  私はパニックに陥った。

「あー、そうかなって思ってはいたけどね。やっぱりか。で?  君はどこのご令嬢なのかな?」

  今度は答えてくれるよね?  という圧がすごい。
  出来れば名乗りたく無かったけれど。
  ここまで来て王子様相手に名乗らないわけにはいかない。

「……バルトーク伯爵家の次女、セシリナと申します」
「バルトーク伯爵家……」

  エリオス殿下がうーんと妙な顔をしている。
 ……きっと殿下も私の噂を耳にした事があるのね、きっと。

「って事は、兄上を執拗に追い回していたのは君のお姉さん?」
「はい?」

  エリオス殿下の言葉に驚いて私は思わず目を瞬かせる。
  いったい何の話?
  薄気味悪い令嬢の私の事ではなく、お姉様の話?

「いつも兄上にかなりしつこくアプローチしてた令嬢。確かバルトーク伯爵家のご令嬢だったと思ったけど、それ君じゃないでしょ?」
「あぁぁ……も、申し訳ございません……そうです、それは姉です」

  お姉様は、一体どれだけしつこく王太子様にアプローチを繰り返していたの。
  少なくとも、エリオス殿下の印象に残る程だったって事なのは分かったわ。
  さすが、出禁寸前……

  私は目の前が真っ暗になったような気分だった。
  もう我が家は取り潰しになるのでは……

「あ、姉がご迷惑をおかけし本当に申し訳ございません……」
「あははっ!  セシリナ嬢が謝る事じゃないと思うよ?」

  エリオス殿下は気にしてないといった様子で笑う。

「いえ、王家の方々にご迷惑をおかけしたわけですから」
「まぁ、兄上も婚約したからもう大丈夫でしょ。あ、でもバルトーク伯爵家としては大丈夫じゃないのかな?」
「いえ……姉の機嫌が悪いだけで私としては別に」
「あー、君のお姉さん、なかなか気の強……コホンッ……元気そうな令嬢だもんね」

  エリオス殿下はお姉様と面識があるのかどこか遠い目をしながら言った。
  しかも、無理やり言い換えてたんですけど。
  

「ま、いっか。それで?  君は……セシリナ嬢は何で庭園に来たの?」
「……あ」

  そうだった。お茶会を抜け出して来ていたんだった!

「あー、これはお茶会が面倒で嫌になったって感じかな?」
「うっ」
「参加者なら聞いてるかな?  今日のお茶会が僕の婚約者探しが目的だったって」
「あ……えっと」

  どうやらあの令嬢達が言っていた事は本当だったみたいだ。

「僕はまだ、そんな気はなくてね。でも、周りがうるさい。ほとほと困っているんだよ」
「そ、そうなんですか?」

  エリオス殿下は私の言葉ニコッと笑顔を浮かべた。

「だって、婚約者が決まったらもう好き勝手に遊べなくなってしまうでしょ?  なのにこれで何回目かな?  だから今日も逃げてここでサボってたんだよね。でも後で母上には怒られるだろうなぁ……」
「…………」

  えーと……?  爽やかな笑顔で凄い事を言ってるんですけど……
  好き勝手に遊ぶって何?  しかもサボってた!!

  私は思わずジトッとした目でエリオス殿下を見てしまう。
  どうせ、この前髪で見えないはず!

「あははっ!  凄い目で見てくるね?  その前髪に隠れてても分かるよ」
「!!」

  まさかのバレバレ。

「っ!  も、申し訳ございません……」
「いや?  構わないよ。素直で可愛らしくて良いと思うよ」
「!?」

  サラッと何て事を口にするの……
  何て言うのかしら。掴みどころのない方だわ。

  ……だけど、これは本心なのかしら?
  さっきの心の声……とても紳士的だったもの。
  ちょっと聞いてみたい……って、ダメダメ。何考えてるの。
  でも何を考えているのか分からなすぎて、初めて心の中を覗いてみたいと思ってしまった。

  (こんな人は初めて……)

「……」
「……」

  私の無言の視線に耐えられなくなったのか、エリオス殿下は少しバツの悪そうな顔をしながら口を開いた。

「あー……ほら。そろそろ戻らないとまずいんじゃないの?  抜け出して来てるんでしょ?」
「あ!」

  話し込んでしまっていたから、それなりに時間が経っていると思われる。
  確かに早く戻らないときっとお姉様に嫌味を言われてしまうわ。

「も、戻ります!  えっと、そのエリオス殿下、色々と失礼致しました!」
「うん?」
「ご尊顔を知らなかったばかりか、振る舞いから何から何まで……」
「あはは!  もういいからいいから。早く戻りなよ。怒られちゃうよ?」
「は、はい。ありがとうございます。失礼致します!」

  私は今度こそ、逃げるようにその場から走り出した。

  (エリオス殿下……よく分からない人だったわ。でも、私の無礼な振る舞いにも一切怒らないどころか笑っていた)

  話したのは少しの時間だったけれど、あの紳士的な心の声を信じるならエリオス殿下は噂とは違う人にも思える。

  (それに、何より私の瞳を……綺麗だと言ってくれた……)

  そんな事を考えながら私は慌てて会場へと戻った。




「……セシリナ・バルトーク伯爵令嬢、か」


  私の走り去る後ろ姿をエリオス殿下が意味深な目で見ていた事には気付かずに。




****




  その後、ちょうど私が会場に戻ったすぐ後に、お茶会はお開きとなった。
  帰りの馬車に向かう途中でお姉様が私の方を見ながら聞いてくる。

「セシリナ。途中から姿が見えなかったけど、あなた何処に居たのよ?」
「え?」
「どうせ、寂しくてその辺をぶらぶらしてたのでしょう?  まさかとは思うけど私に迷惑かけるような事はしていないわよね!?」
「は……はい」

  エリオス殿下と遭遇するというとんでもない事態に陥ったけれど、お姉様に迷惑はかけていない、はず。

「それにしても、よ!  この催しはエリオス殿下の婚約者候補探しと聞いていたのに、当の本人が全く顔を出さなかったってどういう事かしら!?  アピールすら出来なかったじゃないの!!」
「……っっ!」

  エリオス殿下の名前が出たので思わず吹き出しそうになってしまった。
 
「お、お姉様は、エリオス殿下の婚約者になりたい、のですか?」
「当然よ!!  ギルディス殿下には及ばないけどエリオス殿下もかなりの美男子ですもの。この私に相応しいでしょう?」
「…………」

  本当に本当にその自信はどこから来るのだろう。

「ちょっと色々おかしな噂があるけれど、私はそんな事は気にしないわ」
「お姉様……」
「それにエリオス殿下が私を選んだらギルディス殿下も後悔なさるかもしれないし?」

  お姉様は、よほど王太子殿下……ギルディス殿下が、自分ではない令嬢を選んだ事が気に食わないらしい。

「エリオス殿下に気に入られる為にも、あなたには大人しくしていて欲しいのよね!  今度という今度は私の邪魔をしたら許さないわよ!?」
「……はい」

  物凄く怖い顔で詰め寄られた。

  それは私の噂の事を言っているのだろう。
  ──薄気味悪い妹がいる。
  お姉様は、ギルディス殿下を追いかけている頃、私の事で周りにアレコレ言われていたのだろうなと思った。


  何であれ、お姉様の次のターゲットはどうやらエリオス殿下らしい。


  今日、私が偶然そのエリオス殿下と庭園で出会って口を聞いたなんてお姉様が知ったら……間違いなく怒り狂う気がする。

「……」

  これ以上の火種は勘弁願いたい。
  なので、今日の出来事は私の胸にしまっておく事にした。


  ──なのに!  あの王子様は……!!


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