最恐家族は本日も無双中 ~ギルモア家と愉快な人々~

Rohdea

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ギルモア家と愉快な人々の日常

ガーネットについて聞いてみた【セアラ】

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「───ジョエル様! 私たちも調査をしませんか?」 
「?」
「あうあ」
「…………ぅぁ」

 その日の朝……いえ、お昼。 
 覚醒後のまだ寝ぼけ眼の夫、ジョエル様に向かって私がそう言うと、キョトンとした顔を返された。
 床で元気にゴロンゴロンと転がりながら遊んでいた息子のジョシュアと娘のアイラも動きを止めると、そっくりな顔でじっと私を見てきた。

「……」
「ほらほら、ジョエル様。起きてください!」
「……う」

 ジョエル様は微かに反応はしてくれたものの目を擦るとそのまま首がカクンとなって下を向いてしまう。

「これはダメね。ジョエル様はまだ半覚醒だったみたい」
「あうあ」
「…………ぅぁ」 

 ジョシュアとアイラの目も“お父様のお目覚めはまだですよ”と言っている。

「仕方がないわね。覚醒するのをもう少し待ちましょう」
「あうあ!」

 ここでニパッと笑ったジョシュアが起き上がると、アイラのそばから離れてトコトコ私の元にやって来る。
 そして、そのまま私の身体によじ登り始めた。

「ジョシュア?」
「あうあ~」
「!」

 ジョシュアのニパッとした笑顔を間近で見た私は思わずハッと息を呑む。

(か、可愛い……!)

 まるでジョエル様のミニサイズと言っても過言ではないくらい顔の似ているジョシュア。
 普段から眉間に皺を寄せている寡黙なジョエル様はかっこいい。
 でも、たま~に見せてくれる笑顔にも私の胸はいつだってキュンキュンする。
 そんな大好きな夫に似たベビーの笑顔の破壊力…………すごい!

「確か、赤ちゃんの頃からジョエル様の表情筋は死滅していてお義母様はそれがギルモア家の血だと言っていたけど……」
「あうあ~」
  
 私はニパッと笑ったジョシュアの頭を撫でながら呟く。

「それなら、あなたはどうしちゃったの?   ジョシュア」
「あうあ!」

 ニパッ!
 可愛い息子がなんて答えたのかは分からないけどこれまた可愛い満面の笑顔を向けてくる。

「でも、お義父様やジョエル様のちょっと変わってる所と、お義母様のいつでも明るくて元気なところ……ジョシュアってギルモア家の集大成みたいな子よね」
「あうあ!」

 ニパッ!
 私の問いかけにジョシュアが胸を張って頷いている。
  
(ふふ、当然です、僕はギルモア家の男ですから! なんて言ってそう)

「あ、でも……そのニコニコ笑顔もいいけれど、女性を泣かせるような男にだけはなっちゃダメよ?」
「あうあ!」
「いい? ……将来、結婚式をすっぽすなんてことをしたら問答無用で勘当するわよ?」
「あうあ!!」
「……」

 おそらくなんのことか分からず頷いているとは思うのだけど……
 でも、ジョシュアが分かってますと言わんばかりに力強く頷くものだから可笑しくなって私も思わずクスッと笑みがこぼれる。

(結婚式の日に捨てられたのがもう遠い昔のことみたい)

 あの日に受けた絶望は、今のこのとても幸せで賑やかな日々のおかげでもはや遠い記憶となっている。

「ねぇ、ジョシュア」
「あうあ」

 私が名前を呼ぶと再びニパッと笑いながら愛しい息子が顔を上げる。

「アイラ」
「…………ぅぁ」

 ジョエル様に似て無表情だけど、とても可愛い娘も私に名前を呼ばれると、不思議そうに振り返った。
 私は愛しい子ども二人に向かって笑いかける。

「───いつもありがとう」
「あうあ!」
「ぅぁ!」 
「え!」

(珍しい! アイラもほんのり笑ってくれたわ)

「───セアラ」

 珍しいアイラの笑顔に驚いて幸せを感じていると突然背後からギュッと抱きしめられた。

「ジョ、ジョエル様!?」
「……」 

 いつの間にか目を覚ましていたらしいジョエル様の温もりに胸がドキドキする。

「ど、どうしました!?」
「目が覚めたら────セアラが笑っている」
「え? ──ああ、ふふふ、そうですね。私、今がとても幸せだなって思いまして」
「幸せ?」

 不思議そうに聞き返してくる夫に私は優しく微笑む。

「ジョエル様に助けられてお義父様やお義母様、そして、こうして可愛い子供たちにも出会えましたから」
「あうあ!」
「ぅぁ」
「……」

 ジョエル様は無言のまま、元気いっぱいに返事をした子どもたちの顔もじっと見つめる。

「あうあ~~」
「……ジョシュア?」
「あうあ、あうあ」
「……!」

(あ!)

 ジョシュアに何か言われたらしいジョエル様の頬が緩んだ。
 二人のしている会話の内容は分からないけれど、見ているだけで楽しそうで私の気持ちもほっこりする。

「さあさあさあ、無事にジョエル様も覚醒したので調査を始めましょう!」
「あうあ~」
「ぅぁ~」

 私がお義母様のように手をパンパンパンと叩きながら指示を出すと子どもたちがワーイと手を上げた。

「……調査?」
「そうです!」

 フフンと笑った私はジョエル様には改めてもう一度説明する。
 先日お義母様がしていたジョシュアの調査のように私も偉大なお義母様……
 “ガーネット・ギルモア侯爵夫人“についての調査をしたい!
 そんな私の説明を聞き終えたジョエル様は小さく頷いた。

「母上の…………調査」 
「ジョエル様も気になりませんか? 皆に慕われているお義母様について!」
「…………怖い」
「はい?」

 ジョエル様が眉間に皺を寄せながらポツリと呟く。

「母上、は怒らせると昔から俺の食事のピーマンを山盛りにするよう命ずる…………」
「あー……」
  
 ジョエル様はピーマンが苦手だものね……と私は苦笑する。

「山盛り…………とにかく容赦がない」
「お義母様らしいですね」
「昔、エドゥアルトと俺のおやつがピーマンの山盛りだった……ことがある」
「あー……」

 さすがお義母様。
 おやつにピーマン(しかも、山盛り)とかえげつない……
 しれっと公爵家の息子のエドゥアルト様もちゃっかり巻き込まれているし。

「ふふ、では怖いに一票だけいれて皆に聞き取りに行きましょう!」
「あうあ~」
「ぅぁ」


────


「やっぱり、お義母様は皆に慕われていますね!」
「あうあ」

 聞き取った調査結果をまとめながらそんな感想を抱いた。

「特にお義父様との結婚前からずっとギルモア家に勤めてる使用人たちからの感謝の言葉がが凄かったわ」
「あうあ」

 ───あの自由人な坊ちゃ……いえ、旦那様と結婚してくれるなんて奇跡だと思いました。
 ───奥様と出会ってから、ガーネット、ガーネット、ガーネット……名前を聞かない日はなく……この方がお嫁に来なかったらギルモア家は終わるとさえ、思っておりました。

「そしてあとは、やっぱり美人、昔から顔もスタイルも変わらない…………年齢不詳って言われていたわね」

 確かに実際、お義母様の見た目は孫が二人もいる“おばあさま”には見えないと私も思っている。

「年齢…………今、母上の歳は確か───んぐっ」
「ジョエル様! ダメ! 年齢を口にしてはいけません!」
「!?」

 私は慌ててジョエル様の口を塞ぐ。
 口を塞がれたジョエル様は困惑した様子でモゴモゴしている。

「あうあ~」

 ニパッ!
 そんなジョエル様の代わりになぜか、ジョシュアがキャッキャと笑いだした。
 なんと言っているのか私には分からないけど、これはピー歳です~、と暴露している気がするわ!
(母親の勘)
 私はジョシュアにも牽制しておく。

「……ジョシュア、あなたもよ」
「あうあ」
「いいこと? むやみやたらに女性の年齢をペラペラ口にしてはダメ!」
「あうあ」

 ニパッ!

「…………約束よ?」
「あうあ」

 ニパッ!

「……」

 いまいち信じきれないジョシュアの返事あうあを聞きながら私は軽く咳払いする。 

「それにしてもこの調査……誰よりもお義父様の回答が凄かったわね」
「あうあ」
「…………ぅぁ」

 ジョシュアとアイラが同意するように頷いた。
 この調査でお義母様について訊ねてみたところ、お義父様は約二時間ほどお義母様への愛をたっぷりノンストップで語ってくれた。
 ジョシュアは最初から最後までニコニコして聞いていたけど、アイラは飽きたのか途中で寝ていたもの。
 途中で無理やり打ち切らなければまだまだ続いていたに違いない。

「父上に母上のことを語らせると昔からあんな感じだ」

 ジョエル様が淡々とそう口にした。
 つまり、これはそう珍しいことでもないということ。

「ふふ、愛ねぇ」

 私はお義父様が強く強く主張していた“踏まれたい”と書かれた項目を見ながら苦笑した。

(しかし……)

 この調査結果、踏まれたいが二票ある……このもう一票は───
 私はチラッと息子、ジョシュアを見る。
 私と目が合ったジョシュアはニパッと笑った。

「あうあ!」

(これ、絶対この子ジョシュア……)

「────ホーホッホッホッ! セアラさん、あなた何やら面白いことをしていたようね!」

 ここでバーンと部屋の扉が開いてお義母様が現れた。

「ジョルジュに聞いたわよ~、この私の調査ですって?」
「は、はい。ちょうどまとめ終わったところなんです」
「オーホッホッホ! ジョシュアに続いて今度は私、ということね。どう? 面白い意見はあったかしら?」

 嫌な顔一つせずに受け入れてくれるお義母様は本当に懐が広い。
 そんなお義母様はまとめた調査結果を見ると更に高らかに笑った。

「ホ~~ホッホッホッ! さすが私ね。絶賛の声ばかりじゃないの!」
「あうあ~」

 それは本当にその通りで、お義母様のことを悪く言う人はいなかった。

「ホホホ! どうせ、この酒豪とか美しい足とか踏まれたいとか言ってるのはジョルジュね」
「分かります?」
「もちろん分かるわよ…………ってあら、この“踏まれたい”に入ってるもう一票は……そこのジョシュアかしら?」
「あうあ!」

 ニパッ!
 ジョシュアがお義母様に笑いかける。

「ホッホッホ! で、この“怖い”はどうせジョエルでしょう?」

 さすがお義母様。
 どんどん見抜いていく。

「……で、この“おばあさま”ってなに?」
「あー、それは、アイラですね」
「アイラ?」
「はい。何を聞いても“おばあさま”としか言ってくれなくて」

 私が説明するとお義母様が無言でじっとアイラを見つめた。

「…………ぅぁ」

 お義母様と目が合ったアイラが表情を変えずにコクリと頷く。

「アイラ……あなたってその無表情といい本当にギルモア家の子よね」
「……オ~オッオッオ」
「なんでここで真顔のまま笑うのよ。将来が心配だわ」

 アイラの笑いを聞いたお義母様がやれやれと肩を竦めたその時、ジョシュアが勢いよくお義母様に抱きついてよじ登り始める。

「あうあ、あうあ!」
「は? なに? ジョシュア」
「あうあ、あうあ、あうあ~~」
「……母上。────僕! 僕もギルモア家の男ですよ~とジョシュアは強く訴えている」

 すかさずジョエル様がジョシュアの言葉を通訳してあげると、それを聞いたお義母様はフッと笑ってジョシュアの頭を撫でた。

「ジョシュア……そうよねぇ、あなたの見た目と性格は確かにギルモア家の男! なんだけど……」
「あうあ!」

 ニパッ!
 ギルモア家の男と言われたジョシュアはそれが嬉しいのか満足そうに笑う。

「そのいつでも何処でもニッパニパの笑顔がねぇ……」
「あうあ!」

 ニパッ!  

「…………本当に誰に似たのかしら?」
「あうあ!」

 ジョシュアの笑顔と対峙しながらうーんと苦笑するお義母様。

(私はお義母様だと思うのだけど……)

 だってお義母様はよく高らかに笑う。
 それに、アイラもだけどジョシュアの怖いもの知らずなところなんて……もう、そっくりとしか言いようがない。
 でも、私はそんなお義母様を中心としたギルモア家の明るさに救われた。

「ねぇ、ジョシュア」
「あうあ!」

 私が声をかけると満面の笑みで振り返ったジョシュア。

「おばあさまのこと、好き?」
「あうあ~~」
「……っ!」

 大好きです、といわんばかりの顔で返事をするジョシュア。
 そんなジョシュアの返答を聞いて息を呑んだお義母様の頬がほんの少し緩んだ。

「ジョ、ジョシュア……」
「あうあ~~」

(あら? いつものお義母様のオーホッホッホが出てこない?)

 これ……もしかしてお義母様、照れてる?
 私が内心でフフフと笑った時だった。

「…………ぅぁぁ!」
「えっ、ちょっとアイラまで……なに!?」

 わたくしもですわぁ、と言わんばかりにアイラまでお義母様に向かって突進する。

「あうあ!」
「ぅぁ!」
「なに? 苦しいんだけど!」

 結果、ジョシュアとアイラに囲まれて捕まるお義母様。

「あうあ~」
「ぅぁぅぁ~」
「ちょっ、なに、落ち着いて、重……重いわよぉ!」

 二人に揉みくちゃにされているお義母様を見て笑っていたらジョエル様が不思議そうな顔をしていた。

「セアラ?」
「いえ。この調査の結果もそうですが、お義母様って皆に愛されてるなぁ、と思いまして」
「…………母上だから、な」

 ジョエル様が頷きながらそう言った。
 その顔には一切の驚きなんてなく、この結果はさも当然だと言わんばかり。

 強く美しく逞しく豪快で明るく────……
 きっとお義母様はそのたくさんの魅力でこれからも多くの人に慕われ虜にしていくのだと思った。
 
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