最恐家族は本日も無双中 ~ギルモア家と愉快な人々~

Rohdea

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ギルモア家と愉快な人々の日常

可愛いポーズ【ジョシュア&ガーネット】

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「───あうあ!」

 うーん、こまったです。
 いま、ボクはかがみのまえでなやんでいます。

「あうあ」

 この、かわいくてまるくてプニプニでプリチーなボクのみりょくが、さいだいげんにひきだせるかわいーポーズがわからないのです……

「あうあー」
  
 とりあえず、かがみのまえにおすわりしたボクは、ゴロンとしてみたりハイハイのポーズをしてみたりと、いろいろなポーズをきめてみますが、どれもしっくりきません。
 そんなときでした。

「ジョシュア。さっきから鏡の前で一人で何をやっているの?」
「あうあ!」

 ───おばーさま!

 ボクはパッとかおをあげます。
 このこえは、おばーさまです。
 おもったとおり、おへやのいりぐちには、きょーもきれいなおばーさまがたっていました。

(これは、てんのたすけです~)

「あうあ、あうあ~!」

 ───おばーさま、いいところにきたです~

 ニパッ!
 ボクは、おばーさまにわらいかけます。
 おばーさまはよく、わらいながらじぶんのことを“せんすのかたまり”といってるです。
 むずかしくていみはよくわからないけど、すごそうなのです……!

「あ?」
「あうあ!」

 ───ボクのおてつだいするです!

「やだ……ジョシュアのその顔、嫌な予感しかしないんだけど?」
「あうあ!」

 ───どのポーズをしたらボクがさいこーにかわいいか、いっしょにかんがえるです!

 ニパッ!  
 ボクはもういちどおばーさまにわらいかけて、せつめいします。

「ジョシュア……私、しばらくあなたを見てたけど」
「あうあ」

 おや? どうやら、みられていたようです!

「大人しく座ってると思ったのに、仰向けに転がりだして、今度はうつ伏せになったかと思えば、すぐに四つん這いになったり腹這いしたり……意味分かんないんだけど?」
「あうあ~!」
「何がしたかったわけ?」

 おおお! さすが、ボクのおばーさま。
 ホントーにずっとみてたようです。
 ここまでみてくれていたなら、はなしははやいです!

「あうあ、あうあー、あうあ、あうあ~!」

 ───どれ、どれがいちばんかわいかったです? かわいくてまるくてプニプニでプリチーなボクをあますことなくひょうげんできていたさいこーのポーズはどれでしたか~!

「ひっ!?」

 ボクがしつもんしながらとびつくと、なぜかおばーさまがおかおをピクピクさせてあとずさりしました。
 そして、キョロキョロとあたりをみまわします。

「もう! なんでこんな時に限ってジョルジュもジョエルもいないのよ! 通訳~」
「あうあ!」

 ───おじーさまはいま、アイラをつれて、せっせとおにわをほってるです!

「あうあ!」

 ───おとーさまとおかーさまは“でーと”です!

「あうあ、あうあ!」

 ───“でーと”ってなんですか? おいしーものですか?

 “でーと”とやらのことをおもいだしたボクはおばーさまにたずねます。

「な、なに……? 今度は何なの……?」
「あうあー」

 おとーさまとおかーさまに“でーとしてくる”といわれたボクは、なんなのかはよくわからなかったけど、ニパッとわらっておみおくりしました。
 ふたりともニコニコしていたので、これはぜったいおいしーものだとボクはおもうのです。

(おとなはズルいです……)

 ボクもはやくおおきくなって“でーと”するです。
 そんなことをかんがえながら、ボクはせっせとおばーさまによじのぼります。

「こら! なんでよじ登ってくるのよ!?」
「あうあ~」

 ───はやく、おっきくなりたいからです~

 おばーさまのうえにのぼれば、まだまだ、ちいさなボクもながめがよくなっておっきくなれたようなきがします。
 だから、のぼります!

「もう! 重い、重いってば! 降りなさーい!」
「あうあ~」

 ───おばーさまは、ちゅーもんがおおいこまったさんです~


✲✲✲✲✲


(もう! いったいなんなの!)

 ジョシュアの奇行の数々に私は頭を抱えた。
 我が家のヤンチャベビー、ジョシュアがゴロンゴロン転がったり腹這いしたりするのは決して珍しい動きじゃない。
 しかし、今日はなぜそれを鏡の前でやっているわけ?
 そんな疑問を持ち、声をかけてみたらジョシュアは満面の笑顔でよじ登って来やがった。

(ホーホッホッホッ! 本当に考えの読めない自由奔放な子!)

 愛する夫のジョルジュと同じ自由人っぷりを可愛い笑顔でやってのけるジョシュア。
 怖いもの知らずにも程がある!
 少しは言い聞かせておかないと……

(それがこの私の使命よ!)

「───ジョシュア!」
「あうあ!」
「くっ!」

 ニパッ!
 ジョシュアが笑いかけてくる。その顔がめちゃくちゃ可愛い。
 私は挫けそうになるのを堪えてなんとか文句を言う。

「ニパッじゃないのよ、ニパッじゃ!」
「あうあ!」

 ニパッ!

「……くっ!!」
「あうあ!」

(落ち着け……落ち着くのよガーネット)

 私は必死に自分に言い聞かせる。
 奇行といったらジョルジュ、ジョエル……愛する夫と息子のそばでたくさん見てきたでしょう?

「……」

 突然何を言い出しやらかすか分からない男、ジョルジュ。
 ベビーの頃から「う」しか言わない無表情な息子ジョエル───
 自由人ジョルジュはすっかり私の(足の)虜にしたし、「う」で語る男ジョエルも愛する家族を持てる人間にまで育て上げたこの私に
 …………不可能はない!!

「あうあ!」
「……」

 ジョシュアはその集大成のようなもの。
 考えるのよ……ギルモア家の男の心理というものを!
 そうよ───だって私はガーネット。

(この私に御せないものなどこの世に存在しなくってよ!!)

「オーホッホッホ!」
「あうあ~~」

 私は高らかに笑いながらよじ登って来たジョシュアの脇の下をガシッと掴んで高く持ち上げる。
 ジョシュアは楽しそうにキャッキャと笑った。

「ホホホホホ! 分かったわよ~ジョシュア。この美しすぎる私をもっと間近で見たいのよね?」
「あうあ~(ちがいます~)」

 ニパッ!
 ほら見なさい! この満面の笑顔。
 正直、この動作はかなり腰に来るけど、なんのその。
 今は、ジョシュアを満足させてみせるわよ!

「どう? この角度から見ても私は美しいでしょう?」
「あうあ~! (さんこーにはなるです~!)」

 ニパッ!  
 ほら、また笑った。
 きっと私のことを“美しい”と褒め讃えているに違いないわ!

「ホ~ホッホッホッ! いいお返事ね、ジョシュア。よく分かってるじゃない!」
「あうあ! (はやくボクのさいこーにかわいいポーズをきめるです!)」
「……」

 ───ボクも可愛いです!
  なんとなくだけど、そう言っている気がした。


✲✲✲✲✲


「───あうあ!」

 うーん、こまったです。
 たかいたかいでながめをよくしてくれたおばーさまですが、ぼくのさいこーにかわいいポーズについては、なかなかおはなししてくれないです。
 もしや、これは、もったいぶってるとかいうやつですか?
 さすが、ボクのそんけーするおばーさま。ひとすじなわではいきません……

「あうあ、あうあ~!」

 ───おばーさま、そろそろ“かわいいポーズ”をボクにおしえるです!
  
「え、なに? なんでまた暴れるわけ!?」
「あうあ!」
「ちょっ、腰、腰が……」
  
 おばーさまがそうさけんだときでした。
 ガチャッとおへやのとびらがひらきます。

「ガーネット? そんなに楽しそうにはしゃいでどうしたんだ?」
「……ぅぁ」

(このこえは……!)

 おばーさまもハッとしたおかおでふりむきます。

「ジョルジュ! アイラ!」

 おじーさまがアイラをだっこしておへやにはいってきたです!
 どうやら、ふたりはおにわをほるのがおわったようです。

「ホーホッホッホッ! この私が楽しそうにはしゃいでるですって?」

 おばーさまがわらいながらおじーさまにたずねます。

「ああ。ジョシュアとキャッキャしているガーネットの声が響いていたぞ。なぁ、アイラ」
「ぅぁ」

 おじーさまがアイラにもきくと、てんしのアイラもコクリとうなずいたです。

「キャッキャ……ねぇ」
「あうあ!」

 おばーさまが、こしをさすりながらチラッとぼくのおかおをみてきたので、ボクはニパッとわらいかえします。

 ───おばーさま、はやくするです、ボクずっとまってるです! 

「ん? ジョシュアは何を待っているんだ?」

 ここで、おじーさまがくびをかしげました。

「は? 何の話?」

 おばーさまがおめめをパチパチさせます。

「いや、ジョシュアがボクはずっと待っている、早くしろ……と」
「待つ? 何を催促してるのよ? おやつ?」
「あうあ!」

 ───だから、かわいくてまるくてプニプニでプリチーなボクのみりょくが、さいだいげんにひきだせるポーズです!

「いや、おやつではない……可愛くて丸くてぷにぷにでぷりちぃ? なボクの魅力が最大限に引き出せるポーズ……?」
「は? 意味が分かんないんだけど」
「俺もだ」

 ふたりがふしぎそうにおくびをクネクネしています。
 そのまま、ふたりでうーんといいながら、おはなしをつづけています。
 おじーさまにだっこされてるアイラはどーでもよさそーにフワァとあくびしてます。

「…………ええっと、つまりジョシュアは私の美しさを褒め讃えていたわけじゃないってこと?」
「全然違うんじゃないか?」
「ポーズ……?」

 そこでおばーさまがハッとかおをあげました。

「分かったわ! だからジョシュアは鏡の前にいたのね!?」
「あうあ!」

 ボクはニパッとわらいかけます。
 よくわからないけど、おばーさまはいま、“わかった”といったです。
 つまり、ボクのさいこーにかわいいポーズが、けっていしたにちがいありません!

「あうあ! あうあ、あうあ!」

 ───おばーさま! さあさあさあ、どれですか!


✲✲✲✲✲


「ひっ!?」

 ジョシュアが突然、ジタバタと暴れ出す。

「ガーネット……ジョシュアはどれだ? と詰め寄ってるぞ」
「どれって言われても!」

 てっきり、私の美しさを褒め讃えてくれているとばかり思っていたのに、まさか自分を可愛いく見えるポーズがどれかを研究していたなんていきなり言われても困る!

「ねぇ、ジョルジュは……」
「うん?」
「…………なんでもない」

 一瞬、ジョルジュに助けを求めようかしらと考えたけどすぐにやめた。
 ジョルジュのことだから、へんてこりんなポーズを最高だ! と、口にしかねない。
 それを聞いたジョシュアは嬉々としてそのポーズを頻繁にするようになるだろう。
 ならば───

「アイ……」

 頼みの綱は同じベビーの完成を持つアイラよ!
 そう思ってアイラに訊ねようとして私は愕然とした。

「……」
「え、嘘っ、寝て……る?」

 どうやら、アイラはジョシュアの可愛いポーズに全く興味も関心もわかなかったようで、ジョルジュの腕の中でスヤスヤ眠ってしまっていた。

「ん? アイラは寝てしまったのか」
「あうあ~」

 ニパッ!

「ああ。今日のアイラはかなり張り切って庭を掘る手伝いをしてくれていた。きっと疲れたんだろう」
「あうあ」
「ん? カス? そうだな。そろそろ、カスをうめるひつよーがでてくるかもしれませんわ、とか言っていたが……」
「あうあ!」

(ちょっ……アイラが予言めいたことを口にしてるんだけど!)

 我が家の場合、こういう話は冗談に聞こえないからやめて欲しい。 
 あの子たち、今度はどこの家を潰すつもりなの?

「キレーなおねーさんをなかせるよーなカスは、このボクがかならずたいじするです? ああ。ぜひ、そうしてくれ」
「あうあ!」

 ジョシュアがニパッと笑って任せてと言わんばかりにどーんと胸を張る。

「ジョルジュ! なんでそこで煽るのよ!」
「あうあ~」
「うん? そのためにも、ベビーのボクはさらに“かわいい”をみがくひつようがあるです、か。なるほど。賢いな」
「あうあ~」
「だが、ジョシュア。この間、君は期待に応えるです! とか言って最低男を目指すとか言っていなかったか?」

 ジョルジュの問いかけにジョシュアはさらにニパッと笑った。

「あうあ~!」
「なに? それはそれ、これはこれです?」
「あうあ」
「ふむ。よく分からんが、主張を変えざるを得ないとはベビーの世界を生きていくのも色々と大変なんだな」
「あうあ」

 ジョルジュは納得したのかしみじみとした様子で頷いた。
 さすがベビー。
 発言がその時その時でコロコロ変わっていく……

「ジョルジュ! 今のは別に感心するところじゃなくて、これはだだのジョシュアの気まぐれ──」
「あうあ!」

 ジョルジュに注意しようとしたところで、ジョシュアが私に向かってニパッと笑いかけ、突然様々なポーズを取り始めた。

「え、なによ!?  なにごと!?」
「あうあ~!」

 ここで私はハッと気付いた。

(こ、これは……)

 ───さあ、おばーさま! ボクのさいこーにかわいいポーズをいっしょにきめるです~!

(とかなんとか言ってるような気がする……)

「ねぇ! だいたいなんで決めるのが私なのよ!?」
「あうあ!」 
「────ガーネットが“センスの塊”だからだそうだ」  
「……くっ! それは私が前にジョシュアの前で豪語した言葉じゃないの……」
「あうあ~~!」


 その日、ジョシュアによる“可愛いポーズ”とやらの追究は私を巻き込んで夜中まで延々と続いた。
 そして翌日、私は睡眠不足と腰痛に苦しんだ─────
 
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