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ギルモア家と愉快な人々の日常
おそろしいですわ!【ナターシャ】
しおりを挟む「あうあ!」
───きょーのボクは、ベビーちゃんのおかおをかくです!
めのまえにすわっているジョシュアがわたくしにむかってそういいました。
そのちいさなおててには、ペンがにぎられています。
「あっぷぅ、うあったあ?」
───わたくしのかおをかく、ですって?
コイツ……ジョシュアは、いったいなにをするつもりですの?
わたくしには、りかいできません。
(つまり……おえかき?)
あれから、おとうさまにごういんにつれられて、ギルモアけにとうちゃくしました。
とうちゃくするなり、にくきおとこ・ジョシュアがニパッとしながら、すぐにかおをだしましたの。
そしてわたくしは、あれよあれよとおへやにつれていかれ、こういわれましたわ。
「はっはっは、今日のジョシュアは似顔絵を描くのか」
「あうあ!」
「確かに君の描く絵はベビーとは思えないくらい上手いからな」
おとうさまがハッハッハとわらいながら、ジョシュアのヤローをほめています。
「あうあ!」
───きょーは、あさからアイラが、プリチーでかわいかったのでおえかきしていたです!
「アイラがプリチー……つまり、今日は朝からアイラが可愛かったから絵を描いて残そうとしていたということだな?」
「あうあ!」
「なるほど! それで、君はタイミングよく訪ねて来た我が家のお姫様、可愛い可愛いナターシャも絵に残そうと思ってくれたのか!」
「あうあ!」
「そうか、嬉しいぞ!」
「あうあ!」
おとうさまとジョシュアがなかよくかいわをしていますわ。
……なぜですの?
おとうさまはとわたくしのおしゃべりは、ままならないのに……
なぜ、ジョシュアとはせいりつするんですの?
そんなの……
(ずるいですわーーーー!)
わたくしは、てあしをパタパタさせながら、ジロッとジョシュアをにらみます。
すると、わたくしのしせんをかんじとったジョシュアとパチッと“め”があいました。
「あうあ!」
ニパッとわらったジョシュアがおとうさまのおようふくのそでをクイッとひっぱります。
「なに? ナターシャが早く描けと言っている?」
「あうあ!」
(んあ!?)
「はっはっは! 我が家のお姫様はせっかちだな!」
「ぅばぁあ!?」
───ちがいますわよ!?
わたくし、そんなよーきゅーしていません!
これは、りっぱなふーひょーひがいですわぁぁ。
てきとーなことをほざきやがったジョシュアをもういちどつよくにらみつけると、ニパッとわらわれました。
「あうあ!」
───あんしんするです! ボクはベビーちゃんのこともかわいくかけるです!
「っ!」
(か! かかかかかわいい……ですって!?)
なぜか、わたくしのおむねがドクンッとしました。
(なんですの? これ……)
おむねがドクドクなってます!
おかおもあつくなってきましたわ!
なんということでしょう!
もしかしたら……わたくしなにかのびょーきかもしれません……
これは、わたくしのいちだいじ! いますぐ、いしゃをよぶべきですわ!
しかし、うったえたくても、ざんなんながらみんなにわたくしのことばはつうじません。
(いいえ、まって? ひとりだけいますわ!)
わたくしは、ギュッとおむねをおさえながら、キョロキョロとあたりをみまわします。
わたくしのししょー、ガーネットおばあさまのだんなさま……
ギルモアけのとーしゅをさがします。
そう! なぜか、あのひとだけはわたくしのことばをりかいしてくれていますのよ!
「あっぷぁあ! あだだだうああっぱあ?」
───ジョシュア! いま、あなたのおじいさまはどこにいますの?
「あうあ!」
ニパッ!
ジョシュアがいつものようにわらいました。
───きょーのベビーちゃんのおリボン、アイラににあいそーな、かわいいおリボンです!
(んあ?)
ジョシュアはわたくしのしつもんとはちがうことばをくちにします。
コイツ、おみみついてますの?
「お、さすがジョシュア。目の付け所が違う。はっはっは! 今日のナターシャのリボンも可愛いだろう?」
「あうあ~」
(なんですって!?)
おとうさまが、わらいながらなにやらのんきなことをくちにしています。
こっちは、むすめのいちだいじですのに、なにをのほほんとしていますの!?
わたくしは、がんばってこえをはりあげました。
「あっぷぁあ! あぶぁぁぁあ、うあったぁあ!」
───ジョシュア! いいから、はやく、ここにあなたのおじいさまをつれてきてくださいまし!
「あうあ~」
───ボクもまた、あたらしいのがほしいです、でもおばーさまがおこるです~
「はっはっは! 仕方がないさ。ガーネット様は厳しいからなぁ」
おとうさまがジョシュアにむかってウンウンとうなずきながらわらいます。
「あっぷぁあ! おあったあ! あっだぁぁうあぷぁあ!」
───ジョシュア! おとうさま! おリボンのことはあとですわ!
いまは、ギルモアけのとーしゅをよぶのがさきですわ!
どこ、どこにいるんですの!?
はやく、わたくしのことばをいちごんいっくあますことなくつうやくして、ただちにいしゃをよんでくださいまし!
「ん? ナターシャも元気に手足をパタパタさせているな……分かったぞ! ナターシャも新しいリボンが欲しいんだな?」
「うあったぁぁあーーーー」
───ちがうですわーーーー!
もちろん、あたらしいおリボンはほしいです、かわいいおリボンはいくらあってもたりません。
しかーし! いまのわたくしはそれどころではありませんのよ!
わたくしはけんめいに、おとうさまにうったえます。
「ナターシャ、そんなに必死な顔…………僕に任せろ! 屋敷に戻ったらレティーシャを頑張って説得してみせよう!」
「あうあ~」
───なら、ボクもいっしょにおねがいするです~
「……ぅあっ、だたぁぁあーーーーー!」
───……こんの、すっとこどっこいーーーー!
いかりがちょーてんにたっしたわたくしが、ふたりにむかってさけんだときでした。
「ホーホッホッホッ! ────ベビーたちは相変わらず、騒がしいわねぇ」
(は! ……このこえは!)
いますぐにでもあたまをさげたくなるうつくしいわらい、オーホッホッホ……
これは、ガーネットおばあさまのこえですわ!
ガーネットおばあさまのいるところに、ギルモアけのとーしゅあり! ですのよ。
わたくしは、ようやくつうやくがきてくれた! そう、きたいしてふりむきました。
しかし……
「あうあ!」
───おばーさまです!
ニパッとわらったジョシュアがこえのぬし、ガーネットおばあさまのもとにかけよりました。
(あら?)
「…………うあぷぁ?」
なんということでしょう!
このばにあらわれたのは、ガーネットおばあさまのみ!
いつも、ピョコピョコくっついているギルモアけのとーしゅがいませんわ!?
「あうあ~」
「はいは~い、ジョシュア。なんであなたはそうやってすぐ、私によじ登って来ようとするのよ」
「あうあ~~」
ジョシュアがガーネットおばあさまにひっついて、よじのぼろうとしていますが、そんなことはどうでもいいですわ!
なぜ、きょーにかぎってつうやくできるとーしゅがいないんですの!?
「あうあ~、じゃないわよ! そして離れなさい!」
「あうあ~」
ガーネットおばあさまがよじのぼってくるジョシュアをはらいのけます。
しかし、ジョシュアはヘラヘラしたままはなれようとしません。
「あうあ!」
「ん? ああ、ガーネット様。ジョシュアがおじーさまはどこですかと聞いてるぞ?」
「え? ジョルジュ?」
なんと!
ここで、ジョシュアのヤローがギルモアけとーしゅのゆくえをきいてくれましたわ!
わたくしは、ほんのすこーしだけ、ジョシュアをみなおします。
ガーネットおばあさまはチラッとおへやのとけいをみあげました。
「あーー、ジョルジュはね、物置に物を取りに行ったんだけど、そのまま一時間戻って来ないのよねぇ」
「あうあ!」
───おじーさま、ゆくえふめーです!
「ぅあばぁ!?」
(ゆくえふめーー!?)
「なるほど。ジョルジュ様も安定の迷子なのか」
「そういうこと! こっちの方が騒がしかったからジョルジュがフラフラ来てるのかしらと思って顔を出してみたんだけど居ないようね」
(まいご……)
ガーネットおばあさまがホホホとわらいます。
こ、このいっかは、なんなんですの?
なぜ、ゆくえふめーなのにわらっていられるんですの?
それに、いつもだれかがゆくえふめーだとききますわ!?
「あうあ~」
「ガーネット様。ジョシュアが、ジョルジュ様は何を取りに行ったんです? と聞いていますが」
「え? ああ、新しいスコップよ」
それをきいたジョシュアがうれしそうにわらいました。
「あうあ~~!」
───おじーさま、きょーもせっせとあなをほってカスたちをうめるじゅんびです~~!
「あぶぁ!?」
(ヒ、ヒトをうめる!?)
ギルモアけのおにわはとてもキレイなおはながさいてますわ。
でも……
そのしたにはヒトがうまっていたなんて……!
そこで、わたくしはハッとおもいだしました。
そういえば、すっかりきおくをまっしょーしておりましたが、いぜんもこんなおはなしを……していたきがしますわ!
「ああ、スコップか! 相変わらずなんだな」
おとうさまはハッハッハとわらっていますわ。
これは、わらいごとなんですの!?
「あ、あぶぁぁ……」
(おとうさまもギルモアけのひとびとも……お、おそろしいですわぁぁ……)
すっかり、わたくしがしんぱいしたおむねのドキドキはどこかにきえさり、わたくしのなかには、ただただ、きょうふだけがのこりましたわ。
★おまけ★
コックス公爵家のエドゥアルトとナターシャ、帰りの馬車の中。
エドゥアルトが愛娘のナターシャに訊ねる。
「ナ、ナターシャ? なぜ、さっきから僕とそんな距離を取るんだ?」
「……ぷぁ」
愛娘の様子がおかしいと感じたエドゥアルトはナターシャに向かって手を伸ばしてみた。
ススス……
しかし、ナターシャは手を伸ばされた分だけ後ろへと下がってしまう。
「ばぶぁ……」
「え、頭を撫でようとしただけなのに! なぜますます離れていく!?」
エドゥアルトは怯えたナターシャにめちゃくちゃ距離を取られて涙目になっていた。
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