最恐家族は本日も無双中 ~ギルモア家と愉快な人々~

Rohdea

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ギルモア家と愉快な人々の日常

ジョシュアの嗅覚【ガーネット&ジョシュア】

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「ジョシュア~~待ちなさーーい!」
「あうあ~~」 

 パーティーそっちのけで追いかけっこを開始した私とジョシュア。
 相変わらずのすばしっこさに手を焼いていたら突然、ジョシュアがピタッと足を止めた。

「──あうあ」
「え、なに?」
「あうあ」 

 足を止めたジョシュアが辺りをキョロキョロし始めた。
 まるで何かを探しているよう。

「ジョシュア? どうしたのよ?」
「あうあ!」
「!」

 キョロキョロしていたジョシュアが、そこだ! という様子で叫んだ時だった。

「────お願いです……! 私との婚約は解消してください!」

(……?)

 ジョシュアの視線の方向からそんな声が聞こえて来た。

「え、なにごと?」
「あうあ」

 グイッ

「あうあ」

 グイッ

「ちょっ、ジョシュア?」
「あうあ!」

 ジョシュアが今すぐ僕を抱っこしろと言わんばかりの顔で両手を上げて私に迫って来た。
 なので、その身体をヒョイっと持ち上げる。

「あうあ、あうあ!」

 そのまま抱きかかえてみるとジョシュアは、声のする方向をしきりに指さしてくる。

「なに? まさか、近づいて盗み聞きしろとか言っているんじゃないでしょうね?」
「あうあ!」

 ニパッ!
 ジョシュアは満面笑みを浮かべる。

「ホホホ、“そのとーり、さすがおばーさまです! ”とか褒められているような気がするけど、ぜんっぜん嬉しくないわね」
「あうあ~」

 ニパッ!

(ホーホッホッホッ、この顔よ……)

「そもそも、あの二人はなぜ、こんな所で深刻そうな話をしてるわけ?」
「あうあ!」
「……」

 ────いいからさっさと近付いて盗み聞きするです!

 はっきりとは分からないけど、そう言われたような気がした。


✲✲✲✲✲


 ボクをだっこした、おばーさまがジリジリとおにいさんとおねえさんのそばにちかづいていくです。

「あうあ!」
「ジョシュア! しっ! 声が大きいわよ!」

 おばーさまにおこられてしまいました。
 こえのトーンをおとすことにします。

「ぁぅぁ」

 ボクはチラッとしせんをふたりにむけます。

(ボクにはわかります……あのおにいさん、カスです)

 みんなに、かわいいボクのおなまえをおぼえてもらうため、もういちどあいさつにいこうとろうかをかけていたら、ふとカスのにおいがしたです!
 だから、ボクはおばーさまといっしょに、ようすみすることにしました。

「婚約解消? 君は何をふざけたことを言っているんだ?」
「ふざけてなどいないわ! もう私…………限界なの!」

 カスをかんじるおにいさんがジロリとにらむと、にらまれたおねえさんがおめめになみだをためてさけびました。

(キレイなおねえさんです~)

「何度言ったらあなたは浮気するのをやめてくれるの!?」

 うわき……
 このことば、ボクはこれまでいっぱいみみにしたです!  
 うわきがなにかはよくわからないですが、カスのはじまりだとみんないっていました。

「ホホホ、出たわね、浮気」

 うわき、ときいたおばーさまのおめめがギラッとなりました。
 こわいです……ブルブルします!

「俺が浮気だと?」
「そうよ!」

 キレイなおねえさんとカスおとこがいいあらそいをはじめました。
 ボクとおばーさまはそのようすをじっとみまもります。

「今日だって、形だけ私のエスコートを終えたら、すぐにウォーノック家のご令嬢と姿を消していたわよね? さっきまで二人っきりで何処でなにをしていたの?」
「……」

 カスおとこはチッとするだけで、しつもんにこたえません。わるいこです。
 しかも、おねえさんのおめめをまっすぐみないでフイッとおかおもそらしました。

「その前のパーティーではスポール家の、その前はヤーノルド家、そのその前はコリヤー家のご令嬢……」

 たくさんのおうちのおなまえがでてきたので、ボクにはもうさっぱりわかりません。
 しかし……

「え、ウォーノック家にスポール家? さらにヤーノルド家やコリヤー家もって、男爵家から侯爵家までの幅広いご令嬢に手を出してるということ?」
「ぁぅぁ!」

 さすが、おばーさまです!
 ちゃんとどこのおうちのおはなしなのかわかっているみたいです!
 すばらしーです。

「これが本当の話なら節操ないわね、モテモテのプレイボーイでも気取ってるつもりなのかしら」
「ぁぅぁ」

 ───もてもてぷれーぼーいってなんですか?

「おそろしいわね…………未来のジョシュアも無自覚でこうなりそうで怖いんだけど……」

(ん?)

 ここで、おばーさまがポソッとちいさなこえでボクのおなまえをつぶやいたです。
 まちがいありません! 
 ボクのおみみにはしっかり“みらいのジョシュア”ときこえたです!

「ぁぅぁ!」
「な、なによ?」

 どうやら、みらいのボクはぷれーぼーいというやつになるそしつがあるようです。

(あれ? でも、まえにもどこかできいたことばのよーな?)

 ボクはうーんとかんがえました。
 でも、おもいだせなかったので、きっと、きのせいです!
 ぷれーぼーい……
 それは、ぼくのめざす“かっこいいおとこ”のすがたなのか、おばーさまにかくにんしなくてはいけません。

「ぁぅぁ」
「ひっ!?  ちょっと! その圧はなにごと!?」

 ニパッとわらったボクは、グイグイとおばーさまにかわいいおかおをちかづけました。
 ひとにものをたずねるときは、しっかりあいてのおかおをみる! そうおそわったです。
 でも、あのカスおとこは、さっきからおねえさんのおかおをみようとしてません。
 やっぱりダメなおとこのしょーこです……

「はっ! わかったわ。ジョシュア、あなた今すぐあの男を退治して始末しようとか言ってるんでしょう!?」
「ぁぅぁ!」

 ───さあ、おばーさま! もてもてぷれーぼーいとはどんなおとこなのかボクにせつめいするです!

「ダメよ! いきなりここで無関係のベビーが首を突っ込むなんて明らかに不審でしょ?」
「ぁぅぁ~」

 ───おじーさまやおとーさまもぷれーぼーいですか~?

 ぼくがそんけーするめざすべきおとこ、おじーさまとおとーさま。
 ふたりは、ぷれーぼーいなのかがきになるところです。

「ぁぅぁ~」

 ───ゆかいなおにーさんはどーですか?

 おとーさまのしんゆーはっはっは! のおにーさんもぷれーぼーいなのかきになるです。

「いいこと? ジョシュア。こういう時はね、まずは情報収集するのよ」
「ぁぅぁ」

(じょーほしゅーしゅー? なんのはなしでしょう?)

 でも、もてもてぷれーぼーいになるのにはひつようなことかもしれないとおもったボクはニパッとわらってうなずきます。

「あの男は、あなた好みの始末したいカス男かもしれないけど、片方の話だけを鵜呑みには出来ないの」
「ぁぅぁ」

(うのみってなんでしょう……ジュースでしょうか……)

 おいしそうです!

「ホッホッホ! 分かってくれたようね」
「ぁぅぁ!」

 ───とりあえず、じょーほしゅーしゅーするです!

 ニパッ!  
 ボクはわらってうなずいておきました。

「それなら、とりあえず今はこのまま会場に戻るわよ?」
「ぁぅぁ!」

 ───わかったです! もどってぷれーぼーいについてのじょーほしゅーしゅーするです!

(これも、りっぱなおとこをめざすためのおべんきょーです!)

 ニパッ!
 そうおもったボクは、げんきいっぱいにうなずきました。


✲✲✲✲✲


(やれやれ……)

 追いかけっこ中、カスの片鱗を持ってそうな男を見つけたジョシュア。
 無駄に突撃しないように言い聞かせたところ、ニパッと笑いながら力強く頷いてはくれた。
 でも、私には分かる。
 ジョシュアはきっとジョルジュと一緒にあの男を始末して、最終的には庭に埋めようなどと言い出すに違いない……

(確かに浮気者な男は許せないけど、そんな男を庭に埋めておくのは勘弁よ!)

 そんなことを考えながら、とりあえず、ジョシュアを抱きかかえて会場に戻ることにした私。

(だいたい、なんで我が家のパーティーで婚約解消の話なんてしてるのよ……)

 令嬢の方はそれだけ我慢ならなくなったということなのだろうけれど。
 だけど、あの暫定カス男が本当に婚約者を蔑ろにして節操なしに令嬢たちに手を出しまくっているというなら、それはそれで許せない。

「それにしても───我が家のパーティーでも堂々と浮気……ね。ジョシュア、そんな男を見つけるなんてあなたの嗅覚はどうなってるの?」
「あうあ!」

 会場に戻りながら訊ねるとニパッ! とした笑顔を返された。

「……ホホホ、無邪気に見えて実は邪気だらけなその可愛い笑顔が怖いわぁ」
「あうあ!」


 そして、この時の私。
 移り気で色々なことに興味津々なベビーはカス男の存在よりも、プレイボーイのことばかり気になっていて、実は途中から会話が全く成立していないとは思ってもいなかった───……

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