15 / 70
ギルモア家と愉快な人々の日常
ジョシュアの嗅覚【ガーネット&ジョシュア】
しおりを挟む「ジョシュア~~待ちなさーーい!」
「あうあ~~」
パーティーそっちのけで追いかけっこを開始した私とジョシュア。
相変わらずのすばしっこさに手を焼いていたら突然、ジョシュアがピタッと足を止めた。
「──あうあ」
「え、なに?」
「あうあ」
足を止めたジョシュアが辺りをキョロキョロし始めた。
まるで何かを探しているよう。
「ジョシュア? どうしたのよ?」
「あうあ!」
「!」
キョロキョロしていたジョシュアが、そこだ! という様子で叫んだ時だった。
「────お願いです……! 私との婚約は解消してください!」
(……?)
ジョシュアの視線の方向からそんな声が聞こえて来た。
「え、なにごと?」
「あうあ」
グイッ
「あうあ」
グイッ
「ちょっ、ジョシュア?」
「あうあ!」
ジョシュアが今すぐ僕を抱っこしろと言わんばかりの顔で両手を上げて私に迫って来た。
なので、その身体をヒョイっと持ち上げる。
「あうあ、あうあ!」
そのまま抱きかかえてみるとジョシュアは、声のする方向をしきりに指さしてくる。
「なに? まさか、近づいて盗み聞きしろとか言っているんじゃないでしょうね?」
「あうあ!」
ニパッ!
ジョシュアは満面笑みを浮かべる。
「ホホホ、“そのとーり、さすがおばーさまです! ”とか褒められているような気がするけど、ぜんっぜん嬉しくないわね」
「あうあ~」
ニパッ!
(ホーホッホッホッ、この顔よ……)
「そもそも、あの二人はなぜ、こんな所で深刻そうな話をしてるわけ?」
「あうあ!」
「……」
────いいからさっさと近付いて盗み聞きするです!
はっきりとは分からないけど、そう言われたような気がした。
✲✲✲✲✲
ボクをだっこした、おばーさまがジリジリとおにいさんとおねえさんのそばにちかづいていくです。
「あうあ!」
「ジョシュア! しっ! 声が大きいわよ!」
おばーさまにおこられてしまいました。
こえのトーンをおとすことにします。
「ぁぅぁ」
ボクはチラッとしせんをふたりにむけます。
(ボクにはわかります……あのおにいさん、カスです)
みんなに、かわいいボクのおなまえをおぼえてもらうため、もういちどあいさつにいこうとろうかをかけていたら、ふとカスのにおいがしたです!
だから、ボクはおばーさまといっしょに、ようすみすることにしました。
「婚約解消? 君は何をふざけたことを言っているんだ?」
「ふざけてなどいないわ! もう私…………限界なの!」
カスをかんじるおにいさんがジロリとにらむと、にらまれたおねえさんがおめめになみだをためてさけびました。
(キレイなおねえさんです~)
「何度言ったらあなたは浮気するのをやめてくれるの!?」
うわき……
このことば、ボクはこれまでいっぱいみみにしたです!
うわきがなにかはよくわからないですが、カスのはじまりだとみんないっていました。
「ホホホ、出たわね、浮気」
うわき、ときいたおばーさまのおめめがギラッとなりました。
こわいです……ブルブルします!
「俺が浮気だと?」
「そうよ!」
キレイなおねえさんとカスおとこがいいあらそいをはじめました。
ボクとおばーさまはそのようすをじっとみまもります。
「今日だって、形だけ私のエスコートを終えたら、すぐにウォーノック家のご令嬢と姿を消していたわよね? さっきまで二人っきりで何処でなにをしていたの?」
「……」
カスおとこはチッとするだけで、しつもんにこたえません。わるいこです。
しかも、おねえさんのおめめをまっすぐみないでフイッとおかおもそらしました。
「その前のパーティーではスポール家の、その前はヤーノルド家、そのその前はコリヤー家のご令嬢……」
たくさんのおうちのおなまえがでてきたので、ボクにはもうさっぱりわかりません。
しかし……
「え、ウォーノック家にスポール家? さらにヤーノルド家やコリヤー家もって、男爵家から侯爵家までの幅広いご令嬢に手を出してるということ?」
「ぁぅぁ!」
さすが、おばーさまです!
ちゃんとどこのおうちのおはなしなのかわかっているみたいです!
すばらしーです。
「これが本当の話なら節操ないわね、モテモテのプレイボーイでも気取ってるつもりなのかしら」
「ぁぅぁ」
───もてもてぷれーぼーいってなんですか?
「おそろしいわね…………未来のジョシュアも無自覚でこうなりそうで怖いんだけど……」
(ん?)
ここで、おばーさまがポソッとちいさなこえでボクのおなまえをつぶやいたです。
まちがいありません!
ボクのおみみにはしっかり“みらいのジョシュア”ときこえたです!
「ぁぅぁ!」
「な、なによ?」
どうやら、みらいのボクはぷれーぼーいというやつになるそしつがあるようです。
(あれ? でも、まえにもどこかできいたことばのよーな?)
ボクはうーんとかんがえました。
でも、おもいだせなかったので、きっと、きのせいです!
ぷれーぼーい……
それは、ぼくのめざす“かっこいいおとこ”のすがたなのか、おばーさまにかくにんしなくてはいけません。
「ぁぅぁ」
「ひっ!? ちょっと! その圧はなにごと!?」
ニパッとわらったボクは、グイグイとおばーさまにかわいいおかおをちかづけました。
ひとにものをたずねるときは、しっかりあいてのおかおをみる! そうおそわったです。
でも、あのカスおとこは、さっきからおねえさんのおかおをみようとしてません。
やっぱりダメなおとこのしょーこです……
「はっ! わかったわ。ジョシュア、あなた今すぐあの男を退治して始末しようとか言ってるんでしょう!?」
「ぁぅぁ!」
───さあ、おばーさま! もてもてぷれーぼーいとはどんなおとこなのかボクにせつめいするです!
「ダメよ! いきなりここで無関係のベビーが首を突っ込むなんて明らかに不審でしょ?」
「ぁぅぁ~」
───おじーさまやおとーさまもぷれーぼーいですか~?
ぼくがそんけーするめざすべきおとこ、おじーさまとおとーさま。
ふたりは、ぷれーぼーいなのかがきになるところです。
「ぁぅぁ~」
───ゆかいなおにーさんはどーですか?
おとーさまのしんゆーはっはっは! のおにーさんもぷれーぼーいなのかきになるです。
「いいこと? ジョシュア。こういう時はね、まずは情報収集するのよ」
「ぁぅぁ」
(じょーほしゅーしゅー? なんのはなしでしょう?)
でも、もてもてぷれーぼーいになるのにはひつようなことかもしれないとおもったボクはニパッとわらってうなずきます。
「あの男は、あなた好みの始末したいカス男かもしれないけど、片方の話だけを鵜呑みには出来ないの」
「ぁぅぁ」
(うのみってなんでしょう……ジュースでしょうか……)
おいしそうです!
「ホッホッホ! 分かってくれたようね」
「ぁぅぁ!」
───とりあえず、じょーほしゅーしゅーするです!
ニパッ!
ボクはわらってうなずいておきました。
「それなら、とりあえず今はこのまま会場に戻るわよ?」
「ぁぅぁ!」
───わかったです! もどってぷれーぼーいについてのじょーほしゅーしゅーするです!
(これも、りっぱなおとこをめざすためのおべんきょーです!)
ニパッ!
そうおもったボクは、げんきいっぱいにうなずきました。
✲✲✲✲✲
(やれやれ……)
追いかけっこ中、カスの片鱗を持ってそうな男を見つけたジョシュア。
無駄に突撃しないように言い聞かせたところ、ニパッと笑いながら力強く頷いてはくれた。
でも、私には分かる。
ジョシュアはきっとジョルジュと一緒にあの男を始末して、最終的には庭に埋めようなどと言い出すに違いない……
(確かに浮気者な男は許せないけど、そんな男を庭に埋めておくのは勘弁よ!)
そんなことを考えながら、とりあえず、ジョシュアを抱きかかえて会場に戻ることにした私。
(だいたい、なんで我が家のパーティーで婚約解消の話なんてしてるのよ……)
令嬢の方はそれだけ我慢ならなくなったということなのだろうけれど。
だけど、あの暫定カス男が本当に婚約者を蔑ろにして節操なしに令嬢たちに手を出しまくっているというなら、それはそれで許せない。
「それにしても───我が家のパーティーでも堂々と浮気……ね。ジョシュア、そんな男を見つけるなんてあなたの嗅覚はどうなってるの?」
「あうあ!」
会場に戻りながら訊ねるとニパッ! とした笑顔を返された。
「……ホホホ、無邪気に見えて実は邪気だらけなその可愛い笑顔が怖いわぁ」
「あうあ!」
そして、この時の私。
移り気で色々なことに興味津々なベビーはカス男の存在よりも、プレイボーイのことばかり気になっていて、実は途中から会話が全く成立していないとは思ってもいなかった───……
182
あなたにおすすめの小説
婚約破棄?いいですよ。ですが、次期王を決めるのは私ですので
水中 沈
恋愛
「コメット、今ここで君との婚約を破棄する!!」
建国記念パーティーの最中、私の婚約者であり、第一王子のエドワードは人目も気にせずに大声でそう言った。
彼の腕には伯爵令嬢、モニカがべったりとくっついている。
婚約破棄の理由を問うと、モニカを苛めた悪女と結婚する気は無い。俺は真実の愛を見つけたのだ!とのたまった。
「婚約破棄ですか。別に構いませんよ」
私はあっさりと婚約破棄を了承し、書類にサインをする。
(でもいいのかしら?私と婚約破棄をするってことはそういう事なんだけれど。
まあ、本人は真実の愛とやらを見つけたみたいだし…引き留める理由も無いわ)
婚約破棄から数日後。
第二王子との結婚が決まった私の元にエドワードが鬼の形相でやって来る。
「この悪女め何をした!父上が弟を次期王にすると言い出すなんて!!
お前が父上に良からぬことを吹き込んだだろう!!」
唾をまき散らし叫ぶ彼に冷めた声で言葉を返す。
「まさか。
エドワード様、ご存じないのですか?次期王を決めるのは私ですよ」
王座がいらない程焦がれる、真実の愛を見つけたんでしょう?どうぞお幸せに。
真実の愛(笑)の為に全てを失った馬鹿王子にざまぁする話です。
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
『婚約破棄されたので玉座から降りました。――理で王国をざまあします
ふわふわ
恋愛
王太子から突然の婚約破棄を告げられた公爵令嬢。
社交界の中心で恥をかかされ、次期王妃の座を奪われた――はずだった。
けれど彼女は泣かなかった。怒鳴らなかった。復讐を誓いもしなかった。
「玉座は、座るより設計したほうが面白いですわ」
そう言って一歩退いた彼女は、王妃教育制度を立ち上げ、王と王妃を“育てる側”へと回る。
感情で動く王太子は、やがて理を学び始める。
新たに選ばれた王妃候補は、責任と孤独を知りながら成長していく。
武力でも陰謀でもない。
透明性と制度、そして対話で国を立て直していく静かな逆転劇。
婚約破棄で笑った者たちは、気づけば彼女の作った仕組みの中で頭を下げていた。
これは復讐ではない。
これは成熟。
選ばれなかった令嬢が、王国そのものを進化させる物語。
婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?
無色
恋愛
子爵令嬢のディーカは、衆目の中で婚約破棄を告げられる。
身分差を理由に見下されながらも、彼女は淡々と受け入れようとするが、その時ドレスが破れ、隠していた自慢のそれが解き放たれてしまう。
「お前を愛する者などいない」と笑われた夜、私は“本物の王子”に拾われた
波依 沙枝
恋愛
侯爵令嬢セレスティアは、第二王子リヒトの婚約者だった。
彼に愛されていると信じ、どれほど冷たくされても、気まぐれに与えられる優しい言葉だけを支えに、隣に立ち続けてきた。
――しかしある夜、彼女は見てしまう。
婚約者が、知らない女を抱きながら、自分を嘲笑っているところを。
「お前みたいな女を愛する者などいない」
絶望の中で崩れ落ちた彼女に、ひとりの男が手を差し伸べた。
「――助けるのは、私でもいいかな」
それは、かつて彼女の孤独に寄り添ってくれた、“本当の王子”だった。
これは、愛されなかったはずの侯爵令嬢が、
本物の王子に見出され、溺愛され、
そして彼女を捨て、嘲笑った婚約者が、すべてを失って後悔するまでの物語。
今さら縋りついても、もう遅い。
彼女はもう、“選ばれる側”ではなく、“選ぶ側”なのだから。
義兄のために私ができること
しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。
しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。
入り婿である義兄はどこまで知っている?
姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。
伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。
幼馴染を選んで婚約者を追放した旦那様。しかしその後大変なことになっているようです
睡蓮
恋愛
レーベット侯爵は自身の婚約者として、一目ぼれしたミリアの事を受け入れていた。しかしレーベットはその後、自身の幼馴染であるリナリーの事ばかりを偏愛し、ミリアの事を冷遇し始める。そんな日々が繰り返されたのち、ついにレーベットはミリアのことを婚約破棄することを決める。もう戻れないところまで来てしまったレーベットは、その後大きな後悔をすることとなるのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる