最恐家族は本日も無双中 ~ギルモア家と愉快な人々~

Rohdea

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ギルモア家と愉快な人々の日常

カスとの遭遇①【ガーネット】

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「あうあ~~!」

 その日、珍しくジョシュアは外───それも公園で遊びたいと言い出した。

「は? 公園で?」
「ああ。ポカポカ日和。こんな日はお外で遊ぶです、とジョシュアが言っている」
「……公園」 

 私はじっとジョシュアの顔を見下ろした。  

「あうあ!」

 ニパッと満面の笑みを浮かべるジョシュア。
 公園と言ったら“あそこ”しか思い浮かばない。
 ジョルジュと幼いジョエルと出かけた時、公園に到着するなりジョエルが無言で追いかけっこをスタートし、これまたジョルジュが無言でそれを追いかけ……振り返ったら誰も居なかった。
 そう!
 この私を一人置き去りにしたあの公園!
 そして……

「ジョエルたち四人が、まだハイハイしか出来ないベビーのジョシュアあなたも連れてダブルデートした時のあの公園かしら?」
「あうあ!」

 ニパッ!

「ホホホホホ……ジョシュア? あなた自分があの公園で何したか覚えてる?」 
「───いっぱい走ったです! と胸を張ってるぞ」
「脱走と言いなさいよ……」

 今よりも幼くハイハイベビーだったジョシュアは、エドゥアルトとレティーシャさんの仲を深めるために行ったデートに何故か意気揚々と参戦。
 その結果 ハイハイで公園を駆け回った。
 最初に気付いて追いかけていたジョエルがどうにか捕まえても、何度もスルリと脱走しては追いかけっこを繰り返していたと聞いた。

「あうあ!」
「それからお花がキレーでした! と言ってる」
「え? ああ、そうね」
   
 確かにあそこの庭園の花は綺麗。

「あうあ!」
「───おかーさまにも見せたかったのに、その時はおかーさまが迷子になってたです! だそうだ」
「……」

(コイツ!)

 自分の迷子体質を棚に上げてやがる……!
 聞いた話によると、セアラさん、エドゥアルト、レティーシャさんたちは必死に迷子体質のジョエルとジョシュアを捜索していたというのに!

(でも……)

 ジョシュアを追いかけていたレティーシャさんは、なんとその公園で婚約していたカス男の浮気現場に遭遇。
 そんなレティーシャさんを守った(?)のもジョシュアなのよね。
 確か、無邪気(に見える)笑顔で地面の土を投げつけ、浮気デート中のカス男と女狐をドロドロにしてやったとか……
  
「あうあ~」
「そして、おねーさんを苦しめてたカス男と会ったです~か。ほう、ジョシュアはちゃんとそのことも覚えてるんだな」
「あうあ」

 ───とーぜんです!

 ジョルジュが感心したように唸ると、ジョシュアはエヘンッと得意そうに胸を張った。

「あうあ!」
「ふむ。あのときのボクはおばーさまの教え、“使えるものはなんでも使え”を実行したです!」
「ホホホ……それで“可愛い僕”を利用して笑顔で土を投げつけるって、今聞いてもえげつないわぁ……」

 苦しんでいたレティーシャさんのことを思えば、よくやった! とは思っているし、もちろん、無邪気なベビーだからこそ出来たこと。
 でも、それを計算してやっていたジョシュアの恐ろしさよ……

「あうあ~」   
「カス男をメロメロにしたです~と言っている」
「……」

 今思えば、ジョシュアお得意の“可愛い僕”はこれで味をしめたのかもしれない。

「で? 今回は私たちとその公園に行こうと言ってるわけ?」
「あうあ!」
「ほう、前に遊んだ時は俺たちやアイラは居なかったから、か」
「あうあ!」
  
 ニパッ!  

「アイラにもキレイなお花見せるです、か」

 こうして私たちは久しぶりに公園へと遊びに行くことになった───




「あうあ~」
「……ぅぁ」

 馬車から降りるとベビー二人が声を上げた。

(よし、ここからはがっちり手を掴んでおくわよ……)

 私たちを乗せた馬車は無事に公園に到着。
 今回のメンバーは私とジョルジュとジョシュアとアイラ。
 一人でも迷子が誕生した瞬間、確実に詰むしかない恐ろしいメンバー構成。
 絶対に誰一人として欠けさせてはいけない使命が私にはある!

(特にこの馬車を降りた瞬間が大事……)

 過去の経験からいうとこの時に油断してしまうと、その隙をついて脱走する。
 そして盛大な追いかけっこが開始される……

「あうあ~」

 ニコニコしながら辺りをキョロキョロするジョシュア。
 私は繋いでる手をギュッと握りしめた。

「あうあ」
「ホホホ、ジョシュア。いいこと? 私とのこの手を離したらお仕置よ?」
「あうあ~」
「……」

 ───おしおき、たのしみです~

(って言われた気がするけど……気のせい、よね?)

「ぅぁ~」

 一方のアイラもジョルジュの腕に抱かれて周囲をキョロキョロ。
 普段、ジョルジュの土いじりを手伝っているので花には興味があるのか、アイラは“綺麗なお花がたくさんある”と聞いて“自分も行く”と即答していた。

「そうだアイラ。あっちがこの公園の庭園だ」
「ぅぁ」
「薔薇がとても綺麗だぞ」
「……ぅぁ」

(ふふん、アイラも大丈夫そうね!)

「ほう、いつか殿方とのお出かけで来たいですわ? ───そうか。それは…………とりあえずジョエルが聞いたら号泣しそうな発言だな」
「……ぅぁ」

 ───……では、おとーさまにそう言ってみます。

(アイラ……いい性格してるわぁ)

 でも、あのジョエルが号泣する姿はちょっと見てみたい……

「あうあ!」
「え、なに? ……こら!」 
「あうあ!」

 私が号泣するジョエルを想像してフッと笑った瞬間、ここで走り出そうとでも思ったのか、ジョシュアが動いた。
 私は慌てて手に力を込める。

「ホ~ホッホッホッ! 甘いわ! 油断していつものようにホイホイ逃げられる私ではなくってよ!」
「あうあ~」
「安心なさい、あなたが行きたがってる庭園にはちゃんと行ってあげるから」
「あうあ」
「さあ、行くわよ! ジョルジュとアイラも着いてきなさい!」

 そう高らかに笑いながら、私たちはゆっくり歩き出したのだけど……
  
「あうあ~~」
「こら、ジョシュア!」

 ニパッ!   

「あうあ~~!」
「あ、ちょっ…………ジョシュア!!」
「あうあ」
  
 ニパッ!
 油断するとすぐにでも私の手を振りきって走り出そうとするジョシュア。
 おかげで私は何度も何度もつんのめった。

「ジョルジュ! ジョシュアはなんて?」
「あそこにキレイなお花が咲いてるです~、今、ちょうちょが飛んでたです~~ってはしゃいでたが」
「…………好奇心旺盛すぎでしょ」

 ハァハァと肩で息をしながら私は呆れる。

「それに比べて───不気味なほどアイラは静かね?」
「…………ぅ」

 ジョルジュの腕の中に収まっているアイラに視線を送るとパチッと目が合った。

 ───今のところ、素敵な殿方はいませんわね

「は?」 
  
 私はアイラの発言に目を丸くする。
 この子は何を言い出したの?

「……ぅぁ」
「お兄様から、公園とは綺麗なお花が見られるだけではなく、“きれいなおねえさんやかっこいいおにいさん”もたくさん来る場所だと聞いたぁ!?」
「ぅぁ」
「ですから、目の保養に来ましたのに────って、ジョシュアァァア!?」
「あうあ!」

 私が叫ぶとジョシュアはニパッと笑い返して来た。

「───アイラの好みは、渋くてかっこよくてシュッとスリムな男です! だそうだ」
「そんなこと聞いてないわよ!」
「あうあ」
「───大事なことです、アイラは天使ですから、と言ってるぞ」
「こっの、シスコンめ!」

 なんて私がジョシュアに怒鳴った時だった。

「────あうあ!」 

 突然、ジョシュアがピクッとなにか・・・に反応し周囲をキョロキョロし始めた。

(何かしら、この既視感……)

 前にも……いえ、つい最近もこんなことしてなかった?

「な、なによ?」
「あうあ、あうあ!」

 ジョシュアがグイグイと強く私の手を引っ張る。

「ちょっ、ジョシュア……」
「あうあ!」

 そんなジョシュアの目線は、少し先を歩いているカップルに向けられていた。

「なによ? あの人たちがどうかし……」

 そこで私はハッと気付く。

(あのカップルの男の方ってもしかして────……)

「───え、ダレン様、あの人にそんな酷いこと言われたんですか?」
「ああ、びっくりだよ……」

 令嬢の言葉に合わせて苦しそうな顔をする男性。
  
「本当にとことん酷い女ですわね……ダレン様がお可哀想。許せません!」

 傍らの令嬢は男性のことを慰めながらそう怒り出した。

「───あうあ!」

 ジョシュアの声でハッと我に返った。
 私はじっと視線を下ろしてジョシュアを見つめる。

「ジョシュア……あなた」

(まさか、今日に限ってお外で遊ぼうと言い出したのはここで遭遇出来ると思って……?)

「あうあ!」

 ───真っ黒のカス男おにいさん見つけたです! (訳:ジョルジュ)

 顔を上げたジョシュアはニパッと笑った。



※ガーネットを置き去りにしたジョルジュとジョエルの話は『誕生日当日~(ヤケ酒)』
 ハイハイを駆使するベビージョシュアの活躍(?)は『記念日当日~』のエピソードです。
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