最恐家族は本日も無双中 ~ギルモア家と愉快な人々~

Rohdea

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番外編~成長後~

14. お茶会という名の……

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「それじゃ、ナターシャの所に行ってくるね~」

 そうして翌日。
 昼食を終えたジョシュアはニパッと笑って屋敷を出て行った。

(ホーホッホッホッ! …………本気、なのね) 

 女心を学ぶため。
 自身の“愛でる会”のメンバーを呼んでお茶会を開くと宣言したジョシュア。

「ん? ジョシュアは出かけたのか?」

 馬車に乗り込むジョシュアの後ろ姿を玄関から見守っていると、ちょうどスコップを手にしたジョルジュが通りがかった。
 日課の庭いじりを終えたところらしい。

「ええ。ナターシャにお茶会の開催についての話をしに行くみたい」
「ああ、昨日の話か」
「変にこじれないといいんだけど」

(ナターシャ……) 

 そもそも、ジョシュアはお茶会を開催する理由をちゃんと説明出来るのかしら?
 ナターシャは普段は冷静な子なのに、憎い相手ジョシュアが絡むと一気に頭に血が上って突っ走る傾向がある……

「……ギルモア家の男ってジョルジュ筆頭にズレまくりなんだもの。突っ込み役も大変よねぇ……」
「何か言ったか?」
「ホホホ、何でもないわ~」

 私は笑って誤魔化した。

(まあ、私は見守るしかないわよね────……)




「あなたは阿呆なんですの!?    って怒られました~~」

 ニパッ!
 夕方になってジョシュアは嬉しそうに笑って帰って来た。

(コイツ……!)

 満面の笑顔で報告してくるジョシュアに私も顔をひきつらせる。

「ジョシュア、あなたちゃんとナターシャに理由を説明した?」
「もちろんです!」

 ジョシュアはどーんと胸を張った。

「僕は女心を学ばないといけません。だからお茶会開くよって」
「……そう、それで?」
「え?」
「え」  

 私がその先を促すと何故かジョシュアはキョトンとした。

(コイツ……!)

 ニパニパしていても、さすがギルモア家の血を引いた男。
 圧倒的に説明が足りていない……
 そりゃ、ナターシャも何を言ってるのかと怒るわ。

「でもね、開催はすることになりました~」
「なんで!?」

 本気で驚いた。
 怒らせたナターシャをジョシュアが説得出来たの?
 信じられない……

「えっとね、今、ナターシャは“会長”さんとして会員の顔ぶれのチェックをしてる所なんだって」
「会員のチェック?」
「うん。やっべぇ奴がいないか調べるのは基本中の基本ですわよ! って怒られた」

(めちゃくちゃ仕事始めてる……)

 会長職は押し付けられたようなものなのに……

「それで……男も女も下は幼児から上は人生の大先輩まで誑かして───この節操なし! って怒られました」
「…………下は幼児からなの?」
「うん。僕も知らなかった!」

 微笑みの貴公子のファン、思っていたより幅が広すぎる……

「それで───男性会員はどうするんですの? って聞かれたからもちろん招待するよ! って言ったら……ナターシャ、いっぱい笑ってた!」
「ホホホ、それは笑うわ……」

 まあ、楽しくて笑ってたわけじゃないと思うけど。

「それでナターシャ、しばらくの間さ、ふっふっふっふっふっふって笑ってたんだけど」
「……長いわね」
「笑い終えたら────でも、これはチャーンス! ここでジョシュアの本性を皆に見せればいいんですわぁって目をキラキラさせて。どういう意味かなぁ?」
「…………あなたは知らなくていいと思うわ」

 私はナターシャの気持ちが手に取るように分かりすぎてホホホと笑った。

「ナターシャは時々、難しいことを言うよね」

 ジョシュアはジョルジュと同じような顔で同じようなセリフを口にする。

「……本当にあなたってジョルジュの孫だわ」
「!」

 そんな私の呟きを拾ったジョシュアが嬉しそうに笑って、また胸を張った。

「当然です! 僕はギルモア家の男ですから!」
「そうなんだけどねぇ……」
「おばあ様?」
「まあいいわ……とりあえず、お茶会の開催は決定したのね?」
「はい!」

 ジョシュアはニパッと笑って大きく頷いた。



 そして翌日。
 ナターシャが寝不足の顔で我が家を訪ねて来た。

「会員……とにかく会員が多すぎますのよ」 
「そうなの?」

 ニパッ! と笑いかけ、疲れ切ったナターシャを労い頭を撫でるジョシュア。
 ナターシャは手を払い除けて憤る。

「笑ってる場合ではありませんわ! これはさすがに全員に声をかけるわけにはいきません!」
「そっかぁ」   
「声をかけてご覧なさい……王家主催並のパーティーが開けますわよ……」

 ナターシャが頭を抱えた。

「ほっほっほ! 我が家のお抱えの絵師にジョシュアの姿絵をたくさん書かせて売りさばいたなら、わたくし、がっぽり稼げそうですわぁ……」

(ナターシャ……)

 我が家に舞い込むジョシュア宛の手紙の数からいってそれなりに多いとは思っていたけれど……
 同席して話を聞いていた私も気になったので訊ねてみる。

「そんなに多いの?」
「はい。ガーネットおばあさま。元々は女性中心だったようですが、男性の会員が増えたことから更に社交界での噂が広まりまして」
「ああ、なるほど」
「そして実際にジョシュアを見かけた際にニパッと微笑まれて───」
「やられちゃうのね?」

 ナターシャはコクリと頷いた。

「アイラお姉さまのことも同じような流れで慕う方が多数いるのですが、ジョシュアの場合は」
「場合は?」
「ベビーの頃から、という方も多いのですわ」
「あーー……」

 私の脳裏に、あうあ~という声が響く。
 やはり、あのベビーの頃の可愛さにメロメロになった人が多いみたい。

「つまり……みんなベビーの頃から僕を見守ってくれているんだね! 嬉しいや~」

 ジョシュアがパンッと手を叩いて嬉しそうな声をあげる。
 そんなジョシュアをキッと睨みつけるナターシャ。

「…………わたくし、一度でいいからあなたの脳内がどうなってるのか見てみたいですわ」
「僕の?」
「ええ。とてもとても綺麗なお花畑が広がってると思うんですの」

(ホッホッホ! 言うわねぇ~~)

 ナターシャがチクリとジョシュアに嫌味を言う。
 その姿に私は感心した。
 しかし……

「そっかぁ! 僕、お花を植えるの好きだから綺麗なお花が咲いてそうだよね!」
「……っ! そう、ですわ……ね」

 残念ながらジョシュアに嫌味は通じなかった。

「コホンッ……とにかく今回のお茶会とやらは年齢層を絞って開催する必要がありますわ。ジョシュア、希望はありまして?」
「うーん、じゃあ僕と同じくらいの年齢の人たちがいいかな」
「わたくしたちと?」

 ナターシャが顔を曇らせた。

(気持ちは分かるわ~)

 同じ年頃の令嬢たちを呼ぶということは、ジョシュアの婚約者の座を狙う肉食系令嬢が多く参加することが予想される。
 ナターシャは、はぁ……と深いため息を吐いた。

「ジョシュア。あなた、女心を学ぶとか言ってましたけど、本当の所は年頃の令嬢たちを弄び……」
「ほらだって歳の近い人が多い方が、アイラもナターシャも話しやすいし楽しいでしょ?」
「は、い? わたくし?」

 驚いた顔をするナターシャに向かってニパッ! っとジョシュアが笑う。

「うん! ナターシャは普段、稽古、稽古、稽古ばっかりだし、アイラも滅多に外に出ないからさ、二人とも歳の近い人たちとあんまり遊んでないでしょ?」
「……!」
「だから、アイラもナターシャもここお茶会でいっぱいお友達が出来るといいよね!」
「~~~~っっ」

(あーー……ナターシャ)

 ニパッ!
 ジョシュアの無自覚天然攻撃にナターシャは両手で顔を覆ってその場に蹲ってしまった。


─────


 そうして、ナターシャの奮闘によりお茶会が開催が無事に決定し、その日を迎えた。

(……のだけど)

 私は集まった顔ぶれを見ながらうーんと首を捻った。

 ───まさか、ギルモア家でお茶会が開催されるなんて!
 ───さすが、会長がいると違いますわね
 ───父親にくれぐれも粗相のないようにって言われちゃったよ……
 ───俺も! まだ、人生終えたくないからって。

「難しい顔をしてどうしたんだ? ガーネット」
「え、あ、ジョルジュ……」

 ジョルジュがひょいっとお茶会の部屋を覗き込んだ。

「ほう、厳選したと聞いたが結構集まったな!」
「それは、そうなんだけど……」

 ───ジョシュア様と間近でお話出来るチャンスよ!
 ───握手してもらえるかしら?
 ───俺はニパッて、微笑んでもらいたいな~

「どうした? 皆、ジョシュアの話をしていてワイワイ楽しそうだぞ?」
「だから、そうなんだけど……」
「?」

 私の反応に不思議そうな顔をするジョルジュ。

「なんていうのかしらね……」
「ああ」
「ちょっと特殊性癖を持った人たちの普通のお茶会といえばお茶会の様子なんだけど」
「……普通か?」
「……」

 ジョルジュの口にした疑問には答えずに流し、参加者の様子に耳を澄ませる。

 ───すごい。こんなに話が合う人初めてだ! どうかな今度二人で僕とジョシュア様についてもっと語り合ってみない?
 ───え! それってデート……? 嬉しい! ぜひ!

(どんなデートよ!?)

 ───え、婚約者に浮気されて捨てられたばかり? 私も前にそんなことがあったわ。こういう時はジョシュア様の笑顔を思い出して新しい恋を探しましょうよ!
 ───君も? あ、ありがとう……!

(ジョシュアの笑顔で失恋が癒えるの!?)


 あちこちで繰り広げられるそんなぶっ飛んだ会話を聞いていたらこの会が、
 お茶会という名の───
 ジョシュアとナターシャプロデュースによる単なる“お年頃”の令息と令嬢の“集団お見合いの場”にしか思えなくなってしまった。
 
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