最恐家族は本日も無双中 ~ギルモア家と愉快な人々~

Rohdea

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毎日、微笑みの貴公子をボッコボコにしたいと企んでいる公爵令嬢ですが【ナターシャ】

8. 仲良しです

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エドマンド(弟)視点です

✲✲✲✲✲


(うーん、やっぱりどう見ても“仲良し”だと思うんだけどなぁ)

 本日“デート”をすることになった姉さまとジョシュア兄さまが仲良く手を繋いで馬車に乗り込んでいきました。
 そんな二人の姿を僕、エドマンドは静かに見守っています。

「はっはっは! ナターシャはジョシュアと楽しそうに馬車に乗り込んだな」

 僕の横に立っている父さまが二人を見ながら陽気に笑いました。
 今日も底抜けに明るい父さまです。

「大丈夫かしら……」

 一方、母さまはハラハラ心配そうな様子です。 
 そんな母さまの様子を見た父さまが不思議そうに訊ねました。

「レティーシャ、大丈夫とは? ナターシャは今日もとっても可愛いぞ!」
「ええ、ナターシャは可愛いですけど……だって出かける相手がジョシュアくんなんですもの」
「それがどうかしたのか?」

 父さまが不思議そうに首を傾げると母さまは言いました。

「ほら、ナターシャってジョシュアくんが絡むと昔から暴走しがちで……」 
「大丈夫だ、心配要らない! 踏まれるのも殴られるのも引きずられるのもジョシュアにとっては全てご褒美だからな!」

 しかし、はっはっはと父さまは笑い飛ばします。

(うん、確かにジョシュアお兄さまは上級者だ……)

 僕はベビーの頃から姉さまがジョシュア兄さまに突進していく姿をずっと見ていました。
 しかし、そんな姉さまの攻撃は全てあのニパッという無敵な笑顔と“あうあ”という言葉の前に敗北。
 だから、姉さまは“いつかジョシュアをこの手でギャフンと言わせてみせますわ”を合言葉に己を鍛えメキメキ強くなっていきました。

「それはそうなのですけど」

 ハァと息を吐く母さま。
 それでも心配そうです。

「とにかく、僕とエドマンドは変装してこのままナターシャとジョシュアの護衛に向かう。準備は万端か? エドマンド」
「は、はい!」

 僕が頷くと父さまは頭のてっぺんから爪先まで眺めて、はっはっは! と笑いました。

「服装はそれで良いだろう。あとはアレを被れば完璧だ! ナンシー!」

 軽やかに笑った父さまがナンシーを呼びつけました。
 ナンシーはコックス公爵家に長く仕えてくれている使用人です。

「はいはーい、坊っちゃまこちらです。今日はどれになさいますか?」

 呼び出しに答えたナンシーが父さまのコレクションのカツラを手に素早く登場しました。
 流石です。

「うーん、そうだな」

 父さまはナンシーが持って来たカツラを前にうーんと悩み始めました。

「坊っちゃま! 今日はナターシャお嬢様とあのジョシュア・ギルモアのデートを尾行されるのですよね?」
「ああ」

(尾行じゃなくて護衛なんじゃないのかなぁ?)

「ああ、なんて愉快で面白そ…………ゴホンッ、ならば今日のオススメはこちらですね~、そして若坊っちゃまにはこちらが最適かと思いますよ!」

 ナンシーはにっこりと笑って落ち着いた髪色のカツラをオススメだと言って僕に渡してくれました。

(なんか今、ナンシーの本音がダダ漏れていたような……)

 気のせいかな?

「ふむ。いつもより地味だが、今日は僕がナターシャより目立つわけにはいかないからな! よし、これにしよう!」
「で、では僕もこちらを」

 父さまがナンシーのオススメのカツラを手にしたので僕もそれに倣いました。
 今日のデートには姉さまをつけ回す不届き者を炙り出す目的があります。
 護衛の僕たちが目立ってはいけません。

「はっはっは! どうだ、レティーシャ!」

 カツラを被った父さまが母さまに似合うかと訊ねています。
 父さまの格好を見た母さまはクスッと笑いました。

「お似合いですけど、エドゥアルト様あなたの独特のオーラは…………消せませんわね」
「はっはっは。それは仕方がないさ。僕のこの溢れんばかりのオーラを消すのは至難の業だ」

 はっはっはと父さまは笑い飛ばしました。
 確かに父さまからドバドバ溢れている独特のオーラを消すのはカツラだけでは難しそうです。

「今日はジョエルの代わりにジョシュアのことも守らないといけないからな。気合いを入れねば。エドマンドも気を抜くな!」
「はい!」

 本日、ジョシュア兄さまの祖父、ギルモア侯爵と父親のジョエル様は留守番です。
 最初、二人は行く気満々だったようですが……

 ───はあ? ジョルジュとジョエルの捜索に人手をさくわけにはいかないでしょ! 迷子体質のあなたたちは留守番よ留守番!

 と、ガーネットおばあさまが強く禁止を言い渡したそうです。

「気をつけてくださいね? エドマンドも!」
「大丈夫です、母さま!」

 僕はどーんと胸を張ります。

「姉さまをつけ狙う最低な不届き者はギルモア家の庭に埋めてしまいましょう!」
「はっはっは! その意気だ、エドマンド!」

 こうして僕と父さまは他の護衛と共に姉さまのジョシュア兄さまのデートの後をつけました。


─────


「……っ、ジョシュア!」
「どうかした、ナターシャ?」
「……っっっ、な、んでもない、ですわ!」

 街に到着して馬車を降りた二人。
 手を繋いだまま歩き出しブラブラしています。
 姉さまがジョシュア兄さまに何が言いかけやめていました。

(今のは……)

 姉さまの視線的に、
 “いつまで手を繋いでいるんですの!”とか怒りたかったのだろうけれど、今日の目的を思い出して我に返った感じでしょうか。

「ナターシャ、知ってる? ナンシーが言ってたんだけど、こういう風に外でブラブラしながらかぶりつくお肉は美味しいんだって」
「は? お肉にかぶりつく? いえ、その前にあなたいつの間にナンシーと話したんですの?」

 怪訝そうな顔をする姉さまの問いかけにジョシュア兄さまがニパッと笑います。

「ナターシャと街に行くって言ったら目を輝かせて色々教えてくれたよ?」
「もう、ナンシーったらいつの間に」

 姉さまが驚いています。

「僕、今日のために色々な人に聞いて回ったんだ~!」

 ジョシュア兄さまが得意そうに胸を張ります。
 姉さまとのデートのためにたくさん勉強してきたようです。

「へぇ、そうでしたのね。他には何か言っていて?」
「えっとね、他にもフラフラしながら立ち寄ったお店でこっそりプレゼントを買っておいて、タイミングを見計らってナターシャに渡して驚かせると好感度が上昇しますよって」

(ええ、それ言っちゃうの!?)

 案の定、姉さまがスッと目を細めて黙り込みました。

「ナターシャ?」
「ジョシュア…………その計画、たった今破綻しましたわよ?」
「あ!」
「……」

 ジョシュア兄さまが、しまった~と言いながら口に手を当てています。
 そんなジョシュア兄さまのことを姉さまは白けた目で見ながら笑いました。

「ほっほっほ! 安心してくださいまし。わたくしのジョシュアへの好感度が変わることなどありませんわ」
「え、ナターシャ……それって」 
「もうあなたへの好感度は(下限に)振り切ってますもの」
「そうだよね! これ以上は上がらないよね~」

 ジョシュア兄さまが嬉しそうにニパッと笑いました。

「ええ、その通りですわ」
  
 姉さまが力強く頷きます。

(んん? …………会話、噛み合ってなかったような?)

 好感度が上昇することはないと言われて嬉しそうにするなんておかしくないかな?
 ですが、ジョシュア兄さまは、その辺の人とはひと味もふた味も違う感性を持っています。
 好感度が下がり切っていても嬉しいと感じるのかもしれません。

(ジョシュア兄さまは難しい人です……)

 でも、僕からするとアイラお姉さまも難しくて不思議な人です。
 そんな二人と渡り合えている姉さまってすごい人!
 僕はそんなことを思いながら、引き続き二人の様子を見守ります。

「そういえばジョシュア、あれから医師の診察は受けましたの?」
「うん。一応、診てもらったよ」

(おや? ジョシュア兄さま、どこか悪いのかな?)

 それは心配なので僕はそっと耳を澄ませました。

「なんて言われましたの?」
「えっと、僕たちくらいの年頃になるとよく出る症状なんだって。でも、気にするなって言われたよ」
「え? わたくしたちくらいのお年頃に多い病気なんですの?」

 姉さまが怪訝そうな表情になりました。
 憎いと口にしていても、なんだかんだでジョシュア兄さまのことが気になるようです。

「みたいだよ?」
「おそろしいですわ……」

(よく分かんないけど、確かに恐ろしそうです)

「あ、ナターシャ! ナンシーが言ってた外で食べられるお肉ってあのお店じゃないかな?」
「え、きゃっ!?」

 ここでジョシュア兄さまが目当てのお店を見つけたのか、姉さまをの手を強く引っ張ります。
 急に引っ張られて足がもつれた姉さまが、ジョシュア兄さまの胸の中に飛び込みました。

(これは……!)

「ナターシャ、大丈夫?」
「……っ、っっ、っっっっ」 
「ナターシャ?」

 二人の姿に思わずハッと僕は息を呑みました。
 姉さまがジョシュア兄さまの胸の中で顔を真っ赤にして固まっています!

(ラブラブ……これはラブラブです!!    ……ハッ!)

 美男美女が堂々と街中で抱き合う姿に思わず見惚れてうっとりしそうになりますが、慌てて周囲を見回します。
 だって姉さまに懸想する不届き者はどこからかこの様子を見ているかもしれませんから!

(うーん……)

 しかし、今のところ怪しい動きをしている人物は見当たりません。
 僕はガックリ肩を落とします。
 むしろ、僕とは別の所から二人を見張っている父さまの方がこの展開に挙動不審……な様子を見せています。

(父さま……耐えてください!)

 今にも飛び出して二人を引き離したそうな顔をしている父さまに念を送ったその時でした。

「ナターシャ……」
「!?」

(えええ!?)

 なんと!
 ジョシュア兄さまがギュッと腕に力を入れ、強く姉さまのことを抱きしめました!
 
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