【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして

Rohdea

文字の大きさ
2 / 37

2. 王太子殿下の婚約者候補の筆頭の私

しおりを挟む



  私は、リスティ・マゼランズ。
  マゼランズ公爵家の娘。

  この国の公爵家の子供の中で唯一の令嬢として、幼い頃からこの国の王子であるルフェルウス殿下の婚約者となるべく育てられて来たと言っても過言では無い私。

「リスティ。お前はいつか王妃になるんだ」
「殿下に相応しいのはリスティ様以外いませんわ」

  皆がみんなそう言う。
  どうして私?
  公爵家の娘だから??

  特に両親からの期待は大きく、同年代の子供より厳しく教育されてきた。

  私自身が王妃になりたいなんて望んだ事はないのに。
  正直に言わせてもらうなら、嫌なのに。

  (だって、王族だけ一夫多妻が許されている……)

  この国は一夫一妻なのに王族だけは例外。
  もちろん、認められているだけで一夫一妻を貫く王や王子もいる。その反面、大勢の側妃や愛人を侍らかしていたとんでもない王も過去には存在していた。

  もちろん、王族が例外となる理由も分かっているわ。
  分かっているのだけど……

  (それでも私は私だけを愛してくれる人がいい……)

  でも、私はマゼランズ公爵家の娘だから。公爵家にとって必要な所に嫁がされる。
  それも理解している。
  そして、分かりきった事だけれど、お父様は王家との縁を昔から強く望んでいた。




  そんな私が王太子殿下……ルフェルウス様の婚約者となったのは、今から約1年前。




  学園入学前の15歳の時に、侯爵以上の爵位を持つ年頃の令嬢達が王宮に集められてお茶会が開かれた。
  その目的は誰が見ても聞いても明らかで……
  ルフェルウス殿下の妃候補を集めたお茶会だと分かるものだった。

「いいか、リスティ。これは王太子妃を決める為に設けられた場だ」
「……」
「公爵家の娘はお前だけ!  つまり集まった令嬢達の中での一番はお前だ!  他の令嬢には絶対に負けてはならん!  特に、あのオコランド侯爵令嬢にはな!」
「!」

  オコランド侯爵家は我が家とは犬猿の仲だ。 
  とにかく当主同士が仲が悪い。昔、お父様達の間で何かあったらしいのだけれど、詳しい事はよく知らない。
  そのせいか、あそこの侯爵令嬢ミュゼット様と私は昔からよく比べられて来た。
  私を見る目がいつも敵意むき出しなので、おそらく彼女もそうだと思われる。
  そして、彼女が将来の王妃はわたくしよ!  と、よく口にしているというのは有名な話だった。

  (負けるな……そう言われても困るわ……)

  だって、私は出来れば王族には嫁ぎたくないんだもの。

  まだ、15歳の私は社交界デビュー前なのでルフェルウス殿下と直接会って話をした事はない。
  彼の事は噂でしか知らない。
  だから、彼が多くの女性を侍らかすようなとんでもない人かどうかなんて知らない。だから、勝手に決めつけてしまうのは良くないけれど、それでも“王族”というだけで、私の心が拒否を示してしまう。

  (それでもこのお茶会を避ける事は許されない……)

  
  そうして、私は渋々そのお茶会に参加した。




*****




  (あぁ、帰りたい……)


  お茶会が始まってすぐに私はそんな気持ちにさせられた。
  何が嫌って、もう参加している令嬢達のギラギラした目付きに私はどうしても着いて行けない。
  全員が全員そうでなくても、やはり殿下の妃になりたいと思って集まっている。

  (私を見て!  アピールが凄いわ)

  着飾り方もそうだけれど、お茶会にはそぐわないのでは?  と思わず言いたくなる装いや、キツすぎる香水の匂いに頭がクラクラして来た。
  せっかくの美味しいお茶もこれでは台無しだ。

  (殿下はまだ来ていないし、少しくらい抜けても大丈夫かしら?)

  私はそっとお茶会の会場となっている中庭を抜け出し、もう少し奥へと行ってみる事にした。




「んー、すっきり!」

  (ここまで来れば、気持ち悪い匂いも気にならなくなるわね)

「あら……?」

  庭の奥へ奥へと進んだ私はそこにバラ園のような場所を見つけた。

「こんな奥にバラ園が?」

  不思議に思ってそこに近付こうとした時だった。

「誰だ!  そこは関係者以外は立ち入り禁止だぞ!!」
「……ひっ!」

  後ろから声をかけられてビクッと私の肩が大きく跳ねる。
  おそるおそる振り返ると、そこに居たのは金髪碧眼の私とそう歳の変わらないように見える男性。
  誰!?  そう思ったものの……

  (王宮のこんな場所でウロウロ出来る、この年頃の男性と言えば……)

  私は一人しか知らない。

  ───ルフェルウス・シュトラール王太子殿下。その人だ。

  私の背中にヒヤリとした冷たいものが流れた気がした。






  これが、後に私をこれでもかと溺愛してくる王太子殿下……
  ルー様と私、リスティの初めての出会いだった。

しおりを挟む
感想 250

あなたにおすすめの小説

【本編完結】笑顔で離縁してください 〜貴方に恋をしてました〜

桜夜
恋愛
「旦那様、私と離縁してください!」 私は今までに見せたことがないような笑顔で旦那様に離縁を申し出た……。 私はアルメニア王国の第三王女でした。私には二人のお姉様がいます。一番目のエリーお姉様は頭脳明晰でお優しく、何をするにも完璧なお姉様でした。二番目のウルルお姉様はとても美しく皆の憧れの的で、ご結婚をされた今では社交界の女性達をまとめております。では三番目の私は……。 王族では国が豊かになると噂される瞳の色を持った平凡な女でした… そんな私の旦那様は騎士団長をしており女性からも人気のある公爵家の三男の方でした……。 平凡な私が彼の方の隣にいてもいいのでしょうか? なので離縁させていただけませんか? 旦那様も離縁した方が嬉しいですよね?だって……。 *小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

[異世界恋愛短編集]お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?

石河 翠
恋愛
公爵令嬢レイラは、王太子の婚約者である。しかし王太子は男爵令嬢にうつつをぬかして、彼女のことを「悪役令嬢」と敵視する。さらに妃教育という名目で離宮に幽閉されてしまった。 面倒な仕事を王太子から押し付けられたレイラは、やがて王族をはじめとする国の要人たちから誰にも言えない愚痴や秘密を打ち明けられるようになる。 そんなレイラの唯一の楽しみは、離宮の庭にある東屋でお茶をすること。ある時からお茶の時間に雨が降ると、顔馴染みの文官が雨宿りにやってくるようになって……。 どんな理不尽にも静かに耐えていたヒロインと、そんなヒロインの笑顔を見るためならどんな努力も惜しまないヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 「お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?」、その他5篇の異世界恋愛短編集です。 この作品は、他サイトにも投稿しております。表紙は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:32749945)をおかりしております。

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

【完結】イアンとオリエの恋   ずっと貴方が好きでした。 

たろ
恋愛
この話は 【そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします】の主人公二人のその後です。 イアンとオリエの恋の話の続きです。 【今夜さよならをします】の番外編で書いたものを削除して編集してさらに最後、数話新しい話を書き足しました。 二人のじれったい恋。諦めるのかやり直すのか。 悩みながらもまた二人は………

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

ありがとうございました。さようなら
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

【完】貴方達が出ていかないと言うのなら、私が出て行きます!その後の事は知りませんからね

さこの
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者は伯爵家の次男、ジェラール様。 私の家は侯爵家で男児がいないから家を継ぐのは私です。お婿さんに来てもらい、侯爵家を未来へ繋いでいく、そう思っていました。 全17話です。 執筆済みなので完結保証( ̇ᵕ​ ̇ ) ホットランキングに入りました。ありがとうございますペコリ(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+* 2021/10/04

幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!

ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。 同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。 そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。 あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。 「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」 その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。 そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。 正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

処理中です...