【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして

Rohdea

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後日談・リスティの暴走 ~お仕置きは甘い夜?~

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  早いものでピンクが巻き起こしたお披露目パーティーから数ヶ月が経った。

「リスティ」
「ルー様!」

  そして今夜も、ルー様ことルフェルウス様は私の部屋を訪ねて来る。

「あぁ、リスティだ。リスティの温もり……」
「何ですか、それ?」

  ギューッと私を抱きしめるルフェルウス様に私が聞き返すと、

「ただひたすら愛しい私のリスティを堪能している」

  と、真顔で返された。
  相変わらず甘い言葉に慣れない私は、すぐに顔が赤くなってしまう。
  そんな私を見たルフェルウス様は、ますます「可愛い!」と言って私を襲……愛でてくる。


  そんなドキドキしつつも穏やかな日々。

  (幸せ……)

  そんなささやかな幸せを噛み締めていたらルフェルウス様がそっと私の髪を手に取った。

「……髪、少し伸びたな」
「そうですね、昔みたいな長さにするにはまだまだですけど」
「……」
「ルー様?」

  何故か私の髪を手に取ったまま黙り込んでしまった。
  なにか問題でもあったかしら……と私が心配していたらルフェルウス様はまたしても真顔で言う。

「長いリスティもいいが、短いリスティも捨て難い。なんて悩ましいんだ!?」
「……」

  ……カツラでも用意しましょうか?
  そんな言葉が口から出そうになったけれど、違う。
  ルフェルウス様が言いたいのはきっとそういう事ではない……はず!

  (私だって男心を勉強したんだから!)

「あのね、ルー様!  あ、…………んっ」

  ルフェルウス様の顔が近付いて来たと思ったらあっという間に唇を奪われた。

  チュッチュと何度も何度もキスをされて私の頭の中がデロデロに溶かされて来た頃、ルフェルウス様の唇がそっと離れる。

  (あ、もっと……)

  そんな気持ちになって声をかけた。

「ルー様……もっ」

  ───あれ?

  いつもならこのまま、もっと顔中にキスをしてくれたり、何ならガウンを脱がせて身体に触れてくれるのに。
  何故か今日のルフェルウス様はそのまま止まってしまった。

  しかも!

「それじゃ、リスティ……おやすみ。良い夢を」

  と、身体を離してしまう!

「え?  えぇ……ルー様も」
「うん」

  そう言って軽いキスを落としてそのまま部屋から出て行ってしまった。



「……えぇ!?」

  (どうしてなの?  ……私、何かしてしまった??)

  さっきまでは甘い甘いキスをたくさんくれたのに!!
  何故、いつもみたいに、たくさん触れてくれないの!?
  自分が粗相でもしてしまったのかと一気に不安になった。
  そこで、私はハッと思い出す。

  (そうよ……!)

  メイド達は言っていたわ。
  男なんていつも身体を許してるとそのうち飽きて来てしまって余り手を出さなくなるのよ……と。

  (身体を許すって何?  とは思ったけれど……きっとこのイチャイチャの事よね?  まさか、ルフェルウス様は毎日私とイチャイチャし過ぎて私に飽きてしまったの……?)

  妃は私だけと言ってくれたから、他の女性に走る事がないのはちゃんと信じているけれど、私に飽きてしまったならこれは大きな問題。

「これは大問題だわ……私にムラムラしてないって事でしょう?」

  ルフェルウス様には私にムラムラしてもらわないと!
  まだ、飽きるのは早すぎる!

  (ルフェルウス様のムラムラを取り戻すのよ!)


  私は謎の決意を胸に秘めその日は、眠りについた。


  翌日のルフェルウス様はいつもと変わらなかった。

  おはようのキスもしてくれるし、学園に向かう馬車もいつもみたいに距離は近かったし、何なら手を繋いで歩くのもいつも通り。
  お昼だって一緒に食べている。
  あーんして欲しいとか言われたから、恥ずかしいけどやってみたわ。

  (あれは意外と口に運ぶのが難しいのね)

  そんな私達の様子に周りの生徒がギョッとし、縦ロール令嬢ミュゼット様がこのあーんしている様子を目撃して泡を吹いて倒れ「ドリル……ミュゼット様がお倒れに!  誰か手伝ってぇぇー」なんて助けを求める声が聞こえた気がしたけれど、私の頭の中はとにかくルフェルウス様をムラムラさせる事でいっぱいだった。

  (日中のルフェルウス様はいつもと変わらないわ……やっぱり問題は夜!)

  ルフェルウス様をその気にさせるには、もう、しかないわ!
  私はそう思い、今夜のルフェルウス様との夜をどうするかの算段を練った。





「リスティ様、本当にを着られるんですか?」
「もちろんよ。今日は前より更にスケスケの夜着で攻めるしかないと思ってるの!  それでルフェルウス様には私にムラムラして貰うんだから!」

  ついでに私に飽きてしまった理由も聞かないと!

  私の身体(?)には飽きてしまったらしいルフェルウス様をもう一度その気にさせるには、やっぱりこれしかないと思って侍女に相談したら、
「あるにはあるんですが……リスティ様にはまだ少し早い気が……します」
  なんて言われてしまった!

  それでも、何とかお願いして出してもらった。

「リスティ様……その、これ以上殿下を煽ってしまうと……リスティ様の身が……危険では?」
「危険?」
「それに殿下がリスティ様に飽きるなんて有り得ませんよ?」
「もちろん分かっているわ。ルー様は私をちゃんと愛してくれているし、変わらず大事にしてくれてる。でもね、私の身体には飽きてしまったみたいなのよ」
「……!?」

  ブホッと侍女がむせた。
  
「私はもっとルー様とイチャイチャしたいの」
「これ以上!?」
「だからこの夜着が必要なのよ!」
「えぇ……」

  今夜着る予定の夜着のスケスケ具合を真剣に確認していた私は、この後の侍女の言葉は耳に入らなかった。

「嘘でしょう?  殿下とリスティ様のイチャイチャって……今でも凄いのにこれ以上する気なの……?  殿下の理性持つかしら?  え、無理よ、絶対無理」




*****


「ルー様!」
「リスティ?」

  今日は私から攻めると決めたので、私の方からルー様のお部屋を訪ねた。

「どうしたの?  もうすぐおやすみ、と言いに行くつもりだったのだけど」
「今日は私が言いに来ました!」
「リスティが?  それは嬉しいけど……」

  何故かルフェルウス様が目を逸らす。

  (何故、目を逸らすの!?)

  これはいけない!  

「ルー様、こっちを向いて下さいな」
「……え?」

  私はちょっと無理やりルフェルウス様の両頬を掴み私の方へと向かせる。
  そして、そのままチュッと私の方からキスをする。

「リ、リスティ!?」

  ルフェルウス様が顔を真っ赤にして驚いている。
  私はそんな彼の目を見つめて言う。
  
「好きです、ルー様。あなたが私の身体に飽きてしまっても大好きなのです!  だからお願い、もう一度私にムラムラして!」
「ム……!?」

  私はガウンを脱いでそのままの勢いでルフェルウス様に抱き着いた。
  
「ちょ、リスティ……え?  なん……スケ……」

  ルフェルウス様は動揺しすぎてちょっと何言ってるか分からない。

「え、柔らかっ……違っ……そうじゃなくて……えぇ!?」
「ルー様、私、もっとあなたとイチャイチャしたいのです!」
「は?  イチャ、イチャ……!?」

  私は必死に訴える。

「イチャイチャしたくて今日は自ら選んで着てきました!」
「リ、リ、リス……め、目のやり場が……」
「ルー様!  ムラムラしてくれていますか?  それとも私の身体にはもう飽き……」

  そこまで言った瞬間、私の視界がグルっと反転する。

「??」

  ポスッとベッドの上に仰向けになった。
  そんな私の上にルフェルウス様が乗って来て……
 
「リスティ?  話をしよう」
「ルー様?  そうね。私もそう思ってるの、何故ルー様が私の身体に飽きてしまったのか知りた……」
「飽きてなーーい!  私がリスティに飽きるわけないんだけど!?  むしろもっともっと触れたくて触れたくて仕方ないんだけど!?  なぁ、リスティ?  君のそのおかしな誤解はどこから来たんだーー!?」
「あれ?」






  私はゆっくりとここまでの経緯を語る。
  それに伴い話を聞いていたルフェルウスの顔色はどんどん悪くなっていった。


「……リスティ」
「はい」
「よーく分かったよ。君に遠慮はいらないと。余計な気を回し過ぎたようだ」
「ルー様?  …………あっ」

  ルー様の不埒な手がそっと私の身体に触れる。
  防御力ゼロの夜着は簡単にルフェルウス様の侵入を許してしまう。

「毎日、毎日がっつき過ぎたかも、と思って少し抑えようとしただけだったんだけど……まさか、こんな斜め上に突っ走ってくるなんて思わなかった……」 
「んっ……ルー……様?」
「リスティがその気なら遠慮は要らなかったみたいだ」
「?  ……ル、ルーさ、」
「し、黙って」

  そう言ったルフェルウス様の唇が私の唇を塞ぐ。
  これは、ムラムラしてくれている……のよね?
  成功した……のよね?

  でも、何故かしら少し身の危険を感じるの。

  ────リスティ様……その、これ以上殿下を煽ってしまうと……リスティ様の身が……危険では?

  侍女の言葉が頭の中に甦る。

  (ま、まさか……これ?)

「リスティ……愛してるよ。君はどうも私の愛を甘く見ていたようだ。だから、これはお仕置。私がどれだけ君を愛してるか教えてあげよう───身体で」
「!?」

  最後のセリフは耳元で囁かれた。

  (お仕置!?  身体で!?)

「ルー…………んむっ」

  私の声は再びのキスで塞がれ声にならなかった。

  このまま私はいつかの日より、愛され続けたのは言うまでもない。


  そして翌日、私のお妃教育の緊急の教育最重要事項に、閨教育が浮上していた────





✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


お読み下さりありがとうございます。
第2弾は後日談でイチャイチャする二人をと思って書き始めたらリスティが暴走しました。
イチャイチャ……??
まだ、ちょっとルフェルウス様の愛を甘く見てるリスティさんです。

前回のエド様視点への反響ありがとうございました!  
エド様人気ですね(笑)

この後もリクエストのあった、エド様&アリーチェ騒動のこっち視点(リスティ&アリーチェが絡む話)も書きたいと思ってます。
ドリル嬢のお声も多い(笑)

新作の『ひっそり生きてきた私~』があるので、
不定期更新にはなりますが、よければもう少し……お付き合い下さい!

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