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3 years later ~あの日の舞台裏とそれから~ ①

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  あれから、月日が流れ私達はようやく結婚式を迎えた。

  ルフェルウス様は1日も早く私と結婚したかったみたいだけど、卒業するまでは……という意見が多くて結局、ここまで時間がかかってしまった。

  (実質、既に妃みたいな扱いを受けているけれど……)

  夜、私がルフェルウス様に夜這いをしかけようとしても誰も止めないし、なんなら侍女はスケスケの夜着の新作をお勧めしてくる。
  そんな愛し愛される日々を送りながら、ようやく!  ようやく私達は結婚という日を迎えた。





「卒業までが、こんなに長いとは思わなかった」
「そうですね」
「……でも、リスティのウェディングドレス姿は……その……」
「その?」

  ルフェルウス様が昼間の結婚式の様子を思い出したのか頬を赤らめている。

「最高に綺麗だった。この世の者とは思えないくらいの美しさで……」
「いえ、さすがにそれは大袈裟ですよ?」
「いや、そんな事は無い!  リスティの美しさは人外だ!」
  
  人外って……そう思っていると、控え室に来客があった事を告げられる。

  (来客?  パーティーの前に??)

「あぁ、来たのか」
「ルー様?」
「実はエドワードには特別な招待状を渡して呼んでおいたんだ。アリーチェ嬢と共に来るように、と」
「え!  アリーチェ様も!?」

  エドワード様がとにかく惚れ込んでいるという大好きなお相手、アリーチェ様。
  私はずっと彼女と話がしてみたかったのに、なんとエドワード様は彼女が学園に入学しても全然近寄らせてくれなかった。
  それは、ルフェルウス様も同じだったみたい。

「やっと会わせて貰えるのね!」

  エドワード様とアリーチェ様の間にあった事は私もルフェルウス様から話だけは聞いている。

  (まさか、あのエドワード様がここまで拗らせるなんて思いもしなかったわ)

  そして、終いには記憶喪失って……
  それでも二人揃ってパーティーに来てくれるんだもの。もう大丈夫よね。
  私はそう思いながら二人を出迎える事にした。

  
  少しして、エドワード様が可愛いらしい女性と共に現れる。


「あぁ、来たな」
「本日はおめでとうございます」
「ありがとう」

  ルフェルウス様は出迎えるとお祝いの言葉を貰えて嬉しそうに笑っていた。

  (ふふふ、ルー様が嬉しそうで私も嬉しい!)

  そんなルフェルウス様を見て微笑んでいたら、アリーチェ様と私の目が合った。
  そうよ!  エドワード様の大事な大事な方。しっかり挨拶しなくては!!

「初めまして、リスティ……シュトラールですわ」

  ……リスティ・シュトラール。
  自分で名乗っていて不思議な感じがしたせいで変な間が出来てしまった。
  もう、私はリスティ・マゼランズではないんだわ……ふふ。

「アリーチェ・オプラスと申します。本日はおめでとうございます」
「ありがとう。あなたがエドワード様の婚約者の方ね!  ずっとお会いしたかったわ」

  アリーチェ様の可愛らしい雰囲気に自然と私も笑顔が溢れる。
  すると、何故かアリーチェ様が固まってしまう。

「……?  どうかされました??」

  不躾に見過ぎてしまったかしら??   
  だって、可愛いんだもの!  エドワード様が夢中になるのがすっごく分かるんだもの!
  と、内心で興奮していたら……

「リスティの美しさに驚いていただけだろう」
「ルー様?」

  ルフェルウス様が後ろから現れて私の肩に手を回して自分の元に引き寄せながら言った。
  アリーチェ様は無言でコクコク頷いている。

  (えぇ!?)

「ほらな。何度も言っているだろう?  君は美しい。そして可愛い」
「ですが……」

  やっぱり私はそれはルフェルウス様の欲目だと思うのに……
  ルフェルウス様は私が納得していないのを感じたのか肩を竦めながら言う。

「私の妃は相変わらず分からず屋だな。そんな所も可愛くて仕方がないが」
   
  そう言ってルフェルウス様の顔が私に迫って来る。
  エドワード様とアリーチェ様がいるのよ!?
  あぁ、もう!  この方は本当に人がいてもお構い無しなんだわ!

「そんな事は……もう!  ルー様。エドワード様とアリーチェ様が見ていますわよ!」

  そう言って軽く嗜めたら、

「あぁ、そうだったな。忘れかけていた」

  まさかの返答が返ってきて驚いたわ。

  (忘れかけちゃった!?  あなたが二人を呼んだのにーー!?)

「ルー様!」
「ははは!  リスティの可愛さを目にしたら他の事はどうでもよくなるな!」
「駄目ですよ!!」

  と、私とルフェルウス様がいつものようにじゃれ合っていたら、エドワード様とアリーチェ様も何やら互いの名前?  愛称?  を呼び合いながら甘~い空気を出していた。




  そんな初々しい二人を見送って私達は、パーティーの開始時刻を待っていたのだけどー……






「何故、あなたがそこで私のエドワード様とベタベタしているんですの!」

  私がそっと扉の隙間から中を除くと、エドワード様がアリーチェ様を強く抱き締めているのが見えた。
  姿は見えないけれど、この声は紛れもなくケルニウス侯爵令嬢イリーナ様の声ね。

  イリーナ・ケルニウス侯爵令嬢。
  エドワード様とアリーチェ様の間を引っ掻き回した令嬢。
  彼女は今日のパーティーに招待されていないはずなのに何故かここにいる。

  私がチラッと隣に立つルフェルウス様を横目で見ると、彼は頭を抱えていた。

「またか……何で私とリスティのおめでたいパーティーには邪魔が入るんだ……」

  (……そうよね、ルー様。頭を抱えたくなるわよね……)

  招待されていないはずのパーティーへの乱入と言われると、どうしてもあのピンク色の彼女の事を思い出してしまうんだもの……

「はぁ……これは、ケルニウス侯爵令嬢を私が追い詰めるしかないのか……」
「ルー様……」
  
  私がそっとルフェルウス様の背中を擦ると、ルフェルウス様は決心を固めたのか、ギュッと私の手を握って微笑んだ。

「ルー様!  こうなったら迷惑な令嬢にはさっさと退場してもらって私達は思う存分イチャイチャしましょうね!」
「……リスティ。君は今それをここで言うのか」
「何がです?」
「そんな事を言われると、パーティー会場ではなくて今すぐ私達の寝室に直行したい気持ちだよ」
「……え?」

  ボンッと私の顔が赤くなる。

「そ、それは夜の……えっと、今夜の初夜の話で、ま、まだ時間が早……!」
「……今夜は寝れないと思ってね、リスティ」
「っ!!」

  なんて話を扉の前でしていたら、

「誰か!  ……エドワード様の手当を!  お願いします、誰か!」

  アリーチェ様の悲痛な叫び声が聞こえて来てハッとする。
  
  (いけない!  そんな会話をしてる場合では無かったわ……)

「……まさか、エドワードが怪我をした?」

  ルフェルウス様の顔も険しいものに変わる。
  大事な友人を傷付けられてルフェルウス様も黙ってはいられない。

  (エドワード様はルー様の単なる友人というだけじゃない。ルー様はずっとエドワード様を側近にしたいと望んでいるんだもの)

  エドワード様はずっと打診を受けているのに、首を縦に降って来なかった。けれど、そろそろ口説き落とせそうだとルフェルウス様は喜んでいたのに!



「離しなさいよ!  それよりどうして!  どうしてそんな女を庇ったのですか?  何故!  エドワード様!!」
「アリーチェをそんな女と呼ぶな!  お前なんかとは比べ物にならないくらいの素晴らしい人だ!」

  イリーナ様の叫び声とエドワード様の叫び声が聞こえる。

  (知っていたつもりだったけどエドワード様って、本当にアリーチェ様の事が好きなんだわ)


「謹慎中の身の上で、許可もなくこの場にやって来ては言いがかりをつけた挙句、令嬢アリーチェを襲おうとしたお前のいったいどこの何が優れていると言うんだ!」
「わ、私は何も悪くないですわ……邪魔者を排除しようとしただけですもの……それに!  そもそも今日ここに来たのは殿下に謹慎を解いて貰おうと直談判するためでしたのよ。なのにエドワード様がその女と親密になさるから……!」

  (え!?  ルー様に謹慎を解いてもらう為に来たの?  こんな形で乗り込んで!?)

  私は驚きが隠せない。

「勝手な事を言うな!  大人しく謹慎してれば良かったんだ!  身勝手な事をして殿下のパーティーをめちゃくちゃにした罪は重い。その覚悟はあるのか?」

  エドワード様のその声にルフェルウス様が「本当にな」と呟いた。
  そして、私に「行くぞ」と、声をかけたので私はしっかり頷いて、ルフェルウス様と共に会場に入った。


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