36 / 37
3 years later ~あの日の舞台裏とそれから~ ①
しおりを挟むあれから、月日が流れ私達はようやく結婚式を迎えた。
ルフェルウス様は1日も早く私と結婚したかったみたいだけど、卒業するまでは……という意見が多くて結局、ここまで時間がかかってしまった。
(実質、既に妃みたいな扱いを受けているけれど……)
夜、私がルフェルウス様に夜這いをしかけようとしても誰も止めないし、なんなら侍女はスケスケの夜着の新作をお勧めしてくる。
そんな愛し愛される日々を送りながら、ようやく! ようやく私達は結婚という日を迎えた。
「卒業までが、こんなに長いとは思わなかった」
「そうですね」
「……でも、リスティのウェディングドレス姿は……その……」
「その?」
ルフェルウス様が昼間の結婚式の様子を思い出したのか頬を赤らめている。
「最高に綺麗だった。この世の者とは思えないくらいの美しさで……」
「いえ、さすがにそれは大袈裟ですよ?」
「いや、そんな事は無い! リスティの美しさは人外だ!」
人外って……そう思っていると、控え室に来客があった事を告げられる。
(来客? パーティーの前に??)
「あぁ、来たのか」
「ルー様?」
「実はエドワードには特別な招待状を渡して呼んでおいたんだ。アリーチェ嬢と共に来るように、と」
「え! アリーチェ様も!?」
エドワード様がとにかく惚れ込んでいるという大好きなお相手、アリーチェ様。
私はずっと彼女と話がしてみたかったのに、なんとエドワード様は彼女が学園に入学しても全然近寄らせてくれなかった。
それは、ルフェルウス様も同じだったみたい。
「やっと会わせて貰えるのね!」
エドワード様とアリーチェ様の間にあった事は私もルフェルウス様から話だけは聞いている。
(まさか、あのエドワード様がここまで拗らせるなんて思いもしなかったわ)
そして、終いには記憶喪失って……
それでも二人揃ってパーティーに来てくれるんだもの。もう大丈夫よね。
私はそう思いながら二人を出迎える事にした。
少しして、エドワード様が可愛いらしい女性と共に現れる。
「あぁ、来たな」
「本日はおめでとうございます」
「ありがとう」
ルフェルウス様は出迎えるとお祝いの言葉を貰えて嬉しそうに笑っていた。
(ふふふ、ルー様が嬉しそうで私も嬉しい!)
そんなルフェルウス様を見て微笑んでいたら、アリーチェ様と私の目が合った。
そうよ! エドワード様の大事な大事な方。しっかり挨拶しなくては!!
「初めまして、リスティ……シュトラールですわ」
……リスティ・シュトラール。
自分で名乗っていて不思議な感じがしたせいで変な間が出来てしまった。
もう、私はリスティ・マゼランズではないんだわ……ふふ。
「アリーチェ・オプラスと申します。本日はおめでとうございます」
「ありがとう。あなたがエドワード様の婚約者の方ね! ずっとお会いしたかったわ」
アリーチェ様の可愛らしい雰囲気に自然と私も笑顔が溢れる。
すると、何故かアリーチェ様が固まってしまう。
「……? どうかされました??」
不躾に見過ぎてしまったかしら??
だって、可愛いんだもの! エドワード様が夢中になるのがすっごく分かるんだもの!
と、内心で興奮していたら……
「リスティの美しさに驚いていただけだろう」
「ルー様?」
ルフェルウス様が後ろから現れて私の肩に手を回して自分の元に引き寄せながら言った。
アリーチェ様は無言でコクコク頷いている。
(えぇ!?)
「ほらな。何度も言っているだろう? 君は美しい。そして可愛い」
「ですが……」
やっぱり私はそれはルフェルウス様の欲目だと思うのに……
ルフェルウス様は私が納得していないのを感じたのか肩を竦めながら言う。
「私の妃は相変わらず分からず屋だな。そんな所も可愛くて仕方がないが」
そう言ってルフェルウス様の顔が私に迫って来る。
エドワード様とアリーチェ様がいるのよ!?
あぁ、もう! この方は本当に人がいてもお構い無しなんだわ!
「そんな事は……もう! ルー様。エドワード様とアリーチェ様が見ていますわよ!」
そう言って軽く嗜めたら、
「あぁ、そうだったな。忘れかけていた」
まさかの返答が返ってきて驚いたわ。
(忘れかけちゃった!? あなたが二人を呼んだのにーー!?)
「ルー様!」
「ははは! リスティの可愛さを目にしたら他の事はどうでもよくなるな!」
「駄目ですよ!!」
と、私とルフェルウス様がいつものようにじゃれ合っていたら、エドワード様とアリーチェ様も何やら互いの名前? 愛称? を呼び合いながら甘~い空気を出していた。
そんな初々しい二人を見送って私達は、パーティーの開始時刻を待っていたのだけどー……
「何故、あなたがそこで私のエドワード様とベタベタしているんですの!」
私がそっと扉の隙間から中を除くと、エドワード様がアリーチェ様を強く抱き締めているのが見えた。
姿は見えないけれど、この声は紛れもなくケルニウス侯爵令嬢イリーナ様の声ね。
イリーナ・ケルニウス侯爵令嬢。
エドワード様とアリーチェ様の間を引っ掻き回した令嬢。
彼女は今日のパーティーに招待されていないはずなのに何故かここにいる。
私がチラッと隣に立つルフェルウス様を横目で見ると、彼は頭を抱えていた。
「またか……何で私とリスティのおめでたいパーティーには邪魔が入るんだ……」
(……そうよね、ルー様。頭を抱えたくなるわよね……)
招待されていないはずのパーティーへの乱入と言われると、どうしてもあのピンク色の彼女の事を思い出してしまうんだもの……
「はぁ……これは、ケルニウス侯爵令嬢を私が追い詰めるしかないのか……」
「ルー様……」
私がそっとルフェルウス様の背中を擦ると、ルフェルウス様は決心を固めたのか、ギュッと私の手を握って微笑んだ。
「ルー様! こうなったら迷惑な令嬢にはさっさと退場してもらって私達は思う存分イチャイチャしましょうね!」
「……リスティ。君は今それをここで言うのか」
「何がです?」
「そんな事を言われると、パーティー会場ではなくて今すぐ私達の寝室に直行したい気持ちだよ」
「……え?」
ボンッと私の顔が赤くなる。
「そ、それは夜の……えっと、今夜の初夜の話で、ま、まだ時間が早……!」
「……今夜は寝れないと思ってね、リスティ」
「っ!!」
なんて話を扉の前でしていたら、
「誰か! ……エドワード様の手当を! お願いします、誰か!」
アリーチェ様の悲痛な叫び声が聞こえて来てハッとする。
(いけない! そんな会話をしてる場合では無かったわ……)
「……まさか、エドワードが怪我をした?」
ルフェルウス様の顔も険しいものに変わる。
大事な友人を傷付けられてルフェルウス様も黙ってはいられない。
(エドワード様はルー様の単なる友人というだけじゃない。ルー様はずっとエドワード様を側近にしたいと望んでいるんだもの)
エドワード様はずっと打診を受けているのに、首を縦に降って来なかった。けれど、そろそろ口説き落とせそうだとルフェルウス様は喜んでいたのに!
「離しなさいよ! それよりどうして! どうしてそんな女を庇ったのですか? 何故! エドワード様!!」
「アリーチェをそんな女と呼ぶな! お前なんかとは比べ物にならないくらいの素晴らしい人だ!」
イリーナ様の叫び声とエドワード様の叫び声が聞こえる。
(知っていたつもりだったけどエドワード様って、本当にアリーチェ様の事が好きなんだわ)
「謹慎中の身の上で、許可もなくこの場にやって来ては言いがかりをつけた挙句、令嬢を襲おうとしたお前のいったいどこの何が優れていると言うんだ!」
「わ、私は何も悪くないですわ……邪魔者を排除しようとしただけですもの……それに! そもそも今日ここに来たのは殿下に謹慎を解いて貰おうと直談判するためでしたのよ。なのにエドワード様がその女と親密になさるから……!」
(え!? ルー様に謹慎を解いてもらう為に来たの? こんな形で乗り込んで!?)
私は驚きが隠せない。
「勝手な事を言うな! 大人しく謹慎してれば良かったんだ! 身勝手な事をして殿下のパーティーをめちゃくちゃにした罪は重い。その覚悟はあるのか?」
エドワード様のその声にルフェルウス様が「本当にな」と呟いた。
そして、私に「行くぞ」と、声をかけたので私はしっかり頷いて、ルフェルウス様と共に会場に入った。
76
あなたにおすすめの小説
【本編完結】笑顔で離縁してください 〜貴方に恋をしてました〜
桜夜
恋愛
「旦那様、私と離縁してください!」
私は今までに見せたことがないような笑顔で旦那様に離縁を申し出た……。
私はアルメニア王国の第三王女でした。私には二人のお姉様がいます。一番目のエリーお姉様は頭脳明晰でお優しく、何をするにも完璧なお姉様でした。二番目のウルルお姉様はとても美しく皆の憧れの的で、ご結婚をされた今では社交界の女性達をまとめております。では三番目の私は……。
王族では国が豊かになると噂される瞳の色を持った平凡な女でした…
そんな私の旦那様は騎士団長をしており女性からも人気のある公爵家の三男の方でした……。
平凡な私が彼の方の隣にいてもいいのでしょうか?
なので離縁させていただけませんか?
旦那様も離縁した方が嬉しいですよね?だって……。
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
[異世界恋愛短編集]お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?
石河 翠
恋愛
公爵令嬢レイラは、王太子の婚約者である。しかし王太子は男爵令嬢にうつつをぬかして、彼女のことを「悪役令嬢」と敵視する。さらに妃教育という名目で離宮に幽閉されてしまった。
面倒な仕事を王太子から押し付けられたレイラは、やがて王族をはじめとする国の要人たちから誰にも言えない愚痴や秘密を打ち明けられるようになる。
そんなレイラの唯一の楽しみは、離宮の庭にある東屋でお茶をすること。ある時からお茶の時間に雨が降ると、顔馴染みの文官が雨宿りにやってくるようになって……。
どんな理不尽にも静かに耐えていたヒロインと、そんなヒロインの笑顔を見るためならどんな努力も惜しまないヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
「お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?」、その他5篇の異世界恋愛短編集です。
この作品は、他サイトにも投稿しております。表紙は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:32749945)をおかりしております。
手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです
珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。
でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。
加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。
【完結】イアンとオリエの恋 ずっと貴方が好きでした。
たろ
恋愛
この話は
【そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします】の主人公二人のその後です。
イアンとオリエの恋の話の続きです。
【今夜さよならをします】の番外編で書いたものを削除して編集してさらに最後、数話新しい話を書き足しました。
二人のじれったい恋。諦めるのかやり直すのか。
悩みながらもまた二人は………
今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから
ありがとうございました。さようなら
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。
ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。
彼女は別れろ。と、一方的に迫り。
最後には暴言を吐いた。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。
ちゃんと、別れ話をしようと。
ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。
【完】貴方達が出ていかないと言うのなら、私が出て行きます!その後の事は知りませんからね
さこの
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者は伯爵家の次男、ジェラール様。
私の家は侯爵家で男児がいないから家を継ぐのは私です。お婿さんに来てもらい、侯爵家を未来へ繋いでいく、そう思っていました。
全17話です。
執筆済みなので完結保証( ̇ᵕ ̇ )
ホットランキングに入りました。ありがとうございますペコリ(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*
2021/10/04
幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる