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第1章 アルストロメリア編
第34話 アリスの直談判
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アリスは目を覚ますと午後になっていた。
そのことに気づくとアリスは慌てて、レイを探そうと部屋を出ようとする。
「お待ちくださいアリス様。そのような恰好では城内を歩けません」
メイドはアリスに着替えるように勧めるが、アリスはそれどころではなくメイドを押しのけ部屋から出ようとする。
「待ちなさいアリス。そんなに慌ててもレイには会えませんよ。とりあえず心を落ち着かせて着替えなさい」
「ウィルはレイ君が心配じゃないんですか。いなくなってしまうんですよ!」
「すまない、レイは昨日の夜には鉄道に乗っていってしまった。今頃は船に乗るところでしょう」
「なんで……そんな……なら急いで追いかけないと」
「だから頭を冷やしなさい。慌てても何も変わりません。それにハルシュライン王国についても結婚までには猶予がある。まずは女王に謁見をして直談判をするのです」
ウィルはそういうと部屋から出ていく。
アリスは心を落ち着かせるために深呼吸をして、メイドにより服を着替えさせられるのだった。
現在、女王と国王、アル、ウィル、第三王子リーベルトが部屋に揃っている。
しかし、アリスが入室するころには既に室内はとてつもないことになっていた。
ガラスは割れ、壁などには剣で切られたような傷がある。
それに、国王が顔面血だらけになりながらメイドから介抱されている。
(あぁ、これは何かありましたね)
「次はあなたですかアリスさん。言っておきますが攻撃してこないでくださいね」
女王は額に手を当て、アリスに怯えながらお願いをする。
(これは、本当になにがあったのでしょうか)
「こんな状況では何が何だかわからないだろうから説明してやる――」
アルは語る。
実は第三王子のリーベルトはハルシュライン王国に14歳から17歳まで留学し、その中でハルシュライン王国の第一王女エレオノーラ・ハルシュラインと相思相愛になり、留学から帰ったあとも隠れて文通をしていた。そして、今回のエレオノーラとレイの政略結婚を知り、激怒し父と母がのんびりお茶をしていたところに剣を持って襲撃し、最終的には父であり国王でもあるガンフォルドを殴り倒したそうだ。
(なんでしょうか。この親子喧嘩が命がけすぎる気がします。しかし、私もレイ君のことで言いたいことがあります)
「あの女王様、なぜレイを行かせたのですか?」
アリスは近くに落ちていた剣を握り締め、女王ににじりよる。
「落ち着きなさいアリス。これ以上ややこしくしないでください」
ウィルは慌ててアリスを羽交い絞めにする。
「アリスさん……これには……事情があってね」
女王は顔を引きつらせながら、アリスに言い訳を始める。
実は今回の結婚はアルストロメリアの侯爵とハルシュラインの公爵が仕組んだことであり、
リーベルトのことを愛していた両家の令嬢が自らの父に頼み、各方面に圧力をかけて、結婚相手をリーベルトからレイに変えてしまったとのことだった。
「ふざけないでください!!」
アリスは怒りに任せて、足元にあったローテーブルを踏み割る。
これには、周りの人々も顔が引きつる。
特に負傷中の国王は部屋の隅に避難している。
アリスはスキル“強くなる”により、本気で暴れれば誰にも止められないのだ。
「アリスさん……落ち着いて……ちゃんと対処するから」
「対処とは何をするんですか?」
アリスはジト目で女王を睨みつける。
「我が国の侯爵は爵位剥奪の上、財産没収し国外追放です。相手国の公爵に関しては、我が国から特使団を送り、ハルシュライン国王に事情を説明し、リーベルトとの結婚に変更して貰います」
女王はきっぱりと言うが、その視線はどこか泳いでおり怪しい。
「何か隠していますね?」
アリスは黒い笑顔で女王を問い詰める。
これには女王も諦め、アリスに事情を話し始める。
ハルシュライン王国での結婚式の前にレイとエレオノーラが性的な接触をしてしまっては、もうどうにもならないとのことだった。
しかし、それを聞いてアリスは安心する。
(レイ君は私しか愛していないと言っていたので大丈夫です)
これはハルシュライン王国での、国王と女王と第一王女の出来事。
「ちょっと待ってエレオノーラ……落ち着こうね……これ以上殴られたら俺……死んじゃうから」
ハルシュライン王国の国王メルディウス・ハルシュラインは顔面血だらけで床に倒れている。
「お父様のせいで私は愛するリーベルトと結ばれないんですよ!!!」
第一王女エレオノーラは涙を流しながら暴れる。
止めようとした兵士たちもすべて殴り飛ばされ失神している。
彼女は拳匠、瞬歩、激怒というスキルを持ち近接ではハルシュライン王国随一なのだ。
そのため、彼女の怒りを止めることができず、大変な惨状になっているのだ。
「あのアーデルハイドや……いい加減助けてくれない?」
メルディウスは妻であるアーデルハイドに助けを求める。
この国の軍事を取り仕切る拳聖、瞬歩のスキルを持つ彼女ならば、エレオノーラを止められると考えたのだ。
「ダメです。愛しの娘が望んだ相手以外と結婚させられるのです。これは私としても許せません」
アーデルハイドは無情にもメルディウスの助けを切り捨てる。
「お父様のせいで私の幸せはぁあああああ!!!」
エレオノーラの強烈な蹴りがメルディウスの腹部に突き刺さり、彼は意識を失うのだった。
そのことに気づくとアリスは慌てて、レイを探そうと部屋を出ようとする。
「お待ちくださいアリス様。そのような恰好では城内を歩けません」
メイドはアリスに着替えるように勧めるが、アリスはそれどころではなくメイドを押しのけ部屋から出ようとする。
「待ちなさいアリス。そんなに慌ててもレイには会えませんよ。とりあえず心を落ち着かせて着替えなさい」
「ウィルはレイ君が心配じゃないんですか。いなくなってしまうんですよ!」
「すまない、レイは昨日の夜には鉄道に乗っていってしまった。今頃は船に乗るところでしょう」
「なんで……そんな……なら急いで追いかけないと」
「だから頭を冷やしなさい。慌てても何も変わりません。それにハルシュライン王国についても結婚までには猶予がある。まずは女王に謁見をして直談判をするのです」
ウィルはそういうと部屋から出ていく。
アリスは心を落ち着かせるために深呼吸をして、メイドにより服を着替えさせられるのだった。
現在、女王と国王、アル、ウィル、第三王子リーベルトが部屋に揃っている。
しかし、アリスが入室するころには既に室内はとてつもないことになっていた。
ガラスは割れ、壁などには剣で切られたような傷がある。
それに、国王が顔面血だらけになりながらメイドから介抱されている。
(あぁ、これは何かありましたね)
「次はあなたですかアリスさん。言っておきますが攻撃してこないでくださいね」
女王は額に手を当て、アリスに怯えながらお願いをする。
(これは、本当になにがあったのでしょうか)
「こんな状況では何が何だかわからないだろうから説明してやる――」
アルは語る。
実は第三王子のリーベルトはハルシュライン王国に14歳から17歳まで留学し、その中でハルシュライン王国の第一王女エレオノーラ・ハルシュラインと相思相愛になり、留学から帰ったあとも隠れて文通をしていた。そして、今回のエレオノーラとレイの政略結婚を知り、激怒し父と母がのんびりお茶をしていたところに剣を持って襲撃し、最終的には父であり国王でもあるガンフォルドを殴り倒したそうだ。
(なんでしょうか。この親子喧嘩が命がけすぎる気がします。しかし、私もレイ君のことで言いたいことがあります)
「あの女王様、なぜレイを行かせたのですか?」
アリスは近くに落ちていた剣を握り締め、女王ににじりよる。
「落ち着きなさいアリス。これ以上ややこしくしないでください」
ウィルは慌ててアリスを羽交い絞めにする。
「アリスさん……これには……事情があってね」
女王は顔を引きつらせながら、アリスに言い訳を始める。
実は今回の結婚はアルストロメリアの侯爵とハルシュラインの公爵が仕組んだことであり、
リーベルトのことを愛していた両家の令嬢が自らの父に頼み、各方面に圧力をかけて、結婚相手をリーベルトからレイに変えてしまったとのことだった。
「ふざけないでください!!」
アリスは怒りに任せて、足元にあったローテーブルを踏み割る。
これには、周りの人々も顔が引きつる。
特に負傷中の国王は部屋の隅に避難している。
アリスはスキル“強くなる”により、本気で暴れれば誰にも止められないのだ。
「アリスさん……落ち着いて……ちゃんと対処するから」
「対処とは何をするんですか?」
アリスはジト目で女王を睨みつける。
「我が国の侯爵は爵位剥奪の上、財産没収し国外追放です。相手国の公爵に関しては、我が国から特使団を送り、ハルシュライン国王に事情を説明し、リーベルトとの結婚に変更して貰います」
女王はきっぱりと言うが、その視線はどこか泳いでおり怪しい。
「何か隠していますね?」
アリスは黒い笑顔で女王を問い詰める。
これには女王も諦め、アリスに事情を話し始める。
ハルシュライン王国での結婚式の前にレイとエレオノーラが性的な接触をしてしまっては、もうどうにもならないとのことだった。
しかし、それを聞いてアリスは安心する。
(レイ君は私しか愛していないと言っていたので大丈夫です)
これはハルシュライン王国での、国王と女王と第一王女の出来事。
「ちょっと待ってエレオノーラ……落ち着こうね……これ以上殴られたら俺……死んじゃうから」
ハルシュライン王国の国王メルディウス・ハルシュラインは顔面血だらけで床に倒れている。
「お父様のせいで私は愛するリーベルトと結ばれないんですよ!!!」
第一王女エレオノーラは涙を流しながら暴れる。
止めようとした兵士たちもすべて殴り飛ばされ失神している。
彼女は拳匠、瞬歩、激怒というスキルを持ち近接ではハルシュライン王国随一なのだ。
そのため、彼女の怒りを止めることができず、大変な惨状になっているのだ。
「あのアーデルハイドや……いい加減助けてくれない?」
メルディウスは妻であるアーデルハイドに助けを求める。
この国の軍事を取り仕切る拳聖、瞬歩のスキルを持つ彼女ならば、エレオノーラを止められると考えたのだ。
「ダメです。愛しの娘が望んだ相手以外と結婚させられるのです。これは私としても許せません」
アーデルハイドは無情にもメルディウスの助けを切り捨てる。
「お父様のせいで私の幸せはぁあああああ!!!」
エレオノーラの強烈な蹴りがメルディウスの腹部に突き刺さり、彼は意識を失うのだった。
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