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アルフレッドの独白
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燃え上がる熱風に、掛けていた白い布が燃え尽きながら舞い上がる。
『紙飛行機』
いつかの彼の声がよみがえる。
ロイドの火魔法により、骨まで燃え尽きる。
王家の森。本来は王族のみ立ち入ることを許された場所は誰にも見られず弔うには打ってつけだった。
何故こうなったのか。
隣にいるサイファも数歩前で火魔法を発動しているロイドも同じことを考えているのかもしれない。
カイン・ロードレス
自分が産まれて初めて強烈に欲した存在。
どんなことをしても、どんな手を使っても手に入れたかった。
そして手に入れたはずだった。
何故、こうなってしまったのか。
彼が燃え尽きる。
涙が出ないのは、自分の罪を彼に知られる恐怖から解き放たれたからなのか。
初めて彼を知ったのは王立学院だった。
王立学院で知り合った時のことはよく覚えている。
私が所属していた生徒会室の窓に白いナニかが横切った。それはゆっくりと旋回しながら中庭へ落ちていった。
正体を見極めようと中庭まで降りて行くと、その白いナニかを手にした少年がいた。
淡い金髪に薄い青い目。
濃い夏空に強い日差しが差し込む中庭で、まるで淡く溶けていくかのような儚さは、美しい絵画を見ているようだった。
永遠がそこにある。
ふとそう思った。
こちらに気付いた彼は私に気付き、礼をとる。
「あぁ、畏まらなくていい」
襟章から同学年だと分かった。
「敬語も必要ない。ところでそれは?」
戸惑いつつ彼は持っていた物をこちらに見せ、はにかみながら言った。
「紙飛行機」
「カミヒコーキ?」
のちに彼が『転生者』と言われる特別な存在であると知った。
それから、日を増すごとに彼を思い出す時間は増え、どうにか彼と接点を持とうと日々を過ごした。
学院内でも、本来は下位貴族と王族や上位貴族が席を共にすることはない。
だが、成績上位者は別だ。
彼はこの世にない知識を持つと言われる『転生者』だからか、常に成績上位5位までに入り、入学後の魔力測定でも魔法量が多いことで知られていた。
成績上位者は高位貴族が学ぶ学舎や食堂にも出入りが許され、生徒会室の近くにある特別蔵書室も使用出来た。
彼はよくそこで過ごしていた。
何か用事を作っては特別蔵書室に行き、理由を作っては話しかけた。
王族の問いかけに答えないわけにはいかない。
貴族として絶対的な身分制度を盾に彼の生活圏内に断りなく入っていく。
いつもわずかに下がる眉の意味に気付かないふりをして。
拒絶されないことをいいことに王城に招いたりもした。
やがて、王族としての務めを果たすべく、婚約者候補が選定され、周囲を似たような表情をした令嬢達が囲むようになった。
誰を見ても彼と比べてしまう自分に、ようやく自分の感情が何と言われるものなのか自覚した。
このままなら、ロンドリンド侯爵家のアイシャ嬢が婚約者に決まるだろう。
子供は必要だ。
なので役目を果たせる者なら誰でも良かった。
だが、中途編入してきた男爵令嬢を見たとき、抑えきれない思いが溢れてきた。
同じ髪、同じ瞳。
彼女との間に子供が出来たら、彼の色を宿す子が生まれるのではないか。
貴族間のルールに疎いところはあるが、成績上位者の彼女は、王族の私が話しかけても畏まることなく屈託なく笑う。まるで彼が笑っているかのように。
必然、自他共に婚約者候補筆頭のアイシャ嬢の目は彼女に向き、私の企みには誰も気付かない。
いや、側近のサイファとロイドは薄々気付いているようだった。
幼い頃からお互いのことをよく理解しているだけに、彼らも同じ思いを抱き始めていたことにも気づいていた。
閨教育後、フローラを抱いた。彼の代わりに。
逐情の時は彼の名を呼ばないよう必死だった。
そして卒業が近づき、彼が卒業後、同じ『転生者』の叔父が領地に設立した研究機関へ行くと聞いたとき、理不尽な怒りを感じた。
これほど私が心を傾けているのに、彼はあっさり私を捨てるのかと。
おりしも、アイシャ嬢がフローラを人を雇って害そうとしている情報が入る。
高位貴族の令嬢が下位貴族に行う『躾』と放っておいたが、利用させてもらうことにした。
何もせず卒業すれば、皇太子妃の地位は転がり込んだだろうに。運のない令嬢だ。
王命が出ない以上、王族としての発言を引くに引けない状況の中で行う必要があった。
卒業パーティーの断罪事件。
緘口令がしかれたとはいえ、アレはそう呼ばれているらしい。
アイシャ嬢の共犯とされた彼の、見たこともない大きく見開かれた目を今も鮮やかに思い出す。
その後拘束された彼を3人で予め準備していた塔に閉じ込めた。
彼の家族には犯罪に加担した罪人のため、貴族籍を抜いて魔法省にて、魔力供給の任に就くと伝えられた。要は自分の魔力を吸収され、各魔導装置を動かすために使用されるのだ。死ぬまで。
両陛下にも同様の説明を行ない、勝手な行いにお叱りは受けたが、後継者問題で頭を悩まされていた妃問題で、側妃といえども成績上位者のフローラを娶ることに胸を撫で下ろしているようだった。
卒業したあの日から、毎日のように塔に通った。
初めて彼に触れた時は手が震えた。
ぼんやりとした薄い青い目には何も、私も映さず、生理的な涙や呻き声はあげるが状況を認識はしていないようだった。
何も分からない彼を穿つ。
罪に問われないことをいい事に暴走する。
時に2人で。3人で。
私達が付けた傷は自動治癒で治るが、今思えば
少しずつ彼は弱っていたのだろう。
1カ月経った頃、魔力吸収量が減り始めた。
ベッドに掛けていた魔法や効果に絶対の自信があったロイドの見立てから、しばらく同じ生活を続けたが、2カ月が経とうとする頃には魔力吸収を止めることにした。
2カ月と15日。
いつものように思うまま穿った後、中から己を引き抜いて口づけようとして気付いた。
息をしていない。
「何故っ」
心臓のあたりを触ると温かいが鼓動は感じられなかった。
慌ててロイドを呼ぶ。
駆けつけた彼はすぐに蘇生を試みるが、すでに冷たくなり始めた身体は温かさを取り戻すことはなかった。
私が壊した。
そう、最初に思ったのはそれだった。
あぁ、私はもう彼を『人』としてみていなかったのか。
誰も止めることのない狂宴。
でもいつか終わりが来ることも分かっていた。
自分で終わらせる事の出来ない凶行。
ようやく終わる。
あぁそうだ。
フローラ。
子供を。
彼を。
彼を生み出さねば。
『紙飛行機』
いつかの彼の声がよみがえる。
ロイドの火魔法により、骨まで燃え尽きる。
王家の森。本来は王族のみ立ち入ることを許された場所は誰にも見られず弔うには打ってつけだった。
何故こうなったのか。
隣にいるサイファも数歩前で火魔法を発動しているロイドも同じことを考えているのかもしれない。
カイン・ロードレス
自分が産まれて初めて強烈に欲した存在。
どんなことをしても、どんな手を使っても手に入れたかった。
そして手に入れたはずだった。
何故、こうなってしまったのか。
彼が燃え尽きる。
涙が出ないのは、自分の罪を彼に知られる恐怖から解き放たれたからなのか。
初めて彼を知ったのは王立学院だった。
王立学院で知り合った時のことはよく覚えている。
私が所属していた生徒会室の窓に白いナニかが横切った。それはゆっくりと旋回しながら中庭へ落ちていった。
正体を見極めようと中庭まで降りて行くと、その白いナニかを手にした少年がいた。
淡い金髪に薄い青い目。
濃い夏空に強い日差しが差し込む中庭で、まるで淡く溶けていくかのような儚さは、美しい絵画を見ているようだった。
永遠がそこにある。
ふとそう思った。
こちらに気付いた彼は私に気付き、礼をとる。
「あぁ、畏まらなくていい」
襟章から同学年だと分かった。
「敬語も必要ない。ところでそれは?」
戸惑いつつ彼は持っていた物をこちらに見せ、はにかみながら言った。
「紙飛行機」
「カミヒコーキ?」
のちに彼が『転生者』と言われる特別な存在であると知った。
それから、日を増すごとに彼を思い出す時間は増え、どうにか彼と接点を持とうと日々を過ごした。
学院内でも、本来は下位貴族と王族や上位貴族が席を共にすることはない。
だが、成績上位者は別だ。
彼はこの世にない知識を持つと言われる『転生者』だからか、常に成績上位5位までに入り、入学後の魔力測定でも魔法量が多いことで知られていた。
成績上位者は高位貴族が学ぶ学舎や食堂にも出入りが許され、生徒会室の近くにある特別蔵書室も使用出来た。
彼はよくそこで過ごしていた。
何か用事を作っては特別蔵書室に行き、理由を作っては話しかけた。
王族の問いかけに答えないわけにはいかない。
貴族として絶対的な身分制度を盾に彼の生活圏内に断りなく入っていく。
いつもわずかに下がる眉の意味に気付かないふりをして。
拒絶されないことをいいことに王城に招いたりもした。
やがて、王族としての務めを果たすべく、婚約者候補が選定され、周囲を似たような表情をした令嬢達が囲むようになった。
誰を見ても彼と比べてしまう自分に、ようやく自分の感情が何と言われるものなのか自覚した。
このままなら、ロンドリンド侯爵家のアイシャ嬢が婚約者に決まるだろう。
子供は必要だ。
なので役目を果たせる者なら誰でも良かった。
だが、中途編入してきた男爵令嬢を見たとき、抑えきれない思いが溢れてきた。
同じ髪、同じ瞳。
彼女との間に子供が出来たら、彼の色を宿す子が生まれるのではないか。
貴族間のルールに疎いところはあるが、成績上位者の彼女は、王族の私が話しかけても畏まることなく屈託なく笑う。まるで彼が笑っているかのように。
必然、自他共に婚約者候補筆頭のアイシャ嬢の目は彼女に向き、私の企みには誰も気付かない。
いや、側近のサイファとロイドは薄々気付いているようだった。
幼い頃からお互いのことをよく理解しているだけに、彼らも同じ思いを抱き始めていたことにも気づいていた。
閨教育後、フローラを抱いた。彼の代わりに。
逐情の時は彼の名を呼ばないよう必死だった。
そして卒業が近づき、彼が卒業後、同じ『転生者』の叔父が領地に設立した研究機関へ行くと聞いたとき、理不尽な怒りを感じた。
これほど私が心を傾けているのに、彼はあっさり私を捨てるのかと。
おりしも、アイシャ嬢がフローラを人を雇って害そうとしている情報が入る。
高位貴族の令嬢が下位貴族に行う『躾』と放っておいたが、利用させてもらうことにした。
何もせず卒業すれば、皇太子妃の地位は転がり込んだだろうに。運のない令嬢だ。
王命が出ない以上、王族としての発言を引くに引けない状況の中で行う必要があった。
卒業パーティーの断罪事件。
緘口令がしかれたとはいえ、アレはそう呼ばれているらしい。
アイシャ嬢の共犯とされた彼の、見たこともない大きく見開かれた目を今も鮮やかに思い出す。
その後拘束された彼を3人で予め準備していた塔に閉じ込めた。
彼の家族には犯罪に加担した罪人のため、貴族籍を抜いて魔法省にて、魔力供給の任に就くと伝えられた。要は自分の魔力を吸収され、各魔導装置を動かすために使用されるのだ。死ぬまで。
両陛下にも同様の説明を行ない、勝手な行いにお叱りは受けたが、後継者問題で頭を悩まされていた妃問題で、側妃といえども成績上位者のフローラを娶ることに胸を撫で下ろしているようだった。
卒業したあの日から、毎日のように塔に通った。
初めて彼に触れた時は手が震えた。
ぼんやりとした薄い青い目には何も、私も映さず、生理的な涙や呻き声はあげるが状況を認識はしていないようだった。
何も分からない彼を穿つ。
罪に問われないことをいい事に暴走する。
時に2人で。3人で。
私達が付けた傷は自動治癒で治るが、今思えば
少しずつ彼は弱っていたのだろう。
1カ月経った頃、魔力吸収量が減り始めた。
ベッドに掛けていた魔法や効果に絶対の自信があったロイドの見立てから、しばらく同じ生活を続けたが、2カ月が経とうとする頃には魔力吸収を止めることにした。
2カ月と15日。
いつものように思うまま穿った後、中から己を引き抜いて口づけようとして気付いた。
息をしていない。
「何故っ」
心臓のあたりを触ると温かいが鼓動は感じられなかった。
慌ててロイドを呼ぶ。
駆けつけた彼はすぐに蘇生を試みるが、すでに冷たくなり始めた身体は温かさを取り戻すことはなかった。
私が壊した。
そう、最初に思ったのはそれだった。
あぁ、私はもう彼を『人』としてみていなかったのか。
誰も止めることのない狂宴。
でもいつか終わりが来ることも分かっていた。
自分で終わらせる事の出来ない凶行。
ようやく終わる。
あぁそうだ。
フローラ。
子供を。
彼を。
彼を生み出さねば。
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