溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ

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 フィオナにはかつて、一卵性双生児の姉がいた。姉の名は、フローラ。フローラが病気で他界したのは、三ヶ月前のこと。

 産まれたときから病弱だったフローラ。対して、フィオナは健康体そのものだった。両親も、五つはなれた兄も、小さなころからフローラに付きっきりなうえ、フローラだけに愛情を向けていた。それを仕方のないことだと諦めつつも、やはりフィオナは寂しかった。そんなフィオナを慰めてくれたのは、ミックだった。

 親同士の交流により、物心つくころには共にいたミック。そのころのフィオナに、友と、幼馴染みと呼べるのは、彼だけだった。

『だいじょうぶだよ、フィオナ。ぼくがいるから、さびしくないよ』

 その言葉に、何度助けられただろう。そんなミックにフィオナが惹かれるのは、自然の流れだった。そうだ。ミックがいれば、いてくれれば、寂しくない。わたしは一人じゃない。そう思えた。その存在は確かに、フィオナの唯一の心の支えだったのだ。


 ──でも、ある日。

 聞いてしまった。知ってしまったのだ。ミックが優しくしてくれていた、本当のわけを。

「だめよ、ミック。わたしにはおかあさまたちがついていてくれてるから、ミックはフィオナといっしょにいてあげて」

「だって、いまはいないじゃないか」

 ミックを探して屋敷をさ迷っていたフィオナの耳に届いたのは、フローラとミックの声。聞こえてきたのは、フローラの部屋の中からだった。

「それは、わたしがねたとおもったからよ」

「おねがいだよ、そばにいさせて。ぼくがここにくるのは、きみにあいたいからだ。なのに、きみがどうしてもフィオナといっしょにいてあげてとたのむから」

 フローラの部屋の扉の取っ手をつかもうとしたフィオナの手が、ぴたりと止まった。混乱の中、音を立てないように、静かに耳をかたむける。

「フィオナは、わたしのせいでいつもさびしいおもいをしてるの。だから」

「そんなの、ぜいたくだ。あいつはけんこうなからだをもっているんだから、さびしいのぐらい、がまんするべきなんだよ」

 どくん。
 フィオナの心臓が一つ、大きく跳ねた。

「そんなこといわないで、おねがい。フィオナはわたしに、うらみごとひとついったことないの。とてもやさしいこなの。ね?」

「やさしいのは、きみだよ。フローラ」

 それは聞いたことのない、優しく、慈しむような声音で。フィオナは黙って、その場から立ち去ることしかできなかった。結局はミックも、両親や兄と一緒だった。大事なのは、愛しているのは、フローラだったのだと。


 はじめて痛感した日となった。


 
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