溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ

文字の大きさ
7 / 41

7

しおりを挟む
 優しくて、無邪気に慕ってくれるジェマとは、驚くほどすぐに仲良くなった。ジェマはことあるごとに「すごいね、フィオナ」と、よく褒めてくれる。はじめて会話したときに、何かを感じ取ったのかもしれない。

 きっと大切に育てられたのだろうなと、羨ましく思うこともあったけど。妬む気持ちは不思議とわいてこなかった。

 フローラと学園ですれ違うとき、何を問うでもなく「行こう、フィオナ」と笑ってその場から連れ出してくれる。ミックが何か罵倒してきても、何も聞こえないふりをしてくれるジェマ。

 それに何度助けられたことだろう。



「──やるな、お前」

 学園に入学してはじめて行われた試験。その結果が学園の、中庭を見渡せる一階の廊下に張り出された。といっても、各学年の上位十位までだが。

 ジェマと一緒に結果を見にきていたフィオナ。ジェマが「フィオナ、すごい! 学年二位だよ」と、自分のことのように興奮しながら喜ぶ。フィオナが「ジェ、ジェマ。声が大きいわ」とジェマを落ち着かせようとしていると、いつの間にやら隣に来ていたニールが、そう声をかけてきたのだ。

 フィオナがジェマからニールに視線を移す。目が合うと、ニールは不適に笑った。フィオナは、ぴんと姿勢を正した。

「……いいえ、まだまだです。入試も、今回の試験も、あなたには勝てませんでしたから」

「まあ、そうだな。だが見ろ。二位と三位の総得点の差を。逆にわたしとお前との差は、それほどはない」

 腕を組み、ニールが嬉しそうに目を細める。まわりの女子生徒たちが、きゃあと黄色い声をあげた。フィオナも同じクラスとなったニールがこんな風に笑うところを、はじめて見た気がした。その横顔に思わず見惚れそうになったが──それ以上に、ニールに認められたような気がして胸が高鳴った。

 教養のありすぎるレディは、結婚が遠退くとされる。それはフィオナも知ってはいたが、他者に認められたい欲求と、単純な知識欲。そして何より、将来、例え家を追い出されても、結婚相手が見つからなくても、文官として生きていける可能性を自分なりに用意しておきたかったから。

 それが、どうだろう。ジェマだけでなく、あの堅物と噂されるニールまでもがフィオナを認めてくれた。それがどれほど嬉しかったか。

 フィオナは生まれてはじめて、自分にも居場所ができたような気がした。



 フィオナとフローラは、顔こそ瓜二つなものの、性格も何もかもが、まるで正反対だった。フィオナはいつも髪を一つに束ね、ダンスも上手く、成績は常に上位。身につけるものは青色のような寒色系に統一されていた。

 対してフローラは、長い髪を垂らし、控えめで、成績は常に下位。身につけるものは赤色の系統ばかり。そして傍にはいつも、ミックがいた。学園に入学して半年が過ぎようとしていたころには、二人を見間違える者など、学園にはほとんどいなくなっていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【完結】王女と駆け落ちした元旦那が二年後に帰ってきた〜謝罪すると思いきや、聖女になったお前と僕らの赤ん坊を育てたい?こんなに馬鹿だったかしら

冬月光輝
恋愛
侯爵家の令嬢、エリスの夫であるロバートは伯爵家の長男にして、デルバニア王国の第二王女アイリーンの幼馴染だった。 アイリーンは隣国の王子であるアルフォンスと婚約しているが、婚姻の儀式の当日にロバートと共に行方を眩ませてしまう。 国際規模の婚約破棄事件の裏で失意に沈むエリスだったが、同じ境遇のアルフォンスとお互いに励まし合い、元々魔法の素養があったので環境を変えようと修行をして聖女となり、王国でも重宝される存在となった。 ロバートたちが蒸発して二年後のある日、突然エリスの前に元夫が現れる。 エリスは激怒して謝罪を求めたが、彼は「アイリーンと自分の赤子を三人で育てよう」と斜め上のことを言い出した。

あなたの仰ってる事は全くわかりません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。  しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。  だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。 全三話

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。

しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。 全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。 しかも、王妃も父親も助けてはくれない。 だから、私は……。

【完結】婚約破棄したのに殿下が何かと絡んでくる

冬月光輝
恋愛
「お前とは婚約破棄したけど友達でいたい」 第三王子のカールと五歳の頃から婚約していた公爵令嬢のシーラ。 しかし、カールは妖艶で美しいと評判の子爵家の次女マリーナに夢中になり強引に婚約破棄して、彼女を新たな婚約者にした。 カールとシーラは幼いときより交流があるので気心の知れた関係でカールは彼女に何でも相談していた。 カールは婚約破棄した後も当然のようにシーラを相談があると毎日のように訪ねる。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません

冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」 アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。 フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。 そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。 なぜなら―― 「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」 何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。 彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。 国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。 「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」 隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。 一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。

処理中です...