溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ

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 一時間目の授業が終わるなり、フィオナのまわりにクラスメイトの女子生徒たちが何人か集まってきた。

「フィオナ様。あの、あまりプライベートなことを聞くのは失礼かと思うのですが……」

 一人が切り出す。フィオナの隣に座るジェマが心配そうに見てくるのが伝わってきた。ふと斜め前に視線を向けると、ニールの後ろ姿が視界に入ってきた。何処かにいく様子はなさそうで、じっとしている。

(……もう、いいか。あと、ひと月だもんね)

 フィオナは苦笑すると、これまでのことを簡潔にまとめ、全てを説明した。悲劇のヒロインぶっているようにも聞こえるかもしれないが、事実は事実として、語った。ジェマに話したより、ずっと簡単に、淡々と。親にも兄にも、ミックにも誰にも愛されずに育ったこと。そしてみんなが愛していたのはフローラだけで、亡くなったフローラの真似をしてみたら、両親とミックが偽りの愛情を向けてくれた。

「でもね。それは間違っていると、ジェマが目を覚まさしてくれた。そんなジェマを、ミックは打ったのよ」

 フィオナの言葉に、女子生徒たちが「ま、まあ。何てことを!」「酷すぎますわ!」と口々に叫び、フィオナにいたく同情してくれた。

「フィオナ様。わたしたち、いつでもフィオナ様の味方でしてよ」

 フィオナは「ありがとうございます。とても心強いですわ。あ、先生がいらしたみたいですよ」と笑い、席に戻るクラスメイトに小さく手をふった。

「……フィオナ、よかったの?」

 横でジェマが囁く。フィオナは前を向きながら「いいのよ」と答えた。

「思っていた以上にミックがしつこいから、みんなにも周知しておいてもらったほうが何かと都合がいいかとも思って」

「確かに……」

「それに、これでミックの本性は見るまに学園中に広がるわ。これでもう、ミックに近付く女性はいなくなるでしょう?」

「やだなあ。そんな人、もとからいないよ?」

 カラカラと笑うジェマに、フィオナが「え、そうなの?」と目を丸くする。

 ミックはそこそこの身長に、見目だってそこまで悪くはない。加えて、いずれ資産家の伯爵の爵位を継ぐ男だ。結婚相手としての条件は、そう悪くないはず。

「そうだよ? だって、フローラ様への執着がすごくて、しょっちゅうトラブル起こしていたじゃない。フローラ様に近付く者は、男でも女でも排除する、みたいな感じで。それを当たり前に享受していたフローラ様も、何だかなあって、みんな一歩引いて見ていたし」

「……引いてたんだ。でも、女性はともかく、男性からは好かれていたわよね?」

「フローラ様のこと? それは最初だけじゃない? 数ヶ月過ぎるころには、あの二人に話しかける人すらほとんどいなくなっていたんじゃないかしら」

「…………そうなんだ」

 フィオナは驚いていた。フィオナにとって、フローラは多くの人に囲まれ、みんなに愛されているのが当たり前だったから。


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