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「……ルソー伯爵家との繋がりが断たれてもかまわないと言うのか!」
拳を震わせ、ルソー伯爵が叫ぶ。ルソー伯爵夫人は、ええ、と答えた。
「ルソー伯爵家との繋がりはいまや、リスクの方が高い。お父様に相談したら、納得してもらえましたので、ご心配なく」
「お、女の一存で離縁はできんだろうが!」
「そうですね。男は、一方的に離縁できますのに……なんと、不平等なことか」
「法で決まっていることに、難を示すか」
「いいえ。ただ、わたくしはこれから、あなたに従うつもりはありません。コーリーの機嫌うかがいも終いです。だから、離縁してくれるのでしょう? そう言っていましたものね?」
ぱあん。
ルソー伯爵は、怒りのまま、ルソー伯爵夫人の頬を叩いた。コーリーは驚愕に目を見開いていたが、ルソー伯爵夫人は、思いのほか、冷静だった。
「……なんてひどい。慈善活動家を名乗るお方が、妻を打つなんて」
「自業自得だろう!!」
「──父上。そのへんにしておいた方が、よろしいかと」
二階からゆっくりと階段を下ってきたのは、イーモンだった。
「母上は、父上が思っているよりずっと、強かですよ」
「うるさい! お前ごときが私に意見するな!!」
穏やかで、優しい家族。そう思っていたコーリーは、パニックになっていた。冷たく、離縁を迫る母親。怒鳴り散らし、あまつさえ母親を打った父親。
(……なんで。お兄様のことだけでもう、気が変になってしまいそうなのに)
「……イーモンお兄様! お父様も、お母様も変なんですっ」
コーリーが、縋るようにイーモンに駆け寄った。イーモンが、にっこりと笑う。ほっとしたのもつかの間。
「お前が知らなかっただけで、あの二人は、ずっとああだよ。どこも変じゃない」
「…………へ?」
「しかし、驚いたな。これまでエディとミア嬢の邪魔ばかりしていたあげくの、お前の妄言。それをなんの疑いもなく、信じた父上。よく、ジェンキンス伯爵たちは許してくれたね。誤算だったなあ」
「……イーモンお兄様?」
ぱちくりとするコーリーに、イーモンが笑顔のまま、続けた。
「愛されて当然。甘やかされて当然。肯定されて当然といわんばかりのお前の態度。表情。言葉。いい加減、うんざりしていたのはなにも、エディだけじゃないんだよ」
拳を震わせ、ルソー伯爵が叫ぶ。ルソー伯爵夫人は、ええ、と答えた。
「ルソー伯爵家との繋がりはいまや、リスクの方が高い。お父様に相談したら、納得してもらえましたので、ご心配なく」
「お、女の一存で離縁はできんだろうが!」
「そうですね。男は、一方的に離縁できますのに……なんと、不平等なことか」
「法で決まっていることに、難を示すか」
「いいえ。ただ、わたくしはこれから、あなたに従うつもりはありません。コーリーの機嫌うかがいも終いです。だから、離縁してくれるのでしょう? そう言っていましたものね?」
ぱあん。
ルソー伯爵は、怒りのまま、ルソー伯爵夫人の頬を叩いた。コーリーは驚愕に目を見開いていたが、ルソー伯爵夫人は、思いのほか、冷静だった。
「……なんてひどい。慈善活動家を名乗るお方が、妻を打つなんて」
「自業自得だろう!!」
「──父上。そのへんにしておいた方が、よろしいかと」
二階からゆっくりと階段を下ってきたのは、イーモンだった。
「母上は、父上が思っているよりずっと、強かですよ」
「うるさい! お前ごときが私に意見するな!!」
穏やかで、優しい家族。そう思っていたコーリーは、パニックになっていた。冷たく、離縁を迫る母親。怒鳴り散らし、あまつさえ母親を打った父親。
(……なんで。お兄様のことだけでもう、気が変になってしまいそうなのに)
「……イーモンお兄様! お父様も、お母様も変なんですっ」
コーリーが、縋るようにイーモンに駆け寄った。イーモンが、にっこりと笑う。ほっとしたのもつかの間。
「お前が知らなかっただけで、あの二人は、ずっとああだよ。どこも変じゃない」
「…………へ?」
「しかし、驚いたな。これまでエディとミア嬢の邪魔ばかりしていたあげくの、お前の妄言。それをなんの疑いもなく、信じた父上。よく、ジェンキンス伯爵たちは許してくれたね。誤算だったなあ」
「……イーモンお兄様?」
ぱちくりとするコーリーに、イーモンが笑顔のまま、続けた。
「愛されて当然。甘やかされて当然。肯定されて当然といわんばかりのお前の態度。表情。言葉。いい加減、うんざりしていたのはなにも、エディだけじゃないんだよ」
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