真実の愛は、誰のもの?

ふまさ

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「……ミア?」

「コーリーから、あなたたちは従兄弟で、本当の兄妹ではないと聞きました。あ、愛し合っていると……」

 目を潤ませるミアに、エディはふっと表情を緩めると、そっとミアを抱き締めた。

「僕が愛しているのは、きみだけだよ。それに、その問題は解決したんだ。ジェンキンス伯爵のおかげでね」

「ど、どういうことですか……?」

「うん。最初から、ぜんぶ話すよ。聞いてくれるかな」

 そう言ったエディの笑顔は、見たことがないほど穏やかで、晴れ晴れとしていた。




 ミアが、膝の上に置いた拳を震わせ、涙を必死に堪える。三歳のころからずっとエディが脅迫されていたと知ったミアは、ルソー伯爵に対する怒りで、どうにかなりそうだった。

 ミアが「……いまから、ルソー伯爵を殴りに行ってきます」と寝台からすくっと立ち上がると、エディは、声を上げて笑いはじめた。

「わ、笑い事ではありません。わたし、そんなことも知らず、あなたを責めて……っ」

「隠していたんだから、知らなくて当然だよ。それに、ミアに責められた記憶なんてないし。それよりほら、座って? まだ話しの途中だよ」

「……はい」

 ぐすっと鼻をならし座るミアを愛おしく見ながら、エディは続けた。

「それでね。無事、ルソー伯爵家から解放された僕は、ジェンキンス伯爵の、親戚の養子になる予定なんだ。子どもはもう、二人とも成人していてね。とても優しい人たちだそうで。近々、顔合わせさせてもらえそうなんだ」

 嬉しそうに語るエディに、ミアの心が落ち着いていく。

 ──ああ、こんな。

「……こんなエディ、はじめて見ました」

「? どんな?」

「そう、ですね。哀しそうでも、苦しそうでもなくて……無理にではなく、心から笑っているような。真実を知ったいまだからこそ、そんな風に感じるのかも知れませんが……」

「……そっか。心配かけて、ごめんね」

「いえ、そんな。話してくれて、嬉しかったです。でも……できれば、もっと早く知りたかったです」

「……うん」

 ルシンダが言った。真実を話しても、大丈夫よ。そこまでミアは弱くないわ、と。だからこそ、決心できた。いずれは話すことになったとしても、こうも早くに決断はできなかっただろう。

 ──でも。


「あの、エディ。わたし、王都にいたはずなのに、どうしてお父様のお屋敷にいるのでしょう。王都からここまで何日もかかるはずなのに、まるで記憶がなくて……」

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