どうやら、我慢する必要はなかったみたいです。

ふまさ

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「あなたのベイジルに対する愛は、その程度のものだったのですか? そんな、世間体なんてちっぽけなもの、どうだっていいではないですか。愛する人と一緒に居られる。それ以上の幸せが、どこに?」

「で、でも……」

「たとえ家族から勘当されようと、ベイジルはとても優秀な方ですから。いくらでも生きようはあります。なにより、誰より愛するあなたが傍にいてくれるのですから」

 ゆっくり。努めて優しい口調で語る。

「それに、これは考えうる最悪のパターンです。二人がみなに祝福される未来だって、充分にありえるではありませんか」

「そう、なのでしょうか……?」

「ええ。だって、婚約者であるわたしが、ベイジルの幸せのために、二人に一緒になってもらいたいと願っているのですから。お父様とロペス伯爵は、わたしが責任を持って説得します」

「ほんとですか?!」

「はい。代わりといってはなんですが、約束してほしいことがあります。良いですか?」

「あ、あたしにできることなら……」

「そんなに身構えないでください。わたしはただ、わたしとベイジルが婚約を解消したあと、ベイジルとあなたにちゃんと婚約してほしいだけですから。最初は周りから批難されるかもしれませんが、逃げないでベイジルと一緒になると約束してください」

「な、なるほど。はい。覚悟を決めます」

「嘘ではありませんね?」

「もちろんです!」

「……正式な書類にサインできますか?」

「そんな内容なら、喜んで!」

 それを聞いて安心しましたと笑みながら、しかし、とクラリッサはあからさまに声のトーンを落とした。

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