どうやら、我慢する必要はなかったみたいです。

ふまさ

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 モンテス伯爵の屋敷に着くと、待ち構えていたように顔馴染みの執事に出迎えられた。いつも愛想の良い執事が、今日はやけに素っ気ない。

(クラリッサのやつ……っ)

 ベイジルの幸せのために別れますと言い、最悪、ネリーとの不貞行為も口にしたのかもしれないと考えたベイジルは、怒りから舌打ちしそうになるものの、なんとかおさえ、クラリッサたちがいるという応接室の前に立った。

「ベイジル様がいらっしゃいました」

 執事が声をかける。数秒経ってから響いた、入れ、との声に、執事がすっと右にそれ、腰を折る。ベイジルはごくりと生唾を呑み込んでから「失礼します」と告げ、応接室の扉を開けた。

 流石に緊張しているのか。顔を強張らせたベイジルが、応接室のテーブルを囲うように座るモンテス伯爵、モンテス伯爵夫人、クラリッサを視界に入れる。

「あの、クラリッサからなにか聞かされたと思いますが──」

 張り詰められた空気に、早速言い訳をはじめようとしたベイジルを、すぐ真横から殺意を込めた視線で睨み付ける者が一人。

 その存在に気付いたときにはもう、ベイジルの左頬にはこぶしが捻りこまれ、吹っ飛ばされていた。

「…………っっ」

 手加減なしの力に、床に倒れたベイジルの身体が一度、バウンドした。

「…………?」

 左頬と共に、倒れたときに打ち付けた頭が痛んだが、あまりに突然の出来事に思考が追いつけず、ベイジルが呆然とする。

「──とっとと起きろ。話し合いをはじめる」

 吐き捨てられた言葉に、ベイジルはよろよろと起き上がり「……父上?」と、目を丸くした。

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