婚約者はわたしよりも、病弱で可憐な実の妹の方が大事なようです。

ふまさ

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 リアとモーガンの婚約が解消──実際は婚約破棄なのだが──されたことは、あっという間に学園に知れわたった。その理由について、両者ともに口を閉ざしたが、みなはモーガンの妹であるアビーにあるのではないかと噂した。

 もともとの、リアとモーガンとアビーの関係性に加え、アビーはリアの悪口と共に、兄のモーガンが一生私のそばにいてくれると言ったのだとみんなに触れ回ったことが原因だった。

 おかけで、モーガンの元にやってくる令嬢たちは、決まってこんな科白を言うようになった。

「モーガン様。私なら、アビー様と仲良くやれる自信がありますわ」

「モーガン様。私、アビー様と一緒に暮らすことになっても構いません」

 あげく。

「私は、モーガン様がいずれ継ぐ爵位にだけ用があります。ですから私のこと、愛さなくても結構です。どれだけ妹様を優先しようと、私はなにも言いません。ですからどうか」

 こんなことまで言われるようになってしまった。貴族の間では、政略結婚など珍しくもない。けれどモーガンは──いや、誰だって、愛する人と結婚したいだろう。

 モーガンは一人、教室の片隅で座りながら、頭を抱えている。寄ってくるのは、家の爵位が公爵より下の令嬢ばかり。下心を隠そうともせず、話しかけてくる。モーガンはもう、うんざりしていた。脳裏に浮かぶのは、笑顔のリアの顔ばかり。

 あの二人は、兄妹で愛し合っている。そんな噂すら耳にすることがある。それが嫌で、少なくとも学園にいる間だけでもアビーに近寄らないようにしているモーガンだったが──。

「──お兄様」

 真正面から呼ばれ、モーガンがうつむいたまま肩をびくりと震わす。嫌いではない。愛しくなくなったわけでもない。だから、拒絶もできないモーガンが顔をあげる。

「……どうしたんだい、アビー」

「クラスのみんなが、私を無視するのです。私は、なにもしていないというのに」

「……そうか。それは辛いね」

 アビーが「はい」と目をうるませる。モーガンはそれ以上、なにも言えなかった。どうしてアビーが無視をされているのか。モーガンは、今なら少しわかる気がしていた。

(……アビーが、どんな言いがかりをつけるかわからないからじゃないのか……?)

 そもそも、無視をされているということすらアビーの被害妄想かもしれない。もっと早くこのことに気付いていれば、リアもレナルドも、失わずにすんだかもしれないのに。

 リアはモーガンに、アビーにされたことを、レナルド以外には誰にも話していない。最後の情として、せっかく口をつぐんでくれたのに、アビーが台無しにした。モーガンはそんなことすら、頭の隅で考えるようになってしまった。

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