政略結婚だと思われていたのですね。わかりました。婚約破棄してさしあげます。

ふまさ

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 奮起するラナを見て、大丈夫そうだと安心したリタは、あらためて話しを続けることにした。

「もしこれが正解なら、例えばラナが真実を話したとしても、向こうのご両親は否定するでしょうね。それこそ必死に」

 リタの言葉に、ラナは強くこぶしを握った。怒りのためか、ぶるぶると震えている。

「昨日の二人のやり取りを、ニックの両親とわたしの親に見てもらえていれば……っ」

「確かに、それが一番いいとは思うけれど……」

 リタは顎に手を当て、考える素振りを見せた。

「ラナのあからさまな拒絶が続けば、きっとニックは焦って、レズリーと内密に会うことを止めてしまうのではないかしら」

「そ、それは困るわ!」

 ラナが青ざめる。ラナが両親に真実を話し、それを両親が信じて婚約を破棄できたとしても、それではもう、ラナの中の怒りはおさまりそうもなかった。もはやラナの一番の願いは、あの二人の逢瀬を、二人が吐き捨てた科白を、みなに見て、聞いてもらうことになっていた。

「公爵家の娘との婚約破棄なんて、家の存続にも関わりかねないことだからね」

 ましてラナの父親であるクライン公爵は、娘のラナを溺愛している。長女だからと厳しく育てられたラナにはあまり自覚がないようだが、まわりから見ていれば一目瞭然だったりする。そんなクライン公爵がこのことを知れば、いったいニックはどうなるのだろうか。きっとレズリーだって、ただではすまないだろう。ラナはそのあたり、気付いているのか。いないのか。とにもかくにも、婚約破棄ごときでクライン公爵が許すとはとうてい思えない。

 私の知ったことではないけれど。と、リタは胸中で吐き捨てた。大事な幼馴染みを裏切り、傷付けた二人。リタだって充分、はらわたが煮え繰り返っていたから。

 一方のラナは、なにやらぶつぶつと一人で呟いている。

「……じゃあ、わたしが今まで通りにしていたら、あの二人はまた逢瀬を重ねてくれるかしら」

 なんとも可笑しな言い方だと、リタは思わず苦笑してしまった。それにしても。

「でも、ニックとレズリーの本性を知ったあなたが、そんなこと出来るの?」

 自暴自棄になってやしないか。あんなに大切にしていた二人の裏切り。そんな簡単に乗り越えられるものなのか。心配そうに訊ねるリタに、ラナはにやりと口角を上げてみせた。

「やってみせるわ。今度はわたしの演技で、二人を騙す番よ」

 ふふふふふふふ。
 見たことのない笑みを浮かべるラナ。無理しているのか、いないのか。もはやリタにも判断できなかった。

 
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