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姿を見せたロッティに、ジェフが必死に言い訳をする。
「ロッティ、違うんだ。きみがリンジーから何を吹き込まれたかは知らないが、それは全て彼女の妄想なんだ……っ」
「……妄想?」
「そうだよ。私は、彼女があまりにも憐れだったから、仕方なく相手をしていたに過ぎない」
どくん。ロッティの鼓動が大きく跳ねた。
「……相手って、どんなことをしていたの?」
問いかけながら、願った。デートも口付けもはじめてで、それ以上の関係はない。そう言って、と。
「そ、それは」
「……ねえ、ジェフ。全て正直に話して。今ここで、また嘘をつかれたら、わたしはもう、あなたを一生信じられなくなってしまうわ」
心からの科白だった。お願い。嘘はつかないで。その上で、言ってほしい。あの人が言っていたことは、全て嘘だったと。
──お願い。
「……彼女と、何度か身体を重ねたことがある」
ロッティは息を呑んだ。何かが。自分の中の何かが、ガラガラと崩れていくのがわかった。それはジェフへの愛情だったのかもしれない。
「──でも、これだけは信じてくれ。私が愛しているのはきみだけだ。生涯、ロッティだけだよ。リンジーがあまりに憐れに泣いてすがるから、私はそれを邪険にできなかっただけなんだ」
リンジーが「……ジェフ様?」と静かに涙を流すが、ジェフはもう、見向きもしない。
ロッティの中に、リンジーに対する怒りはなくなっていた。ただ、可哀想だなとぼんやり思った。つい先ほどまで確かに好意を持っていたはずの相手を、何度も憐れと言い、全ての責任をリンジーになすりつけようとしているジェフ。少なくとも、ロッティはそんな風に感じていた。感じて、どんどんジェフに幻滅していく。
「私は何度も言った。愛する妻がいるから、もう終わりにしたいと。けれどリンジーは、私を諦めてはくれなかった。今日の誘いにのったのも、これで最後だと言われたからだ」
ロッティはジェフの言葉を、ただ静かに聞いていた。もうなにも、響いてこなかった。
「そうだ。きみも見ていたなら、わかってくれたんじゃないかな。あの口付けは、無理やりされたものだ。そもそも私は、リンジーと一度も口付けをしたことがない。だってそれは、ロッティとだけの特別なものだから」
必死にまくし立てるジェフ。
心の中で、ロッティはローレンスにそっと話かけていた。
(……ねえ、ローレンス。やっぱり、わたしも裏切られていたみたい)
ロッティは胸中で静かに、ジェフとの別れを決意した。
「ロッティ、違うんだ。きみがリンジーから何を吹き込まれたかは知らないが、それは全て彼女の妄想なんだ……っ」
「……妄想?」
「そうだよ。私は、彼女があまりにも憐れだったから、仕方なく相手をしていたに過ぎない」
どくん。ロッティの鼓動が大きく跳ねた。
「……相手って、どんなことをしていたの?」
問いかけながら、願った。デートも口付けもはじめてで、それ以上の関係はない。そう言って、と。
「そ、それは」
「……ねえ、ジェフ。全て正直に話して。今ここで、また嘘をつかれたら、わたしはもう、あなたを一生信じられなくなってしまうわ」
心からの科白だった。お願い。嘘はつかないで。その上で、言ってほしい。あの人が言っていたことは、全て嘘だったと。
──お願い。
「……彼女と、何度か身体を重ねたことがある」
ロッティは息を呑んだ。何かが。自分の中の何かが、ガラガラと崩れていくのがわかった。それはジェフへの愛情だったのかもしれない。
「──でも、これだけは信じてくれ。私が愛しているのはきみだけだ。生涯、ロッティだけだよ。リンジーがあまりに憐れに泣いてすがるから、私はそれを邪険にできなかっただけなんだ」
リンジーが「……ジェフ様?」と静かに涙を流すが、ジェフはもう、見向きもしない。
ロッティの中に、リンジーに対する怒りはなくなっていた。ただ、可哀想だなとぼんやり思った。つい先ほどまで確かに好意を持っていたはずの相手を、何度も憐れと言い、全ての責任をリンジーになすりつけようとしているジェフ。少なくとも、ロッティはそんな風に感じていた。感じて、どんどんジェフに幻滅していく。
「私は何度も言った。愛する妻がいるから、もう終わりにしたいと。けれどリンジーは、私を諦めてはくれなかった。今日の誘いにのったのも、これで最後だと言われたからだ」
ロッティはジェフの言葉を、ただ静かに聞いていた。もうなにも、響いてこなかった。
「そうだ。きみも見ていたなら、わかってくれたんじゃないかな。あの口付けは、無理やりされたものだ。そもそも私は、リンジーと一度も口付けをしたことがない。だってそれは、ロッティとだけの特別なものだから」
必死にまくし立てるジェフ。
心の中で、ロッティはローレンスにそっと話かけていた。
(……ねえ、ローレンス。やっぱり、わたしも裏切られていたみたい)
ロッティは胸中で静かに、ジェフとの別れを決意した。
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