不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ

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 不倫の証拠はない。だから、ジェフの口から直接、親たちの前で謝罪してもらい、それを証拠としよう。ロッティはそう考えた。

 ジェフと共に、馬車が待つ方へと向かう。ふとロッティが後ろを振り返ると、置き去りにされたリンジーが、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ジェフの背を見ていた。

(……あなたはまだ、ジェフのこと愛してる……?)

 胸中で問いかけながら、ロッティは前を向いた。


 これまでの不貞行為が、ジェフの口から語られる。両家の親はただただ驚愕していたが、ローレンスだけは、頭を抱えていた。馬鹿が。そう聞こえてきそうなほど、顔が歪んでいた。

 ローレンスは顔をあげ、ロッティを見た。視線が交差する。ロッティは、泣き笑いを浮かべた。瞬間に、ローレンスは悟ってしまった。ロッティは、ジェフと離縁するつもりなのだと。

 なのに。弟はまるでそのことに気付いていないのか。「怒りは最もです。でも、もうロッティとの話し合いはすんでいます。赦しも得ました。だから」と必死に言葉を紡いでいる。

 そういえば、とローレンスの脳裏にジェフとの会話が過った。妻と離縁すると知ったとき、ジェフはローレンスを非難した。一度のあやまちぐらい、赦してあげればよいのに。それが本当の愛なのではないですか。兄上は心が狭すぎる、と。

 きっと弟は、ロッティが赦してくれると信じて疑っていないのだろう。だからこそ、不倫を続けていられたのかもしれない。

「──本当か?」

 確認するように訊ねると、ジェフは「はい。両家の親に謝罪し、もう二度としないと誓うのなら、赦すと言ってくれました。そうだよね、ロッティ」と自信満々に答えた。

 ジェフが隣に立つロッティを見る。ジェフはようやくロッティの表情に気付いたのか、ここにきてはじめて困惑の色を見せはじめた。

「ロッティ……? どうしたんだ。答えてくれ」

 ジェフがロッティに震える手を伸ばす。ロッティが静かに顔をあげる。表情は変わらず哀しげに歪んでいたが、その双眸には、確かな決意が宿っているように見えた。

「──ねえ、ジェフ。わたし、赦すなんて言ってないよ……?」

 裏切りが赦せないのは、心が狭いから?
 本当に愛していないから?

 違うだろう。

 愛しているから、深く傷付いた。信じていたからこそ、裏切りが赦せなかった。

 ──お前は、そんなことすらわからないのか。

 ローレンスは重く、深いため息をついた。
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