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「……妹のリビーとアントン様が、深夜に密会していたんです。そのとき、リビーは、わたしが魔物に殺されればいいと……そしてアントン様は、そ、そうだねって……そしたらリビーが聖女になっていたのにと、言っていて……っ」
しゃくりあげながら、エリノアが話す。クリフは驚きながらも、慰めるように、うんと相槌を打ちながら、エリノアの頭を撫でる。
「……でも、アントン様はいつまで経っても死なないわたしに嫌気がさしたんです……だから、男にわたしの殺害を依頼したんです……っっ」
エリノアの頭を撫でるクリフの手が、ぴたりと止まった。
「──男とは、きみを昨日襲った賊のこと? どうしてそう思ったの?」
「お、男が言ってたんです……殺害を頼まれたって……だからっ」
エリノアから離した手を、クリフは顎にあてた。黙考するクリフに、エリノアはどうしようもない不安を覚えた。
「しょ、証拠はなにもありませんが、嘘じゃありません……っ」
信じて。涙でぐちゃぐちゃになった顔で、必死に訴えてくるエリノア。クリフは、はっとしたように優しく微笑んでみせた。
「大丈夫。疑っているわけじゃないよ」
「ほ、本当ですか……?」
クリフはポケットからハンカチを取り出すと、エリノアの涙を優しく拭いはじめた。
「うん。さっきも言った通り、そもそもわたしがここに来たのは、友人に頼まれて、昨日のことをきみに聞きにきたからなんだ。きみのような確信はなくとも、昨日の事件に、わたしの友も、アントン・ゴーサンスに不信感を抱いたようでね」
不信感、と、エリノアがそんな考えなど思いつかなかったように呟くのを見て、クリフは苦笑した。
「……アントン・ゴーサンスが、きみを大切にしているようで、していないこと。そして、婚約者であるはずのアントン・ゴーサンスに触れられた聖女エリノアの顔が、僅かながらに強張ることも、話してくれた。気のせいかもしれないけど、と付け加えていたけど、どうやら友人は正しかったようだ」
エリノアは目を丸くした。見ていてくれた人がいたんですね。と、先ほどまでとは違う涙を流しながら、独り言のように吐露した。
しゃくりあげながら、エリノアが話す。クリフは驚きながらも、慰めるように、うんと相槌を打ちながら、エリノアの頭を撫でる。
「……でも、アントン様はいつまで経っても死なないわたしに嫌気がさしたんです……だから、男にわたしの殺害を依頼したんです……っっ」
エリノアの頭を撫でるクリフの手が、ぴたりと止まった。
「──男とは、きみを昨日襲った賊のこと? どうしてそう思ったの?」
「お、男が言ってたんです……殺害を頼まれたって……だからっ」
エリノアから離した手を、クリフは顎にあてた。黙考するクリフに、エリノアはどうしようもない不安を覚えた。
「しょ、証拠はなにもありませんが、嘘じゃありません……っ」
信じて。涙でぐちゃぐちゃになった顔で、必死に訴えてくるエリノア。クリフは、はっとしたように優しく微笑んでみせた。
「大丈夫。疑っているわけじゃないよ」
「ほ、本当ですか……?」
クリフはポケットからハンカチを取り出すと、エリノアの涙を優しく拭いはじめた。
「うん。さっきも言った通り、そもそもわたしがここに来たのは、友人に頼まれて、昨日のことをきみに聞きにきたからなんだ。きみのような確信はなくとも、昨日の事件に、わたしの友も、アントン・ゴーサンスに不信感を抱いたようでね」
不信感、と、エリノアがそんな考えなど思いつかなかったように呟くのを見て、クリフは苦笑した。
「……アントン・ゴーサンスが、きみを大切にしているようで、していないこと。そして、婚約者であるはずのアントン・ゴーサンスに触れられた聖女エリノアの顔が、僅かながらに強張ることも、話してくれた。気のせいかもしれないけど、と付け加えていたけど、どうやら友人は正しかったようだ」
エリノアは目を丸くした。見ていてくれた人がいたんですね。と、先ほどまでとは違う涙を流しながら、独り言のように吐露した。
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