聖女の婚約者と妹は、聖女の死を望んでいる。

ふまさ

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「──愚か者め。賊に殺しを依頼したあの兵士の顔を見たときのお前の表情を、ここにいるみなが注視していた。あれをどう説明する」

 国王の言葉に、リビーは「そんなもの、何の証拠にもならなくないですか?!」とヒステリックに叫び、エリノアの元に駆け寄った。

「お姉ちゃん! あたしが、お姉ちゃんの殺害なんて怖ろしいこと、頼むと思う?!」

 エリノアは感情を表に出すことなく、思うわ、と淡々と答えた。リビーが、目に見えて動揺しはじめた。

「…………お、お姉、ちゃん? なに、馬鹿なこと……こんなときにそんな冗談やめてよ。さっき、王様が言ってたこと聞いてた? 処刑とか言ってたんだよ……? お姉ちゃんは、あたしが処刑されてもいいの?」


「──お姉ちゃんなんか、魔物に殺されてしまえばいいのに」


 エリノアが口にした科白に、リビーはゆっくりと、目をはちきれんばかりに見開いていく。次いでエリノアは、アントンを見た。


「リビーがそう言ったあと、アントン様は、こう答えていましたよね。『そうだね。エリノアさえいなければ、聖女には、きみがなっていたのにね』と。覚えていますでしょうか」

「……あ……」

 アントンが、大量の汗を流しはじめた。エリノアが、覚えているようですね、と薄く笑う。

「……あたしのあと、つけたの?」

 俯きながら、リビーがぼそっと口を開いた。

「一度だけね」

「……盗み聞き、してたんだ」

「そうね」

 小さなやり取りのあと、リビーは、ボロボロと涙を流しはじめた。

「……あたしが、馬鹿だった。聖女になれば一緒になれるなんて言葉信じて、騙されて……たった一人のお姉ちゃんに、ひどいことして……」

 ごめんなさい。ごめんなさい。
 謝罪を繰り返すリビーに、アントンが、ふざけるなと怒鳴った。

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