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「え、あ……っ」
サイラスがその場を去ろうとするセシリーの腕を掴もうとした。だが、近くにいたカミラに行く手を阻まれてしまった。
「サイラス殿下。妹が、大変失礼いたしました」
サイラスは「……妹? お前の?」と、心底不思議そうに小首をかしげた。
「ええ、お恥ずかしながら」
まわりの令嬢たちが、クスクス笑い出す。
「あなたとは、似ても似つかないですものね」
「本当に姉妹なのですか?」
カミラが「残念ながら」と苦笑し、サイラスに近付く。腕を絡めようとしたが、サイラスはさっとそれを避けてしまった。
「申し訳ない。息子は……その、一年前に事故に遭ってから、しばらく療養していたものでね。少し人見知りになってしまったようだ」
国王が申し訳なさそうに告げると、令嬢たちは、まあ、と哀しそうに眉尻をさげた。
「そうだったのですね。何とお可哀想に……あたしに何か、できることはないでしょうか。サイラス殿下のお力になりたいのです」
瞳を潤ませ、カミラが祈るように両手を組む。サイラスは右手で顔を覆いながら、絞るように声を出した。
「──なら、一つだけ頼みがある」
「何ですか、それは!」
馬車に揺られながら、セシリー付きの侍女──デイナが、怒りをあらわにしながら叫んだ。正面に座るセシリーが、諦めのようにため息をつく。
「あれだけ綺麗な顔をしていて、まわりも美形だらけだもの。わたしの不細工な顔が、心底珍しかったのね」
「お嬢様は不細工などではありません! 何度言えばわかっていただけるのですか!?」
「ふふ、ありがとう。そう言ってくれるのは、あなたたちだけね。本当に王族って、顔だけは綺麗よね」
セシリーは窓から、遠くの空を仰いだ。
「……その代償があの驕りなのだとしたら、わたしは、この顔で良かったのかもしれないわ」
「お嬢様……」
自身も王族の血を引きながらも、セシリーは、王族が大嫌いだった。
サイラスがその場を去ろうとするセシリーの腕を掴もうとした。だが、近くにいたカミラに行く手を阻まれてしまった。
「サイラス殿下。妹が、大変失礼いたしました」
サイラスは「……妹? お前の?」と、心底不思議そうに小首をかしげた。
「ええ、お恥ずかしながら」
まわりの令嬢たちが、クスクス笑い出す。
「あなたとは、似ても似つかないですものね」
「本当に姉妹なのですか?」
カミラが「残念ながら」と苦笑し、サイラスに近付く。腕を絡めようとしたが、サイラスはさっとそれを避けてしまった。
「申し訳ない。息子は……その、一年前に事故に遭ってから、しばらく療養していたものでね。少し人見知りになってしまったようだ」
国王が申し訳なさそうに告げると、令嬢たちは、まあ、と哀しそうに眉尻をさげた。
「そうだったのですね。何とお可哀想に……あたしに何か、できることはないでしょうか。サイラス殿下のお力になりたいのです」
瞳を潤ませ、カミラが祈るように両手を組む。サイラスは右手で顔を覆いながら、絞るように声を出した。
「──なら、一つだけ頼みがある」
「何ですか、それは!」
馬車に揺られながら、セシリー付きの侍女──デイナが、怒りをあらわにしながら叫んだ。正面に座るセシリーが、諦めのようにため息をつく。
「あれだけ綺麗な顔をしていて、まわりも美形だらけだもの。わたしの不細工な顔が、心底珍しかったのね」
「お嬢様は不細工などではありません! 何度言えばわかっていただけるのですか!?」
「ふふ、ありがとう。そう言ってくれるのは、あなたたちだけね。本当に王族って、顔だけは綺麗よね」
セシリーは窓から、遠くの空を仰いだ。
「……その代償があの驕りなのだとしたら、わたしは、この顔で良かったのかもしれないわ」
「お嬢様……」
自身も王族の血を引きながらも、セシリーは、王族が大嫌いだった。
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