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「入りなさい」
国王の返答に、扉が開く。サイラスは「父上、ご用とは──」と言葉を途中で切り、セシリーを驚愕の表情で見つめた。それから国王へ視線を移すなり、声を荒げた。
「父上! これはどういうことですか?!」
「どうもこうもない。こういうことは、早目に話しておいたほうが良いだろうと思ってな」
「……っ。せめて一言、相談くださればっ」
さっぱり状況が掴めないセシリーが、サイラスと国王を交互に見る。国王が「見なさい。彼女も混乱している。早く話してあげないと」と口調を強める。だがサイラスは、口をつぐんだまま。業を煮やしたのか、国王が代わりのように口を開いた。
「喜んでくれ。サイラスの呪いが無事、解かれたようなんだ」
セシリーはつい先ほど浮かんだばかりの閃きが現実となり「! そうなのですか? い、いったいどのように?」と、声がうわずってしまった。
「それがな。本人にもさっぱりわからないようなんだ。十日前、私と話しているときに突然──だったそうだ。ぽかんと私を見るから何事かと思ったよ」
はは。国王が笑う。セシリーは国王から、いまだに突っ立ったままのサイラスに目線を移した。良かったですね。そう言おうとしたのだが、サイラスは視線を落としたまま、こちらを見ようともしない。
「サイラス殿下……?」
セシリーは不思議だった。呪いが解けたというのに、どうしてサイラスはこんなに暗い表情をしているのだろう。
国王はしばらくセシリーと同じようにサイラスを見つめていたが、やれやれとため息をつき、口火を切った。
「それでだな、セシリー嬢。サイラスとの婚約についてなんだが」
そこでようやく、セシリーは理解した。自分がここに呼ばれたわけも、サイラスの表情がどうして暗いのかも。
セシリーは、小さく笑った。
「わかっております。婚約の話しを、なかったことにしたいのですよね?」
うつ向くサイラスの顔が、大きく歪むのがわかった。セシリーは改めてサイラスを見て、目を細めた。
「そんな顔、しないでください。呪いが解けたいま、わたしを選ぶ理由はありません。それぐらい、わたしも理解していますよ」
おお、そうか。国王は歓喜するが、サイラスの表情は変わらない。
「そういえば、いまはもう、わたしの本来の顔も認識出来るようになったんですよね──お見苦しいでしょう?」
これにサイラスは「……そんなことはない!」と叫んだ。ふふ。セシリーが微笑む。
「ありがとうございます、サイラス殿下。もう充分ですよ」
「…………っ」
サイラスがこぶしを握る。こんなわたしに心を痛めてくださるなんて、本当に優しいお方だ。セシリーは胸中で呟きながら、早々に応接室を後にした。
きっと。もう二度と、言葉を交わすことなどないだろう。揺れる馬車でそんなことを思いながら、セシリーは一筋の涙をこぼした。けれどすぐにそれを拭い、セシリーは前を向いた。
国王の返答に、扉が開く。サイラスは「父上、ご用とは──」と言葉を途中で切り、セシリーを驚愕の表情で見つめた。それから国王へ視線を移すなり、声を荒げた。
「父上! これはどういうことですか?!」
「どうもこうもない。こういうことは、早目に話しておいたほうが良いだろうと思ってな」
「……っ。せめて一言、相談くださればっ」
さっぱり状況が掴めないセシリーが、サイラスと国王を交互に見る。国王が「見なさい。彼女も混乱している。早く話してあげないと」と口調を強める。だがサイラスは、口をつぐんだまま。業を煮やしたのか、国王が代わりのように口を開いた。
「喜んでくれ。サイラスの呪いが無事、解かれたようなんだ」
セシリーはつい先ほど浮かんだばかりの閃きが現実となり「! そうなのですか? い、いったいどのように?」と、声がうわずってしまった。
「それがな。本人にもさっぱりわからないようなんだ。十日前、私と話しているときに突然──だったそうだ。ぽかんと私を見るから何事かと思ったよ」
はは。国王が笑う。セシリーは国王から、いまだに突っ立ったままのサイラスに目線を移した。良かったですね。そう言おうとしたのだが、サイラスは視線を落としたまま、こちらを見ようともしない。
「サイラス殿下……?」
セシリーは不思議だった。呪いが解けたというのに、どうしてサイラスはこんなに暗い表情をしているのだろう。
国王はしばらくセシリーと同じようにサイラスを見つめていたが、やれやれとため息をつき、口火を切った。
「それでだな、セシリー嬢。サイラスとの婚約についてなんだが」
そこでようやく、セシリーは理解した。自分がここに呼ばれたわけも、サイラスの表情がどうして暗いのかも。
セシリーは、小さく笑った。
「わかっております。婚約の話しを、なかったことにしたいのですよね?」
うつ向くサイラスの顔が、大きく歪むのがわかった。セシリーは改めてサイラスを見て、目を細めた。
「そんな顔、しないでください。呪いが解けたいま、わたしを選ぶ理由はありません。それぐらい、わたしも理解していますよ」
おお、そうか。国王は歓喜するが、サイラスの表情は変わらない。
「そういえば、いまはもう、わたしの本来の顔も認識出来るようになったんですよね──お見苦しいでしょう?」
これにサイラスは「……そんなことはない!」と叫んだ。ふふ。セシリーが微笑む。
「ありがとうございます、サイラス殿下。もう充分ですよ」
「…………っ」
サイラスがこぶしを握る。こんなわたしに心を痛めてくださるなんて、本当に優しいお方だ。セシリーは胸中で呟きながら、早々に応接室を後にした。
きっと。もう二度と、言葉を交わすことなどないだろう。揺れる馬車でそんなことを思いながら、セシリーは一筋の涙をこぼした。けれどすぐにそれを拭い、セシリーは前を向いた。
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