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「婚約? よりにもよってセシリーと? 気でも狂いましたか、サイラス殿下」
父親が呆気にとられながらぼやく。すると兵士二人が剣を抜き、その切っ先を父親に向けた。
「ちゃんと聞いていましたか? 殿下ではなく、陛下です」
「それと、陛下の婚約者様に向かっての暴言はやめてください。不敬罪となりますよ」
両親が怒りで顔を真っ赤にしていき、次々に怒鳴りはじめた。
「たかが兵士風情が……王族に剣を向けるとは何事だ!」
「そうよ! あなたたちこそ、不敬罪で死刑にしてやるわ!」
サイラスは片眉をあげ「……ほう?」と低く呟き、恐る恐るといった風に集まってきたこの屋敷の使用人たちを見回した。
「お前たちの証言があれば、こいつらをこの場で捕らえることができるが、どうだ?」
使用人たちがざわっとする。セシリーも動揺を隠せず、サイラスを見上げる。
カミラは「王族は裁けませんよ。法でそう決められていますから。そんなこともご存知ないのですか?」と鼻で笑ったが、続けられたサイラスの言葉に、かたまった。
「裁けるさ。わたしがそのように法をかえたからな」
「……え?」
「王族だろうと関係ない。法を犯せば、平等に罰せられる。お前たちはどんな罪にとわれるのだろうな。脅迫罪か? 傷害罪か?」
父親が「そんなのは嘘だ!」と叫ぶが、サイラスは一笑する。
「嘘ではないさ。その証拠に父上たちはいま、地下牢に捕らえられている」
両親たちが絶句する。もはや何が起きているのかもわからず、呆然とするばかり。それはセシリーも同じだった。
その時。
「わ、私は奥様に、熱湯をかけられたことがあります!」
使用人の一人が叫んだ。次に「ぼくは旦那様に手の甲をフォークで刺されたました……っ」との声があがった。それからも続々と、堰を切ったように使用人たちが──中には泣きながらこれまでのことをサイラスに訴えはじめた。
セシリーは涙を滲ませた。自分が知っていた使用人たちの苦しみは、ほんの一部に過ぎなかったのだと、思い知らされたからだ。
「……そうか。今までよくたえてくれた。そして……すまない。こいつらには、相応の罰を与えることを約束しよう──連れていけ。証言は充分にとれた」
「はっ」
サイラスの命に兵士たちが両親と姉に手枷をつけた。むろん全員が叫び、暴れたが、兵士たちに力で敵うはずもなく。
「ちょっと待ってよ! どうしてセシリーは何もされないの? おかしいじゃない! あいつもあたしたちと同じことしてたのに!!」
半狂乱になりながらカミラが喚く。サイラスが口を開く前に、使用人たちが「そんなの嘘です!」と声を荒げた。
「セシリーお嬢様は唯一、わたしたち使用人に優しくしてくれたお方です!」
「そうです。あなたたちに負わされた怪我を、もう何度も手当てしてもらいました!」
カミラが「はあ?!」と顔を歪める。父親も母親も「使用人ごときが! 天罰がくだるぞ!」「神に等しい王族にこんなことしてただですむと思っているの?!」と目を吊り上げている。
セシリーは目を疑った。美しいはずの両親と姉の顔が、あまりに醜く歪んで見えたからだ。同じことを思ったのか。
「……醜いな」
サイラスがぽつりと、そう呟いたのが聞こえた。
父親が呆気にとられながらぼやく。すると兵士二人が剣を抜き、その切っ先を父親に向けた。
「ちゃんと聞いていましたか? 殿下ではなく、陛下です」
「それと、陛下の婚約者様に向かっての暴言はやめてください。不敬罪となりますよ」
両親が怒りで顔を真っ赤にしていき、次々に怒鳴りはじめた。
「たかが兵士風情が……王族に剣を向けるとは何事だ!」
「そうよ! あなたたちこそ、不敬罪で死刑にしてやるわ!」
サイラスは片眉をあげ「……ほう?」と低く呟き、恐る恐るといった風に集まってきたこの屋敷の使用人たちを見回した。
「お前たちの証言があれば、こいつらをこの場で捕らえることができるが、どうだ?」
使用人たちがざわっとする。セシリーも動揺を隠せず、サイラスを見上げる。
カミラは「王族は裁けませんよ。法でそう決められていますから。そんなこともご存知ないのですか?」と鼻で笑ったが、続けられたサイラスの言葉に、かたまった。
「裁けるさ。わたしがそのように法をかえたからな」
「……え?」
「王族だろうと関係ない。法を犯せば、平等に罰せられる。お前たちはどんな罪にとわれるのだろうな。脅迫罪か? 傷害罪か?」
父親が「そんなのは嘘だ!」と叫ぶが、サイラスは一笑する。
「嘘ではないさ。その証拠に父上たちはいま、地下牢に捕らえられている」
両親たちが絶句する。もはや何が起きているのかもわからず、呆然とするばかり。それはセシリーも同じだった。
その時。
「わ、私は奥様に、熱湯をかけられたことがあります!」
使用人の一人が叫んだ。次に「ぼくは旦那様に手の甲をフォークで刺されたました……っ」との声があがった。それからも続々と、堰を切ったように使用人たちが──中には泣きながらこれまでのことをサイラスに訴えはじめた。
セシリーは涙を滲ませた。自分が知っていた使用人たちの苦しみは、ほんの一部に過ぎなかったのだと、思い知らされたからだ。
「……そうか。今までよくたえてくれた。そして……すまない。こいつらには、相応の罰を与えることを約束しよう──連れていけ。証言は充分にとれた」
「はっ」
サイラスの命に兵士たちが両親と姉に手枷をつけた。むろん全員が叫び、暴れたが、兵士たちに力で敵うはずもなく。
「ちょっと待ってよ! どうしてセシリーは何もされないの? おかしいじゃない! あいつもあたしたちと同じことしてたのに!!」
半狂乱になりながらカミラが喚く。サイラスが口を開く前に、使用人たちが「そんなの嘘です!」と声を荒げた。
「セシリーお嬢様は唯一、わたしたち使用人に優しくしてくれたお方です!」
「そうです。あなたたちに負わされた怪我を、もう何度も手当てしてもらいました!」
カミラが「はあ?!」と顔を歪める。父親も母親も「使用人ごときが! 天罰がくだるぞ!」「神に等しい王族にこんなことしてただですむと思っているの?!」と目を吊り上げている。
セシリーは目を疑った。美しいはずの両親と姉の顔が、あまりに醜く歪んで見えたからだ。同じことを思ったのか。
「……醜いな」
サイラスがぽつりと、そう呟いたのが聞こえた。
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