もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。

ふまさ

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 イライジャは生徒会長になった当初から、クラリスに仕事を押し付けていた。それは、きっと引き受けるだろうという確信が、イライジャにはあったから。

 王立学園に入学する前、イライジャは家庭教師から出された課題を、クラリスによく押し付けていた。クラリスは最初こそ戸惑っている様子だったが、イライジャが不機嫌になると、焦ったように、わかりました、と引き受けるようになった。それに味をしめたイライジャは、クラリスに何かを押し付けることに、罪悪感など、徐々に感じなくなっていった。

 いや、はじめからそんなもの、なかったのかもしれないが。

 それなのに、生徒会長の仕事を代わりにと頼んだとき、クラリスは、小さく反論した。それはイライジャ殿下のためにならないのでは、と。ムッとしたイライジャは、はじめて「なら、婚約を破棄してやろうか」と言ってみた。するとクラリスは、それは嫌ですと、縋り付いてきた。

 これは使える。再び味をしめたイライジャは、度々、この手を使うようになっていった。そして、側妃候補探しという名の女遊びは、日々、激しくなっていった。


「待たせてすまない、みんな」

 生徒会室に向かっていたはずのイライジャは、いつものようにそこを素通りし、学園の出入口まで来て、軽く手をあげた。

「イライジャ殿下!」

「お待ちしておりましたわ」

 そこには、イライジャを待ちわびていた三人の令嬢たちが集まっていた。イライジャは毎日、違う令嬢たちと出掛けることが、日課となっていた。

「──あの、イライジャ殿下」

 三人の令嬢たちに足早に近付こうとするイライジャに、背後から声をかける者がいた。イライジャが振り返ると、そこに、一人の令嬢がこちらに向かってハンカチを差し出していた。

「これ、落とされましたよ」

 令嬢が、はにかむ。対してイライジャは「……あー」と、戸惑った様子だった。

「どうかされたのですか?」

「ああ、いや。それ、もういらないから、きみにあげるよ」

「え? どうして……」

「美しくない者に触れたものは、持ちたくないんだよね、ぼく」

 ハンカチを持った令嬢が、目を瞠った。その光景を見ていたイライジャの取り巻きの令嬢たちは、クスクスと笑った。

「イライジャ殿下ったら。正直過ぎですよ?」

「そうかな。これでもオブラートに包んだつもりなんだけど」

 そういうことだから、ごめんね。
 イライジャは苦笑すると、三人の令嬢たちと一緒に、その場を後にした。


 残された令嬢は、一人、静かに涙を流した。

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