もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。

ふまさ

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 イライジャは王に相応しくない。そうまわりに思わせるためには、どうすればよいのか。

 正妃の子だというだけで国王に寵愛され、次期国王だと言われているイライジャに、疑問や不安を抱いている者は、確かにいる。それを、もっと助長させることができれば。

(……イライジャ殿下の本性を、もっと曝け出させることができれば)

 そのためには、信頼を得る必要がある。そう考えたクラリスは、イライジャに、偽りの想いを告げた。呆気ないほどにそれを信じたイライジャは、さっそく、側妃の話し持ち出してきた。

(何名か……一人じゃないのね)

 イライジャが愚かであればあるほど、クラリスの胸は高鳴った。ほら、やっぱり。そう確信できたから。

「家庭教師から出された課題が山積みでね」

 イライジャの部屋でお茶をしていると、唐突にイライジャがため息をついた。ちらっと机の上に積まれている課題の山を見てから、正面に座るクラリスに視線を移してきた。

 ──これは。と、クラリスは口元を緩めそうになったが、綺麗にそれを隠した。

「確かに大変そうですね。わたしにお手伝いできることがあれば、何でも申してください」

 するとイライジャは「ほんとか?!」と、目を輝かせた。

「なら、課題を手伝ってくれないか?」

 喜んで。とは言わず、でも、と言葉を濁すクラリスに、イライジャは食い下がった。

「手伝うと言ったばかりだろう。あの言葉は嘘だったのか?」

「と、とんでもありません。でも、あの。一つだけ、約束してくれませんか……?」

「何だ」

「わたしが課題を手伝ったことは、他言無用でお願いしたいのです」

「はは、そんなことか。もちろん、誰にも言わないさ。ぼくだって、お叱りを受けてしまうからね」

「そうですね」


 その日から、徐々に手伝いは増えていき、そう時間はかからず、イライジャは課題の全てをクラリスに押し付けるようになっていった。

 正直、きつかった。王妃教育も兼ねていたから。けれど、夢があるから頑張れた。
 
(馬鹿な王子様。これらは全て、王になるための必要な勉学だというのに)

 当初、クラリスが考えていたよりもずっとイライジャは愚か者だった。けれど、愚か者であればあるほど、クラリスの夢が近付いていく。

(……デクスター様。あなたの学園での評判。わたしにも、ちゃんと届いていますよ)


 クラリスは想いを秘め、自室の窓から、星空を見上げた。


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