もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。

ふまさ

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 恥ずかしいです。という言い訳はいつまでも続かず、クラリスはイライジャと、口付けをした。はじめて口付けをした日は、照れたふりをして、今日はもう帰りますと言い、馬車に飛び乗り、吐いた。それほどまでに、気持ちが悪かった。

(……あのとき、デクスター様が口付けをしてくれていなかったら、耐えられなかったかもしれない)

 口元を拭い、前を向く。イライジャに甘過ぎる国王には期待できないが、それでも少しずつ、少しずつ、イライジャに対する国王としての資質が疑われていっているのがわかる。

(もうあと一年で、王立学園に入学する。そしたら、もっと大勢の人がイライジャ殿下を見る)

 そもそもろくに勉強していないのだから、入学試験に合格できるかも怪しいものだが──あの国王のことだ。金と権力で、どうにかするかもしれない。

 それでも、きっと化けの皮が剥がれるときはくる。いや、剥がさせてみせる。


 ──一年後。

 デクスターと入れ替わるかたちで、クラリスとイライジャは王位学園に入学した。当然のように入学試験に合格したイライジャと、裏で手をまわしたであろう国王を心の中で軽蔑しながら、クラリスが改めて、決意を固める。

(二年生、三年生は、デクスター様を知っている。きっと、イライジャ殿下と比べてくれるはず)

 ──それに。

 イライジャがクラリスの隣で、令嬢たちを値踏みしているのが手に取るようにわかった。これから本格的に、側妃候補探しとやらをはじめるのだろう。

 課題を押し付けることに何の違和感も覚えなくなっていたイライジャは、生徒会長の仕事を、さっそくクラリスに押し付けてきた。クラリスも生徒会役員に選ばれたものの、生徒会長の仕事は、むろん生徒会長がすべきもの。

 それをさも当然のように押し付けようとして、クラリスが断ると、あろうことか、脅しのように婚約破棄の言葉を口にしたイライジャ。生徒会室にいた生徒会役員の三人が、呆然としていた。特に前年度から引き続き生徒会役員となった二年生の二人は、特に。

 それは嫌です。焦った演技をしながら、クラリスは生徒会室の雰囲気を確かに感じ取っていた。

 同じ王族でも、デクスター殿下とは、随分と違うのですね。


 誰かが、ぼそっと呟いた。クラリスは頬が緩みかけたが、何とか耐えた。
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