探偵主人公

アズ

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1章 始まりの街ロンドン

20 スミスの話

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 次にスミスが呼ばれ席に座った。
「エニスから話しを聞いた。私を疑っているとか?」
「容疑者はだいぶ絞り込めました。犯人はこのホテルに詳しい人物による犯行だと思われます。それに該当するのは従業員3人と、常連だったあなた方二人になります。それ以外の宿泊客は全員初めてでした。それはモルダーさんが証言しています。よって5人になるわけですが、シェフであるカーティスさんには犯行が不可能になります。あと、もう一人だけいます。アリバイがないオリビアさんです。その女性はロビーにいたと言いますが、それを証明する人はいません。しかし、被害者の遺体を確認すると、全員致命傷になるところに刃物で深く刺してあります。的確で致命傷。全ての遺体が同じなのです。実は例え眠らされ抵抗がない相手でもそう簡単にはうまくいかないものなんです。特に初めての殺しなら尚更」
「では、切り裂きジャックが?」
「いいえ。切り裂きジャックではないでしょう。それは警察が調べてみてもそう考えるのではないでしょうか。では、犯人は刃物を普段から使い慣れた人物に限られてきます」
「なる程、最初から私が一番疑われていたわけか」
「どうでしょう……色んな宿泊客がこのホテルにはいて、私は話しをしてきました。そして、人を見ていくうちにだんだんと誰もが怪しく見えました。その中であなた達ハンターは違いました。私達の命を救ったのもそうですが、特に、エニスはあなたのことをかなり信用していました。だから、私はどこかであなたを疑いから避けていました。しかし、真実を追っていくうちにあなたにどんどん近づいていったのです。自分に嘘はつけない。誤魔化しても気づいてしまうんです。スミスさん、質問は恐らくあなたで最後になるでしょう」
「何が訊きたい?」
 ジークは少し間を開けてから訊いた。
「あなたが犯人ですか?」
 そう訊かれたスミスは鼻で笑った。
「自白をしろと言うのか?」
「残念ながら証拠はありません。何故なら、証拠はあなたが既に捨ててしまった。あの吹雪の中に」
 スミスは表情を変えることはしなかった。
「ほぉ、どうしてそう思うんだ?」
「エニスさんはウルフが建物の中まで入ってくることなんてなかったと言った時、逆に今までそんなことはなかったという説明になります。誰かが窓を割り、ウルフを建物の中へ誘導させたのであれば、それは誰の仕業か。答えは犯人でしょう。そして、犯人はウルフを退治する為に外に出た。しかし、ハンターでない宿泊客はウルフの群れがいる外へは当然出れない。あなたは吹雪の中でハンターとしての役割を果たしながら、証拠を雪の中に消したんです。これで証拠は見つかることはない」
「手荷物検査をしたじゃないか」
「しました。ですが、その時には手元にはなかったんです。では、それはどこか? 秘密の金庫です。凶器も一緒に置いておいた。しかし、犯人にとって困った事態になった。私達が犯人探しをし宿泊客に訊いて回っていることにです。私達が夫妻からも秘密の金庫のありかのヒントを耳にするかもしれない。そうなると、そのヒントを自分のように解いてしまうかもしれない。だからこそ、ウルフがホテルに入り込み、堂々と外に出て吹雪の中にその証拠品を捨てたのです」
「凶器は残っていたと聞いたが? 何故、その時凶器も処分しなかった?」
「他の者に気づかれるからです。いくらウルフ退治とはいえ、あなた達ハンターの武器は銃です」
「刃物だって使う」
「ええ、だからあなたしかいないんです。ですが、犯行に使われた凶器を持っていれば目立ちます。第一、手荷物検査の時には持っていなかったものを持っていれば尚更です。ですが、あなたにとって凶器が今更見つかったところで問題はなかった。問題があったのは、どうやって眠らせたか。この証拠さえ見つからなければ、最悪モルダーさんに容疑を向けられるからです。本当は無関係のモルダーさんに容疑がかけられないようあなたなりの配慮をした。そして、切り裂きジャックをあなたは利用したのです。恐らく、あなたは事前に麻酔薬か何か薬品を手に入れ眠らせたあとに、ベッドに移し、トドメを刺した。その証拠を吹雪の中に捨てれば、スミスさんが犯人である証拠はなくなります。しかし、状況は以前としてあなたが不利であることには変わりません。エニスさんはあなたを信じて本当のことを打ち明けました。あなたはエニスさんと一緒にいない時間がありました。それが犯行時間です。警察は徹底的に調べるでしょう。当然、エニスさんからも」
「エニスは関係ないだろ!」
「あなたがそう思っても警察はやるでしょう。いいですか! あなたはまず、エニスさんに黙って部屋を出ます。サム・ラーソンさんを殺害する為です。004号室ではモルダーさんがワインを取りに行ったタイミングで、あなたはその隙を見計らって004号室へ向かった。扉の鍵はかかってはいませんでした。何故なら、ラーソンさんはモルダーがワインを持って戻ってくるから鍵をかけないでおいたのです。扉はゆっくり開かれました。隣の親子は扉の開閉は3回聞こえたと証言しましたが、それは開閉が3回だったことにはなりません。犯人は忍び足で侵入し、コラムを書いているラーソンの背後から襲った! コラムは結局完成させることが出来ずに、ラーソンは犯人によって殺害されました。次にキング夫妻です。キング夫妻は簡単に入ることができました。犯人が招いた客だからです。さて、犯人はどのようにしてキング夫妻を眠らせたのか。実はキング夫妻の荷物も確認しました。全員の荷物検査はあくまでも生存者だけでしたので。キング夫妻の荷物の中に吸引器が入っておりました。犯人はそれを使い、麻酔薬入りの吸引器を一人にそれを渡し、意識が朦朧した夫のを見て、妻が動揺している背後からラーソンさんを襲った時と同じように眠らせたのです。二人はその後に殺害されました」
「君の言っていることは憶測でしかない!」
「犯人はキング夫妻の夫が吸引器を使うことを知っていた。キング夫妻は犯人と面識があったからです。そして、犯人はどういう時に彼が発作を起こすのかも知っていた。犯人は発作を起こしたキングさんにあたかもキングさんの荷物から吸引器を取り出しかのように見せかけ、あらかじめ仕込んでおいた吸引器を渡したのです。しかし……あなたの言う通り、それは憶測でしかない。証拠はありません」
「探偵もどうやらそこまでのようだな」
 と、そこにエニスが現れた。ジークは椅子の背もたれにもたれかかった。
「エニス!?」
「スミスさん……」
「ん? どうしたと言うんだ」
「スミスさんは証言してくれました。あなたがキング夫妻の部屋に入っていくのを」
「なんだと!?」
「どうしてなんですか、スミスさん!」
「君、さっき証拠はないと言ったじゃないか!」
「ええ! ありませんよ。あなたが仕込んだ吸引器も薬もね。だからこそ、エニスさんに証言させる前にあなたの口から真実を訊きたかったのです」
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