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1章 始まりの街ロンドン
21 動機
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「見ていたのか?」
「殺人事件が起こった後だと言うのにあなたは単独行動をしようとしていた。それが怪しく感じたのです」
「なる程。盲点だったよ」
「では、認めるんですね?」
「ああ、こうなってはね」
「動機はなんだったんですか?」
「私はある月からサム・ラーソンのコラムに興味を持った。奴は連続殺人事件切り裂きジャックについて毎週連続で取り上げていた。切り裂きジャックは確かにロンドンにいる人々全員に関心が向けられていた。だが、奴のコラムは妙に詳しい部分があった。特にメアリーの被害については」
「何故、あなたはそれに関心があったのです?」
「メアリーは私の娘だからだ」
「何だって!?」
「離婚してから苗字は違うが、娘であることにかわりはない」
「まさか!」
「流石は探偵だな。そう、切り裂きジャックは奴だったんだよ、サム・ラーソン!」
「あなたの犯行動機は自分の娘を殺害した切り裂きジャックを殺害することだったんですか!」
「そうだ、この日の為に用意周到に計画してきた」
「では! では、キング夫妻は何故殺害したのです」
「キング夫妻が運営する新聞社は私の娘を侮辱したからだ。奴の記事を私が殺人鬼へと変えたのだ」
侮辱と訊いて安易にどんな内容とは訊けなかった。
だが、分かることもある。例えば、マスコミは被害者、そして遺族のことを本当の意味で救ってはくれない。彼らのやることは被害者の同情ではなくスクープだった。
「だが、流石に大型ウルフまで登場するのは想定外だった」
「そうでしたか」
朝。
吹雪はすっかり止み天気は晴れた。外は相変わらず寒い。
通報を受けた警官達が現れ、004号室と005号室から遺体を運び出した。全員からの聞き込みがされる中、スミスは警官によって連行されていった。
その様子をエニスはじっと見届けた。
ジークのところに一人の刑事がやってきた。
「ジークさんですね」
口髭を立派に生やした中年の男のスーツからはタバコ臭がした。
「はい、そうです」
「私は警視庁のホランドだ。他の皆さんから訊きました。あなたが事件を解決したと?」
「成り行きです」
「成り行き、ですか? まぁ、いいでしょう。あなたのおかげでこれ以上被害者を出さずに済んだのですから。それで、どうして犯人はあいつだと分かったんです?」
「殺害方法とエニスさんの証言からです。切り裂きジャックの件は聞きましたか?」
「ええ。まさか、サム・ラーソンが切り裂きジャック犯だったとは! しかし、あなたもこれで有名になられましたな」
「何のことですか?」
「今は捜査という理由でおさえていますがマスコミが騒ぎを嗅ぎ付け直ぐそこまで集まっています。ずっと追っていた切り裂きジャック、そしてそれを殺害した犯人を見つけた。有名にならない方があり得ないでしょう。ですが、警告しておきます。ロンドンというのは移民や貧富の差やまぁ他にも色々と問題を抱えた街なのです。そこには犯罪が蔓延る。その連中からもあなたは注目を集めることになった。今後はひっそりと暮した方がいい。探偵気取りは今日限りにすることだ」
そこに一人の警官がホランドへ駆けつけた。
「警部」
「今行く。それではジークさん」
そう言って警部は行ってしまった。
後日、新聞に『ロンドンに探偵現れる! 連続殺人事件を解決!!』と自分の写真が勝手に記事使われていた。
新聞を読んでいくと、警察の捜査でスミスの動機の部分で、キング夫妻は切り裂きジャックの被害者を売春をしていたと証拠もなく記事にするよう編集長に命令していた。キングが運営する新聞社の記事の内容には度々物議を醸していた。
自分の娘が殺され、更に残された家族にとっては深い心の傷を抉られたようなものだ。
更に、スミスはもう一人殺るつもりだったと証言していることが明らかになった。
確かに、秘密の金庫の中身を見た時に一つだけ凶器が入っていた。計画殺人であれば事前に殺害する人数を決めておいてある筈だ。決して、予備という理由で余分に用意されたわけではなかった。その一人とは、しつこくスミスに娘について質問する記者だった。更にその記者はキング社長から命令を受けた編集長はその記者に例の記事を書かせていたことも分かった。
全員が切り裂きジャック事件に関係し、スミスはその切り裂きジャックによって娘を殺害された父親だ。
父親は復讐と娘の名誉の為に戦った。それが殺人鬼へと彼を変えてしまった。
切り裂きジャックについて実は知っていることがあると誘われたその四人、サム・ラーソンは特に自分が切り裂きジャックであることから興味を持った筈だし、遺族の話しが聞けるならと、あくまでも建前上コラムの参考として招待を受け、キング夫妻は元々彼から話しが訊けるならと了承した。勿論、記事にする為だ。しかし、記者だけは結局スミスの招待を受けなかった。父親が娘の売春を否定する為に呼び出されたのだろうと思って拒否したのが理由だった。
しかし、計画は実行された。もう、このチャンスはないと思ったからだった。
新聞記事は最後に切り裂きジャックは新たな連続殺人鬼を生み出した! とあった。
だが、スミスの犯行を見ても彼は殺人鬼になってしまったが切り裂きジャックにはなれなかった。
どんなに恨みを持った彼でも、切り裂きジャックのように残酷に切り刻むことは出来なかった。一回深く刺したスミスの光景が想像される。
隣の部屋に声が漏れないよう、必死に声を出さないよう堪えながら、胸の内で叫んだに違いない。
「娘をよくも!!」
深く刺さった力強さはたった一回振り下ろしただけで決着がついた。
(第一章・完)
「殺人事件が起こった後だと言うのにあなたは単独行動をしようとしていた。それが怪しく感じたのです」
「なる程。盲点だったよ」
「では、認めるんですね?」
「ああ、こうなってはね」
「動機はなんだったんですか?」
「私はある月からサム・ラーソンのコラムに興味を持った。奴は連続殺人事件切り裂きジャックについて毎週連続で取り上げていた。切り裂きジャックは確かにロンドンにいる人々全員に関心が向けられていた。だが、奴のコラムは妙に詳しい部分があった。特にメアリーの被害については」
「何故、あなたはそれに関心があったのです?」
「メアリーは私の娘だからだ」
「何だって!?」
「離婚してから苗字は違うが、娘であることにかわりはない」
「まさか!」
「流石は探偵だな。そう、切り裂きジャックは奴だったんだよ、サム・ラーソン!」
「あなたの犯行動機は自分の娘を殺害した切り裂きジャックを殺害することだったんですか!」
「そうだ、この日の為に用意周到に計画してきた」
「では! では、キング夫妻は何故殺害したのです」
「キング夫妻が運営する新聞社は私の娘を侮辱したからだ。奴の記事を私が殺人鬼へと変えたのだ」
侮辱と訊いて安易にどんな内容とは訊けなかった。
だが、分かることもある。例えば、マスコミは被害者、そして遺族のことを本当の意味で救ってはくれない。彼らのやることは被害者の同情ではなくスクープだった。
「だが、流石に大型ウルフまで登場するのは想定外だった」
「そうでしたか」
朝。
吹雪はすっかり止み天気は晴れた。外は相変わらず寒い。
通報を受けた警官達が現れ、004号室と005号室から遺体を運び出した。全員からの聞き込みがされる中、スミスは警官によって連行されていった。
その様子をエニスはじっと見届けた。
ジークのところに一人の刑事がやってきた。
「ジークさんですね」
口髭を立派に生やした中年の男のスーツからはタバコ臭がした。
「はい、そうです」
「私は警視庁のホランドだ。他の皆さんから訊きました。あなたが事件を解決したと?」
「成り行きです」
「成り行き、ですか? まぁ、いいでしょう。あなたのおかげでこれ以上被害者を出さずに済んだのですから。それで、どうして犯人はあいつだと分かったんです?」
「殺害方法とエニスさんの証言からです。切り裂きジャックの件は聞きましたか?」
「ええ。まさか、サム・ラーソンが切り裂きジャック犯だったとは! しかし、あなたもこれで有名になられましたな」
「何のことですか?」
「今は捜査という理由でおさえていますがマスコミが騒ぎを嗅ぎ付け直ぐそこまで集まっています。ずっと追っていた切り裂きジャック、そしてそれを殺害した犯人を見つけた。有名にならない方があり得ないでしょう。ですが、警告しておきます。ロンドンというのは移民や貧富の差やまぁ他にも色々と問題を抱えた街なのです。そこには犯罪が蔓延る。その連中からもあなたは注目を集めることになった。今後はひっそりと暮した方がいい。探偵気取りは今日限りにすることだ」
そこに一人の警官がホランドへ駆けつけた。
「警部」
「今行く。それではジークさん」
そう言って警部は行ってしまった。
後日、新聞に『ロンドンに探偵現れる! 連続殺人事件を解決!!』と自分の写真が勝手に記事使われていた。
新聞を読んでいくと、警察の捜査でスミスの動機の部分で、キング夫妻は切り裂きジャックの被害者を売春をしていたと証拠もなく記事にするよう編集長に命令していた。キングが運営する新聞社の記事の内容には度々物議を醸していた。
自分の娘が殺され、更に残された家族にとっては深い心の傷を抉られたようなものだ。
更に、スミスはもう一人殺るつもりだったと証言していることが明らかになった。
確かに、秘密の金庫の中身を見た時に一つだけ凶器が入っていた。計画殺人であれば事前に殺害する人数を決めておいてある筈だ。決して、予備という理由で余分に用意されたわけではなかった。その一人とは、しつこくスミスに娘について質問する記者だった。更にその記者はキング社長から命令を受けた編集長はその記者に例の記事を書かせていたことも分かった。
全員が切り裂きジャック事件に関係し、スミスはその切り裂きジャックによって娘を殺害された父親だ。
父親は復讐と娘の名誉の為に戦った。それが殺人鬼へと彼を変えてしまった。
切り裂きジャックについて実は知っていることがあると誘われたその四人、サム・ラーソンは特に自分が切り裂きジャックであることから興味を持った筈だし、遺族の話しが聞けるならと、あくまでも建前上コラムの参考として招待を受け、キング夫妻は元々彼から話しが訊けるならと了承した。勿論、記事にする為だ。しかし、記者だけは結局スミスの招待を受けなかった。父親が娘の売春を否定する為に呼び出されたのだろうと思って拒否したのが理由だった。
しかし、計画は実行された。もう、このチャンスはないと思ったからだった。
新聞記事は最後に切り裂きジャックは新たな連続殺人鬼を生み出した! とあった。
だが、スミスの犯行を見ても彼は殺人鬼になってしまったが切り裂きジャックにはなれなかった。
どんなに恨みを持った彼でも、切り裂きジャックのように残酷に切り刻むことは出来なかった。一回深く刺したスミスの光景が想像される。
隣の部屋に声が漏れないよう、必死に声を出さないよう堪えながら、胸の内で叫んだに違いない。
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深く刺さった力強さはたった一回振り下ろしただけで決着がついた。
(第一章・完)
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