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4章 犯人はゴースト
08 レベッカの話
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ロンドンから三角屋根に煙突のある石造りの田舎町に来たジークは川沿いの緩やかな坂道をのぼっていった先にある家の前まで来た。ドアをノックすると、中から現れたのは緑色のワンピース姿の女性、レベッカが顔を見せた。
「どなたですか?」
「ジークと言います。ジュリエットさんのお姉さんで宜しいですか?」
「ええ、そうだけど」
「実はテレサさんが殺害された事件で調査の依頼を受け調べ回っています。テレサさんはジュリエットさんの友人であると伺いました。ご存知でしたか?」
「妹の友達なんて私が知るわけないわ」
「そうですか?」
すると、レベッカは面倒そうな顔をした。
「分かりました。話しを進めます。テレサさんは殺される前日に私にゴーストを見たと訴えていました。彼女が見たものはジュリエットさんの霊だったそうです。しかも、かなり怯えた様子でした。テレサさんとジュリエットさんにトラブルはなかったと周りは言っていますが、お姉さんなら何か知らないかと思いまして」
「さっきも言ったけど妹の友達のことは知らないわ。それに、その人が見たのは勘違いじゃない? もういいかしら」
「レベッカさんはつい最近ロンドンに行ったことはありますか?」
「ないわ」
そう言ってドアを強く閉められてしまった。またノックしたところでもう相手にもしてもらえないだろう。
仕方なくジークは引き返したが、手ぶらで帰るより少しでも手掛かりを求め、彼女の出身である孤児院へ向かった。
町外れにぽつんと建っている孤児院は、3階建てでアーチ状の窓は長年の汚れで曇っている。高い塀でもあるのかと思ったがそうではなかった。
自然に囲まれた孤児院事態はとても綺麗とは呼べず、年季の入った建物だった。それでも尚現役であり、子供達の喋り声がその建物から聞こえた。
入口の両扉から入って直ぐの場所に受付があった。
60代と思われる小太りの女性がジークに気づき「何でしょうか」と素っ気ない対応をした。
「私はジークと言います。実はある事件の調べをしてまして、ここの出身であるジュリエットさんとレベッカさんについて伺いに来ました」
「ジュリエットとレベッカ? 少々お待ち下さい」
女性は受付から離れ誰かを呼びに行った。
暫くして先程の女性のかわりに立派な髭を生やしたスーツの男が現れた。背が高く丸眼鏡をかけた中年の男は「あなたがジークさん?」と訪ねてきた。
「はい、そうです」
ジークはリッター刑事から預かっていた写真をその男性に見せた。
「この二人です」
男は一瞥してからジークの方を見た。
「ジュリエットとレベッカについて訊きたいと言うことでしたが、確かにその二人はこの孤児院にいました。しかし、もう昔に孤児院を出ています。例え二人に何かあったとしても、それはうちとは関係のないことだと思いますが」
「二人はここに立ち寄ることはなかったんですか?」
「ええ。わざわざ立ち寄って来る人はいません。いたとしても珍しいでしょう」
「孤児院にいた時、二人と仲が良かった人はいましたか?」
「ええ、特に二人と仲が良かったのはアビーです。アビーとレベッカは同い年でしたから。アビーはジュリエットを妹のように可愛がっていました。アビーなら町のバーで働いていますよ」
「ありがとうございます。ああ、それとジュリエットさんが亡くなられていることはご存知ですか?」
「いいえ。そうでしたか……」
「事故死でした。それでは失礼します」
ジークはそう言ってから今度はそのアビーに会いに向かった。
夜。バーに入ると、既に何人かの客は酒を飲みながらお喋りをしていた。カウンターには店主がいて、もう一人女性が働いていた。
テーブル席に座ると、その女性がジークの方にやって来た。化粧は薄い。そしてなんと言っても香水が強いと嗅覚が訴えた。自分には好みではないそれに思わず鼻声になりそうになったが、失礼になるので堪えた。
「あの」
「何飲みます?」
「あ、ああ……なら、コーラを」
「バーに来たのに酒を頼まないつもり?」
女性はジークを変な顔で見た。
「実はあなたに用があって来ました。孤児院からあなたがここで働いていることを聞いたんです」
すると今度は警戒するような顔をした。
「用って何」
「実は私はある事件を調べていまして、そこでジュリエットさんとレベッカさんを知るあなたを訪ねに来たんです」
「事件って何よ」
「事件というのはジュリエットさんの友人であるテレサという女性が何者かによって殺害された事件です。彼女は亡くなる直前に私にジュリエットさんの幽霊を見たと言ってから亡くなっています。その方はその幽霊にかなり怯え命の危険を感じていました。それは残念なことに的中してしまいました。でなければ見間違えで済んだ話しで終わっていたでしょう。問題は本当にそれがジュリエットさんの幽霊だったのかどうかです。しかし、それは状況からして否定されています。となれば何故その女性はジュリエットさんのゴーストを見たと私に言ったのでしょうか? 彼女は明らかに正常ではありませんでした。しかし、本当のことも言っていました。誰かに監視され、自分の命が危うく、殺されそうな状況だと言う点です。ここで一つの仮説が出来上がります。ジュリエットさんとよく似たレベッカさんと被害者は見間違えたのではないのか?」
「レベッカが殺したって言うの!」
「証拠はありません。しかし、疑いの余地はある」
「動機は? 妹の友人を何故殺害しなきゃならないの」
「仮説はありますが、まだ確定していません。そちらの方は他の方が捜査しています」
「所詮、あなたの言う仮説は妄想よ! 何一つ真実はないわ! 当然、レベッカが人殺しをしたという事実もね」
すると、そこに店主が現れた。言い争いに気づいたようだ。
「お客さん、悪いが帰ってくれないか。あんたに出すもんはない」
ジークは席から立ち上がり「分かりました、そのようにします」と言ってから店を出た。
「どなたですか?」
「ジークと言います。ジュリエットさんのお姉さんで宜しいですか?」
「ええ、そうだけど」
「実はテレサさんが殺害された事件で調査の依頼を受け調べ回っています。テレサさんはジュリエットさんの友人であると伺いました。ご存知でしたか?」
「妹の友達なんて私が知るわけないわ」
「そうですか?」
すると、レベッカは面倒そうな顔をした。
「分かりました。話しを進めます。テレサさんは殺される前日に私にゴーストを見たと訴えていました。彼女が見たものはジュリエットさんの霊だったそうです。しかも、かなり怯えた様子でした。テレサさんとジュリエットさんにトラブルはなかったと周りは言っていますが、お姉さんなら何か知らないかと思いまして」
「さっきも言ったけど妹の友達のことは知らないわ。それに、その人が見たのは勘違いじゃない? もういいかしら」
「レベッカさんはつい最近ロンドンに行ったことはありますか?」
「ないわ」
そう言ってドアを強く閉められてしまった。またノックしたところでもう相手にもしてもらえないだろう。
仕方なくジークは引き返したが、手ぶらで帰るより少しでも手掛かりを求め、彼女の出身である孤児院へ向かった。
町外れにぽつんと建っている孤児院は、3階建てでアーチ状の窓は長年の汚れで曇っている。高い塀でもあるのかと思ったがそうではなかった。
自然に囲まれた孤児院事態はとても綺麗とは呼べず、年季の入った建物だった。それでも尚現役であり、子供達の喋り声がその建物から聞こえた。
入口の両扉から入って直ぐの場所に受付があった。
60代と思われる小太りの女性がジークに気づき「何でしょうか」と素っ気ない対応をした。
「私はジークと言います。実はある事件の調べをしてまして、ここの出身であるジュリエットさんとレベッカさんについて伺いに来ました」
「ジュリエットとレベッカ? 少々お待ち下さい」
女性は受付から離れ誰かを呼びに行った。
暫くして先程の女性のかわりに立派な髭を生やしたスーツの男が現れた。背が高く丸眼鏡をかけた中年の男は「あなたがジークさん?」と訪ねてきた。
「はい、そうです」
ジークはリッター刑事から預かっていた写真をその男性に見せた。
「この二人です」
男は一瞥してからジークの方を見た。
「ジュリエットとレベッカについて訊きたいと言うことでしたが、確かにその二人はこの孤児院にいました。しかし、もう昔に孤児院を出ています。例え二人に何かあったとしても、それはうちとは関係のないことだと思いますが」
「二人はここに立ち寄ることはなかったんですか?」
「ええ。わざわざ立ち寄って来る人はいません。いたとしても珍しいでしょう」
「孤児院にいた時、二人と仲が良かった人はいましたか?」
「ええ、特に二人と仲が良かったのはアビーです。アビーとレベッカは同い年でしたから。アビーはジュリエットを妹のように可愛がっていました。アビーなら町のバーで働いていますよ」
「ありがとうございます。ああ、それとジュリエットさんが亡くなられていることはご存知ですか?」
「いいえ。そうでしたか……」
「事故死でした。それでは失礼します」
ジークはそう言ってから今度はそのアビーに会いに向かった。
夜。バーに入ると、既に何人かの客は酒を飲みながらお喋りをしていた。カウンターには店主がいて、もう一人女性が働いていた。
テーブル席に座ると、その女性がジークの方にやって来た。化粧は薄い。そしてなんと言っても香水が強いと嗅覚が訴えた。自分には好みではないそれに思わず鼻声になりそうになったが、失礼になるので堪えた。
「あの」
「何飲みます?」
「あ、ああ……なら、コーラを」
「バーに来たのに酒を頼まないつもり?」
女性はジークを変な顔で見た。
「実はあなたに用があって来ました。孤児院からあなたがここで働いていることを聞いたんです」
すると今度は警戒するような顔をした。
「用って何」
「実は私はある事件を調べていまして、そこでジュリエットさんとレベッカさんを知るあなたを訪ねに来たんです」
「事件って何よ」
「事件というのはジュリエットさんの友人であるテレサという女性が何者かによって殺害された事件です。彼女は亡くなる直前に私にジュリエットさんの幽霊を見たと言ってから亡くなっています。その方はその幽霊にかなり怯え命の危険を感じていました。それは残念なことに的中してしまいました。でなければ見間違えで済んだ話しで終わっていたでしょう。問題は本当にそれがジュリエットさんの幽霊だったのかどうかです。しかし、それは状況からして否定されています。となれば何故その女性はジュリエットさんのゴーストを見たと私に言ったのでしょうか? 彼女は明らかに正常ではありませんでした。しかし、本当のことも言っていました。誰かに監視され、自分の命が危うく、殺されそうな状況だと言う点です。ここで一つの仮説が出来上がります。ジュリエットさんとよく似たレベッカさんと被害者は見間違えたのではないのか?」
「レベッカが殺したって言うの!」
「証拠はありません。しかし、疑いの余地はある」
「動機は? 妹の友人を何故殺害しなきゃならないの」
「仮説はありますが、まだ確定していません。そちらの方は他の方が捜査しています」
「所詮、あなたの言う仮説は妄想よ! 何一つ真実はないわ! 当然、レベッカが人殺しをしたという事実もね」
すると、そこに店主が現れた。言い争いに気づいたようだ。
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ジークは席から立ち上がり「分かりました、そのようにします」と言ってから店を出た。
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