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5章 呪いの海
07 動機
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「どうして少佐を狙おうと考えたんですか?」
「私の子どもは病気で入院をしていました。しかし、医者からは難病で今の治療法では救うことは出来ないと言われ、それでも延命治療を望みました。しかし、その息子も亡くなり、私は心の中が空っぽになってしまったのです。カウンセリングを夫からすすめられて通っていると、そのカウンセリングの先生からある研究について聞かされました。専門的なことは分かりませんでしたが、最後の、その研究では救えなかった病気を、大勢を救うのに役立つものだと説明を受けた時、私は夫と相談しその研究に投資を行うことにしたのです。それから数年が経過した頃、ある人物が私のもとに来ました。夫は仕事で不在でしたので引き返してもらおうとしましたが、その方は私に用事がありました。私は不思議に思いながら、その方の話しを聞くことにしました。その人からまさか、あんな衝撃的なことを聞かされるとは思ってもみませんでした」
「私は知らないぞ、そんなこと」とヘンリーは言った。
「あなたに言うより、奥さんに話しをした方がいいと言われた時、妙に感じましたが、話しを聞いて納得したの。女性の方が冷静で、そして冷酷になれるって」
「どんな話しでしたか?」とジークは訊いた。
「息子は実際は健康で不治の病ではなかったと。あなたは病院に騙され、見事今では熱心に資金を提供している。でも、実際はあなた達の金目当てに行われた犯行で、病院はあなたの息子さんを殺害したのです。病死として偽って」
「そんな馬鹿な! 病院が嘘をつくわけないだろ」
「私も知らない人からそんな事を言われても急には信用しなかったわ。でも、私達と同じような人物は他にも何人かいて、今も息子と同じ病名で入院させられ、あと数日で亡くなりそうだと。その母親を説得させ、他の病院で検死を行えば証拠が出る筈だって。その母親の名前はトンプソン」
去年の8月。
情報提供者の言った通りにトンプソンの子どもはかつて自分の息子が入院していた同じ病院で息を引き取った。
悲しみ涙を流しているところに情報提供は近づき、例の話しをトンプソン夫妻に説明した。最初は受け入れられないといった顔だったが、嘘とも思えなかった夫妻はただ調べるだけと言う言葉に協力することに決めた。
そこに病院の担当医師が現れ、葬儀の手続きを紹介しようとした。病院側と葬儀屋では長い付き合いがあり、そこなら信頼できると紹介してきた。
火葬。それ事態は不思議なことではないし、病院側がその葬儀屋を紹介し流すことで葬儀屋から病院に報酬がいくことも知っていた。
トンプソン夫妻はサインをせず、他の病院で検死をさせて欲しいと言った。
急な夫妻の態度の変化に担当医師は困惑ではなく、夫妻に対し激しく怒号を撒き散らした。
あんなに優しく親切に対応していた医師のあまりの変貌っぷりに夫妻はだんだんと何を信じたらよいのか分からなくなっていた。
それから脅迫を受け、遂には病院の言う通りに夫妻は従ってしまった。
後で夫妻は後悔した。
自分の子どもの死の真相を自ら放棄してしまったことに。
もう二度と知ることは出来ない。
炎は全ての証拠を消し去り、夫妻から離れていってしまった。
それからだった。情報提供者自身も身の危険を感じるようになり、夜の外出は控えるようになっていた。
「情報提供者はもう亡くなったと知りました。殺されたんだと思います」
「それはクリスマスの日でしたか?」
「え!? どうして分かったの」
「殺したのは恐らく元大佐です。しかし、証拠はありません」
「そう……やっぱりそうだったのね」
「少佐を狙う理由は?」
「軍はこの研究に一枚噛んでいる。何故なら、その研究は生物兵器に転用可能だから」
「なんだと!」と警部は驚愕した。
「そうか、それでカーソン・パロット元大佐はロバート・エルフマンに協力しているのか」
その時、拍手が起こった。一斉に少佐へと目線が集まった。
「素晴らしい! 見事事件解決だな。君はネズミの尻尾を捕まえてくれたわけだ」
「分かっていたんですね、自分が狙われていたことを。それをわざわざ承知でこの場を用意し、犯人が出てきたところを返り討ちするつもりでしたか? その銃で」
「ああ」
素直に認めた少佐は銃を取り出し、安全装置を解除した。
「元大佐が招待したんじゃないですよね? あなたじゃありませんか? 少佐」
「ご名答。何故分かった」
「全員を招待したのが元大佐なら、姿を現さないのはおかしいし、皆の様子を見ている限りでも、普段と今回は違っていると分かったのでもしやと思ったんです」
「なる程。君の推理は聞かせてもらった。名探偵の直感と言うべきか? あの状況でよく犯人を言い当てたと感心させられた。急死という可能性もあっただろう?」
確かにあった。しかし、これは現実ではなくゲームの世界で起こったことだ。この点においては、自分は少し皆と状況把握が異なる。私には皆とは別の視点があったからだ。
ゲームのストリート上あの場で遺体が発見されたが、それは急死でしたというオチは恐らくはない。事件を解決させることがストリートを進める鍵と私は見た。
無論、根拠はなく、だから直感と言った少佐の指摘は当たってはいる。
しかし、この手の直感は経験から基づくもので、当たったのはその為だ。
「君は少ないインプットで沢山のアウトプットをする。前提条件、否定されるもの、肯定されるもの、残された可能性、登場人物……だったかな? まぁ、私には向いていないことだ。君はない前提条件を勝手に作り想像し、可能性を考える。目に見えないのなら、前提条件を作りだし状況と結果を照らし合わせ考察する。君がロウェナがヘンリーの薬の管理をしているという前提条件はそれがなければ君の事故という推理は働かない。しかし、状況からして君はこれは自殺でも、事件でもないと、否定をしたのだ。それはまたもう一つの前提条件だ。君はそうやって繰り返し何通り、何十通りの殺人を考え、納得いく可能性のある結論を提示した。そんなところだろうか?」
すると、この部屋に一斉に武装した兵士が中に入り、この場にいた全員を包囲した。
ジークは一瞬で理解した。少佐の部下達だ。
「さて、ロウェナ・アービンには後でゆっくりと話しを訊くとして、全員動くな!」
その直後、船のどこかで大きな爆発が起こった!
船は揺れ、悲鳴が起こる。
「動くな! この船に爆弾を仕掛けた!」
そう吠えたのは記者のアーサー・トランスだった。
「私の子どもは病気で入院をしていました。しかし、医者からは難病で今の治療法では救うことは出来ないと言われ、それでも延命治療を望みました。しかし、その息子も亡くなり、私は心の中が空っぽになってしまったのです。カウンセリングを夫からすすめられて通っていると、そのカウンセリングの先生からある研究について聞かされました。専門的なことは分かりませんでしたが、最後の、その研究では救えなかった病気を、大勢を救うのに役立つものだと説明を受けた時、私は夫と相談しその研究に投資を行うことにしたのです。それから数年が経過した頃、ある人物が私のもとに来ました。夫は仕事で不在でしたので引き返してもらおうとしましたが、その方は私に用事がありました。私は不思議に思いながら、その方の話しを聞くことにしました。その人からまさか、あんな衝撃的なことを聞かされるとは思ってもみませんでした」
「私は知らないぞ、そんなこと」とヘンリーは言った。
「あなたに言うより、奥さんに話しをした方がいいと言われた時、妙に感じましたが、話しを聞いて納得したの。女性の方が冷静で、そして冷酷になれるって」
「どんな話しでしたか?」とジークは訊いた。
「息子は実際は健康で不治の病ではなかったと。あなたは病院に騙され、見事今では熱心に資金を提供している。でも、実際はあなた達の金目当てに行われた犯行で、病院はあなたの息子さんを殺害したのです。病死として偽って」
「そんな馬鹿な! 病院が嘘をつくわけないだろ」
「私も知らない人からそんな事を言われても急には信用しなかったわ。でも、私達と同じような人物は他にも何人かいて、今も息子と同じ病名で入院させられ、あと数日で亡くなりそうだと。その母親を説得させ、他の病院で検死を行えば証拠が出る筈だって。その母親の名前はトンプソン」
去年の8月。
情報提供者の言った通りにトンプソンの子どもはかつて自分の息子が入院していた同じ病院で息を引き取った。
悲しみ涙を流しているところに情報提供は近づき、例の話しをトンプソン夫妻に説明した。最初は受け入れられないといった顔だったが、嘘とも思えなかった夫妻はただ調べるだけと言う言葉に協力することに決めた。
そこに病院の担当医師が現れ、葬儀の手続きを紹介しようとした。病院側と葬儀屋では長い付き合いがあり、そこなら信頼できると紹介してきた。
火葬。それ事態は不思議なことではないし、病院側がその葬儀屋を紹介し流すことで葬儀屋から病院に報酬がいくことも知っていた。
トンプソン夫妻はサインをせず、他の病院で検死をさせて欲しいと言った。
急な夫妻の態度の変化に担当医師は困惑ではなく、夫妻に対し激しく怒号を撒き散らした。
あんなに優しく親切に対応していた医師のあまりの変貌っぷりに夫妻はだんだんと何を信じたらよいのか分からなくなっていた。
それから脅迫を受け、遂には病院の言う通りに夫妻は従ってしまった。
後で夫妻は後悔した。
自分の子どもの死の真相を自ら放棄してしまったことに。
もう二度と知ることは出来ない。
炎は全ての証拠を消し去り、夫妻から離れていってしまった。
それからだった。情報提供者自身も身の危険を感じるようになり、夜の外出は控えるようになっていた。
「情報提供者はもう亡くなったと知りました。殺されたんだと思います」
「それはクリスマスの日でしたか?」
「え!? どうして分かったの」
「殺したのは恐らく元大佐です。しかし、証拠はありません」
「そう……やっぱりそうだったのね」
「少佐を狙う理由は?」
「軍はこの研究に一枚噛んでいる。何故なら、その研究は生物兵器に転用可能だから」
「なんだと!」と警部は驚愕した。
「そうか、それでカーソン・パロット元大佐はロバート・エルフマンに協力しているのか」
その時、拍手が起こった。一斉に少佐へと目線が集まった。
「素晴らしい! 見事事件解決だな。君はネズミの尻尾を捕まえてくれたわけだ」
「分かっていたんですね、自分が狙われていたことを。それをわざわざ承知でこの場を用意し、犯人が出てきたところを返り討ちするつもりでしたか? その銃で」
「ああ」
素直に認めた少佐は銃を取り出し、安全装置を解除した。
「元大佐が招待したんじゃないですよね? あなたじゃありませんか? 少佐」
「ご名答。何故分かった」
「全員を招待したのが元大佐なら、姿を現さないのはおかしいし、皆の様子を見ている限りでも、普段と今回は違っていると分かったのでもしやと思ったんです」
「なる程。君の推理は聞かせてもらった。名探偵の直感と言うべきか? あの状況でよく犯人を言い当てたと感心させられた。急死という可能性もあっただろう?」
確かにあった。しかし、これは現実ではなくゲームの世界で起こったことだ。この点においては、自分は少し皆と状況把握が異なる。私には皆とは別の視点があったからだ。
ゲームのストリート上あの場で遺体が発見されたが、それは急死でしたというオチは恐らくはない。事件を解決させることがストリートを進める鍵と私は見た。
無論、根拠はなく、だから直感と言った少佐の指摘は当たってはいる。
しかし、この手の直感は経験から基づくもので、当たったのはその為だ。
「君は少ないインプットで沢山のアウトプットをする。前提条件、否定されるもの、肯定されるもの、残された可能性、登場人物……だったかな? まぁ、私には向いていないことだ。君はない前提条件を勝手に作り想像し、可能性を考える。目に見えないのなら、前提条件を作りだし状況と結果を照らし合わせ考察する。君がロウェナがヘンリーの薬の管理をしているという前提条件はそれがなければ君の事故という推理は働かない。しかし、状況からして君はこれは自殺でも、事件でもないと、否定をしたのだ。それはまたもう一つの前提条件だ。君はそうやって繰り返し何通り、何十通りの殺人を考え、納得いく可能性のある結論を提示した。そんなところだろうか?」
すると、この部屋に一斉に武装した兵士が中に入り、この場にいた全員を包囲した。
ジークは一瞬で理解した。少佐の部下達だ。
「さて、ロウェナ・アービンには後でゆっくりと話しを訊くとして、全員動くな!」
その直後、船のどこかで大きな爆発が起こった!
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